社会司牧通信   No 88  99/2/15

2000年までに貧しい国の債務を帳消しにし、21世紀を新たな出発としよう!
より公正で、すべての人々にとって暮らしやすい世界のスタートへ!

 昨年末の社会司牧通信で、「JUBILEE2000-債務帳消し国際キャンペーン」の署名をお願いしました。イギリスのキリスト教団体が提唱し、教皇庁や日本のカトリック司教団も賛同している、この債務帳消し国際キャンペーン。当センターも日本の実行委員会に参加しています。今号では日本の実行委員会が出しているニュースレターの創刊号などから、記事を再録してお届けします。

 2000年までにアフリカの重債務最貧国の債務を帳消しにしよう、という国際キャンペーンがスタートしました。
 1999年にドイツで行なわれるG7サミットにおいて2億2千万人分の署名を各国首脳に届けようというもので、署名活動等の取り組みが始ったのは約70カ国にのぼっています。G7でもすでにドイツ、アメリカ、カナダには事務所が設置され、イタリア、フランスもそれに続く勢いとなっています。日本でも10月12日に実行委員会が設立されました。
 現在「重債務最貧国」と呼ばれる国は世界で 41カ国あります。しかも、うち33カ国がアフリカ大陸に集中しています。これらの国々は、国際金融機関や北側諸国から借りたお金を返すのに精一杯になっており、国の発展や医療、教育などへ使うべきお金をどんどんと削減しています。
 例えば、アフリカの平均識字率はこの10年ほどで10%以上も減少、ザンビア、ジンバブエなどでは80年代以降幼児死亡率が増加しています。一体なぜこんな状態に陥ってしまったのでしょうか? 冷戦下、北側諸国の間で取り合いとなっていたアフリカには、自国の陣営に引きつけるための援助や資金が盛んに入ってきていました。しかし冷戦後、世界の関心はアジア諸国へと移ります。アフリカはまだ発展段階にあったため、購買力や市場価値が高くはなく、北側諸国にとって魅力のないところとなってしまったのです。結果、流入する援助額は減り、いつしかアフリカに入る援助額よりアフリカが債務返済として北に返す額の方が上回るという事態になってしまいました。しかし債権国の貸したお金の行方を細かく追ってみましょう。本当に南の国々のことを考えて行なった資金の投入だったのか、疑問が出てきます。

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 「必要ない」お金を貸しつけられ、その返済のために四苦八苦しているアフリカ…、債務問題の責任が一体誰にあるのか、考え直さざるを得ません。  債務の帳消しを求めることは、世界が一緒になって「貧困問題」に取り組む、ということです。これは、現状を維持して、「北が損しないプログラム」を地球という実験室で続けることよりも、はるかに困難な道のりです。対象国を選ぶ過程や条件設定で対立が生まれたり、帳消し後には急激な人口増加等が、環境破壊を悪化させるかもしれません。軍事費が増大する可能性もあります。帳消し=貧困がなくなる、ではないのです。しかし、飢餓と飽食の共存する星の未来世代として、私たちにできることを探していくことこそがまず重要なのではないでしょうか。
 債務が帳消しになり以後の国づくりが正しく進むよう世界中の人々が問題に正面から取り組めば、数え切れぬメリットがうまれ、はじめて世界的不公正からの脱却がはじまるのです。帳消は南北問題解決への第一歩なのです。

(阿部麻美衣/A SEED JAPAN)

国際会議ローマで
 去る11月15日から17日にかけてJUBILEEキャンペーンの国際会議が開かれ、世界各国のJUBILEEキャンペーン組織がローマに集まった。共同代表の北沢洋子が参加した日本を含め北側諸国18カ国、南からはアンゴラ、ガーナほか20カ国が参加した。各国のJUBILEE2000キャンペーン組織のほか、ICFTU(国際自由労連)、WCC(世界キリスト教協議会)、カトリック教会など国際組織12団体が参加した。
 JUBILEEがうたっている「返済不可能な債務の一度限りの帳消し」に対して、アフリカ・グループは、そもそも「債務が返済不可能」なのではなくて、「債務は植民地時代から先進国より貸し付けられた不道徳な債務なのだから、返済すべきではない」と主張。さらに、債務帳消しは「最貧国」だけを対象にするのではなく、「無条件でなければならない」、また「貧しい」という表現は適切ではなく「貧しくされた(impoverished)」である、といったことがあげられ、そのような議論のうえローマ宣言が採択された。

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「先進国」でのさまざまな取り組み
 先進国で一番活発なキャンペーンを繰り広げているのは英国で、93年からキャンペーンに取り組みはじめ、キリスト教会ほか労働組合、英医師会、NGOなど90の有力な民間団体が加盟し、キャンペーンをすすめている。  2億2千万人の署名を提出する99年のサミット会場となるドイツでは、国内の多くの団体が共同でデモやイベントに取り組んでいる。ドイツは旧東独時代のエチオピアなどに対する軍事、経済援助分が多く、二国間債務はヨーロッパで最大であり、日本と並んで債務削減に反対している。
 米国のキャンペーンは、26州をカバーし180団体が加盟して98年10月に発足した。ジェシー・ジャクソン牧師が参加し、キャンペーンの象徴的存在となっている。議会で債務帳消しの法案を採択するためロビー活動が中心で、そのほかカナダ、米、スペイン、北欧各国でキャンペーンに取り組んでいる。


「途上国」の動き
 99.2.14ニカラグア、ホンジュラスで、ハリケーン後、政府、議会、市民社会ともに、債務の即時帳消しの要求が合意されている。
2カ国の対外債務総額は100億ドルを超え、毎年の返済額はホンジュラスの国家予算の80%、ニカラグアでは50%にのぼっている。債務返済のための外貨を得るためのコーヒー、バナナなどの換金作物はハリケーンの被害にあい、回復不可能となっていて、債務返済は実際不可能な状態。  アフリカでは、98年4月にガーナのアクラにおいて、アフリカの国際5団体が呼びかけてアフリカ会議が開かれ、そこでアフリカキャンペーンの設立とアフリカ各国にJUBILEE2000を組織していくことが決議され、「アクラ宣言」が採択された。
 西アフリカでは、IMF(国際通貨基金)の構造調整政策によって通貨が50%切り下げられ、さらにコーヒー、ココア、綿花などの一次産品の市場の値段が値下がりし、債務が急増した。東アフリカでの通貨の切り下げは西アフリカより厳しく、百分の一に値下がりし、債務も天文学的数字に急増している。債務を返済するために、国内の耕作可能な土地はすべて輸出用の換金作物に転換され、その結果自分達が食べる食糧を輸入に依存する事態になっている。ケニアではさらに、政府が手にした外貨をすべて借金返済にまわすので作物を出荷した小農民は受け取ることができず、そのような農民が高利貸しに借金をする、ということが頻繁に起きている。

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もし、抵抗グループをつくって政府に支払いを要求すればそのリーダーが暗殺される、という悪循環が起こっている。

今後の動き
 このローマ会議のあと、次回の国際会議を99年11月にマニラにて開く予定となっている。今アジア地域でJUBILEEキャンペーンに参加しているのは日本、フィリピンだけだが、次回マニラ会議の際はアジアに向けての働きかけが大きくなっていき日本の役割も期待されていくだろう。

(北沢洋子/共同代表)




12月1日、ローマ法王はその教書で、先進国は「死の影」を取り除くために、発展途上国の債務削減を行うべきだと述べた。
 「たくさんの国の未来を脅かしている債務を、すべての帳消しは無理にしても大幅に削減するべきだ。クリスチャンは世界の貧しい人々のために、そうした声を挙げなくてはならない」「貧しい国のいくつかは、あまりにも巨大で返済も不可能なその債務のために抑圧されている。この解決にはすべての言語、人種、国籍、宗教を越えた協力が不可欠である」
12月4日、ドイツ政府の国際開発相はJubilee2000キャンペーンの提案を「正当なものだ」と発言し、政府案に取り入れて考える用意のあることを明らかにした。ドイツ政府はすでに債務削減について前向きに考えてきており、世界銀行の提案である削減プログラムHIPCSイニシアチブは受け入れるものの、来年のG7サミットではさらに進んだ提案をする必要がある、と考えているとのこと。

アナン国連事務総長は、国連安保理および総会に対し、アフリカ諸国の重債務を先進国が率先して軽減していくよう勧告した。勧告は、債務により国民の基本的ニーズの資金が不足していることが最大の問題であるとし、累積債務を作り出した責任は国際社会にもあることを強調して、債務帳消しを含めた方策の検討を求めている。また、当面、全ての債権国がアフリカ最貧国に対する二国間貸付債権を放棄し、国際金融機関が重債務国が資金を容易かつ迅速に利用できるようにすることを求めている。


ハリケーン「ミッチ」により農地の70~80%が壊滅的な打撃を被るなど深刻な被害にあったホンジュラスとニカラグアに対し、オランダは債務の帳消しを表明した。

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しかしながら、債権国会議であるパリクラブでは帳消しには至らず、向こう3年間の返済延期が決議されたにとどまった。英国Jubileeキャンペーンはこれに対して不満の意を表明した。

作家サルマン・ラシュダイ氏は、英国ザ・ガーディアン紙1月6日号に、「新たな千年を暴力や狂信主義や独裁に彩られたものにしたくないのなら、債務の帳消しを行うべきだ」との記事を寄せた。


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<国内での動きと今後の予定>
実行委員会に社民党、公明党、民主党から12名の国会議員が参加することになった。また、民主党の羽田孔、鳩山由起夫、末松義現、小宮山洋子氏が呼びかけ人となって、「債務問題に関するワーキング・グループ」が発足した。
債務帳消しキャンペーン「入門編」
ワークショップとお話
使った覚えのない借金:
国際債務の下の南の人びと

▼2月28日(日)13:30-16:00
▼千駄ヶ谷区民会館
▼500円
▼主催:グループWEAVE(アジア女性資料センター)、債務帳消しキャンペーン日本実行委員会
債務帳消しキャンペーン
国際シンポジウム
債務の鎖をたちきるために-
国際債務問題と私たちができること

現場からの報告-ケニア、ガイアナから

▼3月13日(土)14:00-18:00
▼上智大学10号館講堂
▼第一部:基調講演/ローズマリー・キニャンジュイ氏(ケニア)ウィリアム・コックス氏(ガイアナ)アン・ペティファー氏(Jubilee英国代表・予定)
▼第二部:ライブ/B.B.モフラン&ユニット、パネルディスカッション/北沢洋子(実行委員会共同代表)武者小路公秀(フェリス女学院大学)+海外ゲスト
▼1000円▼主催:上智大学社会正義研究所、債務帳消しキャンペーン日本実行委員会
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ジュビリー日本委員会は今年6月のケルン・サミットに日本から100万人分の署名を届けることを目標にしています。キャンペーンについて分かりやすく説明したパンフレット(300円)もあります。お問い合わせ下さい。
TEL.03-3291-5901/FAX.03-3292-2437
Eメール.parc@jca.ax.apc.org
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