カトリック教会の社会教説とは

カトリック教会の社会教説と呼ばれているのは、教会が歴史の中で、公の文書をもって様々な社会問題について語っている考えです。

特定の地域あるいは限られた社会問題、たとえば奴隷制度、スペインによる中南米の先住民の搾取などについては、16世紀からも教会の代表者である歴代の教皇が、その問題を力強く告発し、自らの考えを繰り返し発表しました。

そして1891年より現在まで、歴代の教皇は全世界、とりわけ善意あるすべての人にむけて、それぞれの時代の社会問題について語ってきました。常に搾取されている人々、苦しい立場に追いやられ、あるいは排除されている人々を中心にして、現状を告発し、その原因を探り、具体的な解決策を提案してきました。

なぜ教会はそのような発言をするのでしょうか?

1931年に当時の教皇ピオ11世は、発布した『クアドラゼジモ・アンノ』という教説において、次のように述べています。「教会は、技術の領域では、適当な手段と能力とをもたないために、介入しないけれども、道徳律に関するすべてのことがらに介入することは、神からさずかった任務であるから、これを放棄することができない」(45番)。教会にとってすべての人間が大切であり、とりわけもっとも苦しんでいる人々を「置き去りにすることはできない」(教皇ヨハネ・パウロ2世回勅『人間の贖い主』、14番)からです。

1891年から現在まで、社会問題にかかわる教会の公文書はつぎの通りです。

公文書一覧
年月日 公文書名 教皇
1891.05.05 レールム・ノヴァルム 労働者の境遇  レオ十三世
1931.05.15 クアドラゼジモ・アンノ 社会秩序の再建             ピオ十一世
1961.05.15 マーテル・エト・マジストラ キリスト教と社会的進歩        ヨハネ二十三世
1963.04.11 パーチェム・イン・テリス 地上の平和      ヨハネ二十三世
1963.12.23 クリスマス・メッセージ パウロ六世
1964.08.06 エクレジアム・スアム 教会の使命について          パウロ六世
1965.12.07 現代世界憲章 (第二バチカン公会議) パウロ六世
1966.02.09 一般謁見のときの話 パウロ六世
1967.03.26 ポプロールム・プログレシオ 諸民族の進歩推進について      パウロ六世
1971.05.14 オクトジェジマ・アドヴェニエンス (教皇書簡) パウロ六世
1971.12.12 世界の正義 (シノドス文書) パウロ六世
1975.12.08 福音宣教 (教皇訓戒) パウロ六世
1979.03.04 レデンプトル・オミニス 人間の贖い主              ヨハネ・パウロ二世
1981.09.14 ラボレム・エクセルチェンス 働くことについて ヨハネ・パウロ二世
1987.12.30 ソリチトゥード・レイ・ソチアーリス 真の開発とは  ヨハネ・パウロ二世
1988.08.15 ムリエリス・ディグニタテム 女性の尊厳と使命(使徒的書簡) ヨハネ・パウロ二世
1991.05.01 チェンテシムス・アンヌス 新しい課題  ヨハネ・パウロ二世
1993.08.06 ヴェリタティス・スプレンドル 真理の輝き  ヨハネ・パウロ二世
1996.03.25 エヴァンジェリウム・ヴィテ いのちの福音  ヨハネ・パウロ二世
2001.02.27 いのちへのまなざし 日本カトリック司教団
2003.04.08 カトリック教会の教え
2004.06.29 教会の社会教説綱要 教皇庁正義と平和評議会
2009.06.29 カリタス・イン・ヴェリタテ 真理に根ざした愛  ベネディクト十六世

 

詳しい資料はこちら

Comments are closed.