社会的起業

ビセンテ ボネット SJ
イエズス会社会司牧センタースタッフ

  Phillip Cooke神父は、サンタ・クララ大学の科学・技術・社会センターに属するイエズス会の社会的起業家です。彼は、マニラで社会使徒職会議のために集まっていた私たちに、米国からskypeで話してくれました(時差があるため彼は夜中の1時半まで待たなければなりませんでした)。彼は自分のことについて、次のように語っています。「私は教会内で長年、社会使徒職活動を一生懸命してから、貧しい人々が自らの力をさらに強められるように、社会使徒職活動がさらに活気あるもの、力強いものになる方法を探してきました。」

  「社会的起業」というのは、かなりの参加者にとって新しい考えだったので、会議において、いくつかの国での具体的な例について聞いたり、またマニラでそのような事業を訪問したりすることは、非常に良い学習の機会になりました。ここで、いくつかを紹介したいと思います。

「貧しい畑主の連帯協会」(カンボジア)
  第1のケース・スタディーは、イエズス会サービス・カンボジアの「Ang Snuol 農村開発」(RDAS)が運営する「貧しい畑主の連帯協会」(PFSA)でした。各村のPFSAは、貧しい畑主の少なくても10家族から始めます。この家族グループのねらいは、連帯と一致と責任の意識によって、自分たちと共同体が持続可能な発展をすることです。彼らは、自信と尊厳を取り戻します。
  1000リエル(およそ0.25米ドル)の会費によってPFSAの基金をつくって、その基金から農業(種)や小さな事業のためにお金を借りることができます。彼らは、RDASの牛銀行プログラムから牛を借りられるし、収穫が良くない時に備えて自分たちの米銀行プログラムをつくり、悲惨な状態にある人々に緊急支援もします。さらに、村のための小さな図書館や学校の新しい教室というプロジェクトも行います。

rice bank村の米銀行(カンボジア)

  現在PFSAは、12のcommune(1つのcommuneは8~10の村で構成)にあり、10,000家族以上がメンバーになっています。カンボジアの代表者は、新しいPFSAを始めるための手順と、communeの代表者との協力についても説明しました。

「繁栄の光信用組合」(インドネシア)
  インドネシアの代表者は、第2のケース・スタディーを紹介しました。まずMuhammad Yunus氏を引用して、社会的ビジネスの7つの原則(http://www.muhammadyunus.org/index.php/social-business/social-business)に触れてから、Pelita Sejahtera(繁栄の光)信用組合について説明し、インドネシアの普通の信用組合で除外されている貧しい人々に、どのように財政的なサービスを提供するのかを明らかにしました。
  繁栄の光信用組合メンバーは、13%がキリスト者、27%がカトリック、そして60%がイスラム教徒であるので、宗教間の対話にも協力している、と指摘されました。

「イグナイト・ケータリング・サービスとコーヒーショップ」(オーストラリア)
  第3のケース・スタディーとして、オーストラリアの代表者は、彼らの「イエズス会社会サービス」のビジョンと、「貧しい人々と連帯して、正義を促進する信仰を表現する」というミッション、そしてその組織を説明してから、「Ignite Catering ServiceとIgnite Cafe」という事業を紹介しました。このような社会的事業は、利益のためではありません。長期失業者のために、訓練と仕事を提供します。「訓練と雇用は、共同体とのかかわりへの決定的な道であることを認識して、技術、同僚との関係作り、指導と仕事の機会を提供する生きた教室である」と言っていました。
  2012年から90人がこのプログラムに参加し、60%は雇用されました。その内、会計係1人と配達運転手1人を含む6人は、イエズス会社会サービスで働いています。
  「コーヒーをつくるために人を雇うのではなく、人を雇うためにコーヒーをつくるのである」という言葉で説明を結びました。

  上記のケース・スタディーの他、マニラとその周辺で、3つの社会的事業を訪れることができました。

「うっとりさせる農場」(フィリピン)
  「Gawad Kalinga Enchanted Farm」は、非常に大きな社会的事業です。その基本計画は、農場の周りの村人が貧困状態から脱出できるようにすることです。社会的起業家は、社会的刷新センター(CSI)の下で、小規模な事業を起こしています。そのため、貧しい子どもたちが、社会的起業家になるよう養成する学校もあります。さらに同じ目的で、大学を始める予定をしています。主事であるTony Meloto氏は、アテネオ・デ・マニラ大学の卒業生です。彼は、奨学金で勉強ができたから、恩返ししたいという自らの信念を力強く語りました。また、そこで勉強している若者3人も、社会的起業家になるという、はっきりとした自分たちの決意を伝えてくれました。

「ぼろきれから富」(フィリピン)
  「Rags2Riches」は、フィリピンの最も大きなゴミ捨て場であるパヤタスで生活している、貧しい家族を支えるために起こされた社会的事業です。ナナイス(フィリピン語でお母さんたち)は、ゴミ捨て場で拾ったぼろきれで、マットをつくっていました。ほとんどの利益は仲介人にとられていたので、彼女たちは非常に乏しい生活しかできませんでした。2007年から彼女たちは、ぼろきれから、きれいなマットやバッグなどを売る社会的事業のメンバーになりました。自信をもって、彼女たちはマットの作り方を教えてくれた後、私たちはマカティ市にあるその一つの店を訪れました。

Rags2Riches「Rags2Riches」の店(マニラ)

「アース・キッチン・レストラン」(フィリピン)
  最後に私たちは、夕食のためにEarth Kitchen Restaurantに行きました。このレストランは、もう一つの社会的事業に属していて、いろいろな有機農業共同体がつくる食品を使っています。夕飯後に、この社会的事業にかかわっている若者二人から、自分たちの体験についての話を聞き、スタディ・ツアーの長い一日が終わりました。

  私は、日本では大企業が市場をコントロールしきっているので、社会的起業は不可能に近いと思っていました。しかし、具体的な例についての発表を聞き、マニラとその周辺で社会的事業を見学して、日本でも可能性があるのでは、と考えるようになりました。

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