《 社会の窓から① 》 連携した協力と継続で ~シソポンでの自立支援~

川地 千代(イエズス会社会司牧センター)

今号から、新連載「社会の窓から」が始まります。イエズス会社会司牧センターのスタッフや協力者が交替で、日々の活動や体験から、社会のさまざまな問題について感じたことを書きつづります。

  みなさん、「かんぼれん」というグループをご存じでしょうか?
  「カンボジアの友と連帯する会」の通称です。2003年発足以来、カンボジアの人々と意見を交わしながら、教育・保健・農村開発など、彼(女)らにとって優先度が高いと思われる支援プロジェクトを選んで、連帯していこうとしています。
  かんぼれんの主な対象は、カンボジア北西部タイ国境近くのシソポン周辺の貧しい人々です。そこには、イエズス会サービスカンボジアのスタッフが活動して います。かんぼれんは、人々との連帯の一環として、毎年スタディ・ツアーを実施し、老若男女10名の会員が自費で参加し交流しています。少しでも会員自ら 消費を減らして支援に当て、少しでも自らの時間をかけてカンボジアの友の状況を知ることができれば幸いです。
  ツアーで、シソポンに洋裁店を開いたモン・ベスナさん26歳を訪ねました。彼女は子どもの頃、ポリオで下肢が麻痺し、足の筋力を奪われて、何とか立つこ とはできるが歩けません。かんぼれんは車いすを支援しました。彼女はプノンペンのイエズス会サービスが運営する障がい者のための全寮制職業訓練校「鳩セン ター」で、一年間、ミシン洋裁を学び卒業しました。現在はシソポンの家に戻って、結婚式のドレスから子どもの制服まで注文に応じて縫製し、一家の生計中心 者です。入口の壁には、鳩センターの修了証が誇らしげに掲げられ、彼女の笑顔は自信に満ちていました。最近は店に弟子もおいて教えています。
  カンボジアでは、貧しくても結婚式は思いっ切りお洒落をします。店先のガラスケースの中は、色とりどりのビーズやボタン、スパンコールがぎっしりと揃えられていて、訪れる人はセンスのいい彼女に洒落た服を頼みたくなるのでしょう。
  地域を担当するシソポンのイエズス会サービススタッフは、日頃から彼女や家族たちに声をかけて、事情をよく知っています。貧しい家族であって、障がいの ある彼女が自立するには、どんな支援ができるのか?と考えています。鳩センターでの訓練は、彼女自身の希望でしたが、シソポンという地方から一年間プノン ペンに住み、彼女自身の適性だけでなく、家族は留守中大丈夫なのかも含めて、本人・家族・知人からも詳しく調査しました。そして条件が整い、シソポンのス タッフから鳩センターに推薦され、入学できて支援はつながりました。彼女は熱心にミシン洋裁を習得しました。留守中の家族にも、スタッフは支援していたこ とでしょう。卒業後シソポンに戻ってからも、シソポンのスタッフが定期的に様子を見に来て、これからも自立していけるように、フォローを継続しています。
  彼女のように、経済的自立に加えて、「自分に自信が持てる」までに自立できたのは、支援の豊かな果実でしょう。連携と協力をうまくして、継続してきたのですから。
  かんぼれんは、毎年のツアーで、プノンペンの鳩センターを訪問しているので、そこでミシン洋裁勉強中の彼女に会っています。現に、彼女は鳩センターで 会った「ファーザー パイプ!(かんぼれん代表であるボネット神父)」を覚えていました。そして数年後に、地方のシソポンで、その卒業生が自立して働いて いる姿にまた出会えたのです。

※かんぼれん連絡先
http://www.camboren.org
E-mail:office@camboren.org

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