東ティモールの開発と教育

村山 兵衛 SJ(神学生)

  今年2016年、東ティモールは独立を実現して14年目となりますが、経済や社会や教育の分野で様々な困難に直面しています。「復興」から「開発」へと舵を切り、他国に依存しない産業の育成と雇用創出を通して、東ティモールは持続可能な社会づくりと貧困削減を政策目標としています。しかし問題が山積しております。

  東ティモールは国の収入の大部分を石油資源に頼っています。コーヒー産業も有名ですが、他の産業は極めて弱いです。そのため、人口の約半数を占める未成年者が今後参画することになる労働市場、その未成年者を教育する教育機関の人材・インフラ不足は政府にとって大きな課題となっています。

  また環境問題も深刻です。手間のかからない焼き畑農業と無計画な森林伐採のゆえに、緑が少なく地滑りの危険に絶えずさらされている山々があります。ごみ処理問題も、分別やリサイクルに対する意識・知識不足のため、多くの改善の余地を残しています。

  のどかな国民性という反面、海外からの投資が進まない理由として、職場における労働者の倫理不足や政府の能力不足が指摘されています。とくに、一部の退役軍人や遺族に高額の社会保障が偏って支払われる政府の不適切な予算配分は、かえって貧困削減を阻害する汚職ではないかと批判されています。政府は人材開発を優先すべきはずなのに、国家予算に占める保健・教育分野の割合は、ASEAN諸国と比較して低い結果を示しています。

  そんな中で人口は急増。教育現場は深刻な課題を背負っているといえます。教育の機会に恵まれなかった親のもとで育ち、現在の不十分な学校教育に依存しながら、東ティモールの子どもたちはまさに開発の担い手となるよう求められているのです。

  今年で4年目となる「聖イグナチオ・デ・ロヨラ学院」は、海外からの寄付に多く頼りながら、この国の子どもたちに少しでもより質の高い教育を提供しようとしています。同学院が建つ地元の村から通ってくる生徒たちは、奨学金制度や入学前の学習サポートの助けによって、首都ディリ出身の生徒と一緒に勉強をしています。生徒間の学力の差が大きいため、教育の現場では常に識別と創造力が求められます。私も中1のクラス担任の一人として、生徒間の学習パートナーづくりなどを促進しながら、この国の将来を担う子どもたちに同伴しています。助け合って勉強する彼らの姿のうちに、私は東ティモールの希望を見ています。

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参考文献: 世界銀行、『東ティモール社会扶助、公的支出、およびプログラム実行報告書』(Timor-Leste Social Assistance, Public Expenditure and Program Performance Report)、 2013年。

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