社会司牧通信   No 91  99/8/15

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住民投票に揺れる東ティモール(6月17~24日)

 

 独立か併合か-インドネシアの総選挙と、独立をめぐる住民投票で、大揺れに揺れる東ティモールの近況を、つい最近現地を訪れた人のレポートで紹介します(なお、安全のため、筆者の名前は公表しません)。
首都ディリから東へ移動しながら、今まで経験したことのない静穏を感じました。国連の関係者が入っているところの住民は安心しています。暗くなっても、海岸に沿ってディリから東のバウカウの町まで続く道路には、交通が続いています。釣りの場所を探している人々も歩いています。

 しかし、この静けさは、この道路から離れていくと、なくなります。村々の住民は暗くなると家から出ていきません。殺されるかもしれないので、若い男は(高校生でさえ)家では寝られません。若さが殺される理由になっているのです。

 東ティモールの至るところで、住民投票で独立を選ばないように、と脅迫が行われています。7月20日までは運動が許されていないのに、独立に反対するミリティアス(民兵)は、人々が投票の際、東ティモールがインドネシアの一部として残ることを選ぶようにと、おだてたりすかしたりしています。独立派のリーダーは探し出されて、消されているのです。警察は独立派を守ってくれませんので、外に出られず、身を隠しています。


独立を嫌う国軍

国軍がバックにいるので、ミリティアスは平気で脅迫や人殺しを行なっています。ミリティアスが軍によって訓練され、場合によっては軍から武器をもらっているのは周知の事実です。ミリティアスは東ティモール人だけではなく、西ティモールや他の島からも集められています。

 けれど、どうして国軍は、ハビビ大統領が決めた住民投票に反対しているのでしょうか? やはり今でも、インドネシア、特にティモールやアンボン、アチェ、イリアンジャヤなど離れた島々を治めているのは軍なのです。

軍が東ティモールから出たくないわけはいろいろがありますが、一つの大きな理由は、近代的な武器を持つ18,000人の軍が、山に引っ込んでいる第二次大戦当時の武器しか持たない500人のゲリラ兵に負けるのは恥だ、ということです。国軍としてのプライドや、ジャワ人の優越感が許さないようです(しかし、軍は、500人だけと戦っているのではなくて、ひとつの民族と戦っているということが分かっていないようです)。
 もうひとつの理由は、東ティモールの独立を認めれば、これまでの戦いで大勢戦死した軍人の犠牲が全く無意味なことになってしまう、ということです。

 住民投票が正しく行なわれるなら、東ティモール人の90%以上は独立を選ぶに違いないでしょう。住民はとにかく、国軍の残酷な迫害から解放されたいのです。軍もそのことを知っています。でも、住民投票はもう公にはやめさせられないので、独立という結果を出させないように、いろいろの方法を準備しています。


*脅迫と殺人によって、住民投票ができないような雰囲気を創り出すこと
しかし、国連の目の前で、そして、全世界の目が東ティモールに向いている状況で、国軍が今までのように自由に行動できなくなったので、ミリティアスに汚い事をやらせています。国軍が許さないかぎり、ミリティアスが今やっているようなことは絶対にできないのです。
 
住民投票を前に、東ティモールにいる国軍兵士を警察官と入れ替える約束がされていますが、それは次のように「実行」されています。兵士は船に乗って、ディリから出港します。そして、軍服を警察官の服に着替えて、前と同じ武器をもって、別の船で戻ります(国連本部は、もうこのことを知っています)。
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*それでも投票が行われるなら

  1. 脅迫、誘拐、殺人によって、できるだけ住民が参加しないようにする。同時に、お金をばらまいて、できるだけ大勢の住民が独立を選ばないようにする。
     この目的のために、何億ルピアというお金がばらまかれています。しかし、このお金をオーストラリアで調べたところ、だいぶ贋(にせ)金が入っていました。
  2. 西ティモール人を投票に参加させる。
     国連本部は、それを止めるために、カトリック教会と一緒に計画を立てています。カトリック信者が人口の95%以上にのぼるからです。しかし、この計画が無駄になるようにと、軍が指揮して、東ティモール西側の中央部から、西ティモール人が東ティモールに追い出されています。
     2週間前には、すでに52,000人の避難民が西から追い出されて、ラクイサ町の「避難民」キャンプに留められています。けれども、軍の偽瞞の目撃者はいません。このキャンプに一般人は入れないのです。
  • 東ティモール西側の中央部はコーヒーが栽培されている地域ですが、住民は恐くて入れなくなりました。ラクイサ町のまわりの青少年は、ミリティアスに名前を届けて、ミリティアスに入るように、という命令を受けています(これも国連本部に知られています)。

  • ラクイサ地域の責任者はインドネシア人で、国軍の将校です。彼はミリティアスに、隠れている人を探し出したり、人を殺したり、家を燃やす訓練しています。彼は戦死したインドネシア人と同じ数の東ティモール人を殺すと誓っているそうです。

  • c. 東ティモールが独立したら、東ティモールの西部を西ティモールに付け加える。
  • こうして、金になるコーヒーの商売が、完全に国軍の掌中に戻ります。5年前までは、まさにそのとおりだったのです。
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