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はじめに「おにぎり仲間」に参加するようになったきっかけをうかがいます。シケさんは最初から参加なさっていたんですよね。 |
4年前に「おにぎり仲間」がはじまったときに、(創立メンバーの)岩田さんと酒井さんがここ(SJハウス)に来て、「柴田さんから名前を聞きました。これから、活動をはじめるので、参加してください」と言いました。だから、あなた(柴田)のおかげです。
テレビのコメンテーターが、英米による対イラク戦争の反動で、「イスラム教テロリストの攻撃」は今後、増加するだろうと解説する後ろには、野外モスクでターバン・長衣姿で祈るイスラム教徒の映像が流れていた。
私はシケさんの影響で、去年の6月からはじめました。まだ(活動歴は)若いです。会計の細かい仕事をしていて、(イグナチオ)教会の手伝いを全然していなかったので、何かお手伝いしたかった。そう思っていたときに、シケさんからおにぎり仲間の話を聞いて、特に貧しい人に興味があったので、行ってみることにしました。
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毎週土曜日の訪問班の活動に参加しているるそうですが、どれくらいの頻度ですか? |
1ヶ月4週のうち、3、4回は参加していました。最近は忙しくて、2回ほどです。
私は病人の世話をしていますから、毎土曜日は参加できませんが、できるだけ参加するようにしています。場所も四ッ谷の近くだけです。それから、第3か第4の土曜日に銀座で、ボランティアのお医者さんが来て、健康相談をします。時によってちがいますが、15人から20人くらいのホームレスの人が来ます。私は車で机とイスを運んで、終わったら持って帰ります。あるいは、雨が降る日は、車でおにぎりやお茶を集合場所の数寄屋橋まで運んで、そこから4つのグループが分けて持っていきます。 |
全部で5つのグループがあって、1つは四ッ谷から駅のまわり。あとの4つは銀座の数寄屋橋から出発して、1つは東京フォーラムを通って東京駅。それから、日比谷公園に2つのグループが行きます。あとの1つは、銀座一丁目から昭和通りを越えて、弾正橋まで。いずれも東京駅に集まります。その日のリーダーによって、「あなたはこっち」というふうに振り分けられますから、5つのグループどれも経験しています。
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夜6時に出発して何時に終わるんですか? |
電車で運んだり、雨の日はシケさんに車で運んでもらったおにぎりやお茶、野宿者の方に配る通信、歯ブラシなどの日用品を、6時半に数寄屋橋で分けるでしょう。それで、各グループが配り終わって東京駅八重洲口に集まるのは、だいたい8時過ぎです。そこで休んで、9時から八重洲口や丸の内口の人たちに配りはじめます。
なぜ9時まで待つかというと、それまで野宿の人が駅に入れないんだそうです。それは駅の都合で、だいたい9時過ぎから午前1時頃まで構内に入れるんですが、また1時を過ぎたら外に出されてしまう。それで、朝の4時か5時頃にまた入れる。一番寒い時間に閉め出されてしまうので、大変きびしいんですね。
その後、集まって話し合いをして、終わるのが10時過ぎですから、ここに帰ってくるのは10時半から11時前です。
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一晩で何人くらいの方と話しますか? |
おにぎりの数でいうと、だいたい、1回で300個くらい作るんです。お米は21キロくらいだそうです。それで足りないときもあるし、雨が降ったりすると余ることもあります。 |
地下道や他のところに移るようです。
渡すときには、「体の具合はどうですか」とか「仕事はどうですか」とか、いろいろ話しかけます。それで、具合の悪い人とか仕事をしたい人などは、月曜の朝8時半に東京駅の丸の内側で待ち合わせて、ボランティアの人と一緒に福祉事務所などに行かれます。あとは、「何か必要なものはありませんか」と聞いて、次の時に持っていきます。ないといけないから、確約はしません。でも、できるだけ希望に添うように、歯ブラシとかカミソリなどを持っていきます。
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話しかけてすぐ、相談を持ちかけてくるようにはならないですよね。 |
初対面の人からは少ないようです。何回か繰り返して、ある程度知り合いになってからでしょうね。
2年前かな、四ッ谷の近所に野宿している人が2人、おにぎり配りに参加したいと言ってきて、一緒に行きました。そのとき、1人が言っていたのは、「皆さんは、おにぎりとか日用品とか、通信とか、いろんなものを配ってくれてありがたい。でも、一番ありがたいのは、いつも同じ人が来てくれるので、私たちは安心して、自分の本当の名前を打ち明けることができる。それを一番感謝しています」と言っていました。
さっき薬袋さんが言ったように、月曜の朝8時半に、東京駅に福祉班が行って、住まいのことだとか、病院を紹介したりとか、相談にのります。それには書類が必要ですが、だいたい野宿の人は書類に弱い。だから手伝います。福祉事務所は今は変わったみたいですが、以前は、どちらかというと野宿の人たちに冷たかった。だからボランティアの人たちは、福祉事務所への手続きとか、いろんなことを手伝います。野宿者にとって、日本社会が彼らを無視して差別しているなかで、ボランティアの人たちは一人ひとりに積極的に関わってくれる。それが非常にうれしいということです。
一般の人にとって、野宿者の人と会うのは、最初は怖いです。汚いし、心配です。それは、どこの国でも同じです。でも、接触していくと、何かをあげる以上に、こちらが変わってきます。少なくとも、私は変わってきました。よく、「こういう(野宿の)人は怠け者だから」という声を聞く。非常に軽い判断です。私たちは無意識に野宿の人たちを怖がる。直接・間接に私たちのセキュリティが危なくなるから。でも、これは本当の福音からの声じゃないでしょ。 |
だから、私は「おにぎり仲間」の活動に感謝したい。野宿の人たちと接触する前と、今とでは、やっぱり違いますよ。それは、おにぎりのボランティアの人たち、いろんな人からも聞きました。
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ボランティアは若い人が多いそうですが? |
大学生や高校生、社会人も若い人がいますが、総体的には社会人が多いです。
奥さんも多い。ご主人たちもいる。時々聞かれるのは、「私に何ができるでしょうか」。一人ずつ小さなこと、それが集まって大きなことになる。
それから、時々、「こんなことは教会の仕事じゃない」と言う人もいます。ちょっと待ってください。キリストは、おなかが減っている人、のどが渇いている人、服のない人にどうしなさいと言っていますか。キリストが今、ここにいたら、何をしますか。
でも、私たちがホームレスの人のところに行くとき、どのような態度、姿勢で行くのか。好奇心からではなく、同じ人として尊敬すること。これが大事なことです。
2年前、スペインから2人の新聞記者が来た。「おにぎり仲間」のことを聞いて、一緒に四ッ谷の近くに行きました。新聞記者ですから、野宿している人に、何という名前なのか、どうしてここに来たのか、いろいろ聞きたがった。だから私は言いました。「私たちは、絶対そういうことは聞きません。それは、その人のプライバシーです」
その点で、薬袋さんも含めて、ボランティアの人たちはみんな、上からでなく、当たり前の姿勢で話しかけます。これは大事なことです。ホームレスの人たちと接して、いろいろ学びます。「ホームレスは怠け者だ」と言います。でも、一人ひとりのホームレスに、どんな歴史があったでしょう。同じことが私たちに起こったら、どうするでしょう。考えさせられます。
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薬袋さんは、そういう風に野宿の人に話しかけることに、簡単に入っていけましたか? |
訪問グループは5つあって、その一つひとつに必ず男性が1人と、あとは2人ないし3人の女性が入ります。男性が入るというのは、何かあったときに女性だけだと危険だと思います。それで、グループに1人リーダーが決まるんですが、私はお願いして、1年間、「兵隊」にしてもらっています。 |