イエズス会第36回総会に参加して

佐久間 勤 SJ
上智大学神学部教授

  2016年10月3日から11月12日までの6週間、ローマにあるイエズス会総本部会議場で、第36回総会が開かれました。日本管区からは梶山管区長と私が参加しました。今回の総会に課された使命は、ニコラス総長の後継選出と、重要課題に関する指針の制定でした。

  総会全体を振り返ってみると、イエズス会全体の一致が強く印象に残りました。第32回総会(1974~75年)が打ち出した「信仰への奉仕と正義の促進」という会全体の使命の定義は、今や、会全体の共通認識として定着したことを目の当たりにしました。総会参加者に個人的に、所属管区で社会使徒職に携わる会員が誰かと尋ねると、中南米のイエズス会員は皆が何らかの社会使徒職に関わっていると言われたのが印象に残っています。ベネズエラ管区から新総長が、しかも非常にスムーズに選出されたのは、単に中南米だけでなく、イエズス会全体にもこの意識が浸透しつつあるように思えました。

  「わたしたちが(総会でおこなう)識別は、貧しい人々の目で世界を見ること、そして、彼らと共に生きることへと導いてくれるでしょう。」新総長ソーサ神父が言われたこの言葉に、第36回総会全体が凝縮されています。難民、宗教対立、貧困など、分裂や傷を負ったこの世界に和解の福音を宣べるという使命の重さと、自己の限界や無力さを客観的に受け止めて、神からの呼びかけに応えるには、イグナチオの識別が決定的な鍵となります。総会中に訪問された教皇フランシスコも(識別による)神からの慰めに支えられて、十字架のキリストと共に働くことをメッセージとされました。総会はそれに応えて「アイデンティティー・ミッション・共同体」に関するより深い理解をまとめる教令を発しました。

  シリアなど武力紛争地に生命を賭して踏みとどまって奉仕している会員を支援する教令、そして、過去も含めて弱い立場の人々を虐待する会員の問題についての総長への勧告も定めました。地域的事情の相違を越えて総会が一致して決定できたことに多くの議員たちが感銘を受けていました。イエズス会が共同体として、人々と協働し、ネットワークを強化して、和解の福音に奉仕する。総会が定めた方針は、イエズス会員だけでなく、共に働くすべての人々が関係する内容です。センターに関わってくださっている皆様とも共に歩めるよう、これからも祈りと支えをよろしくお願い申し上げます。

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