社会司牧通信 __ No 84__ 98/6/15
     イエズス会 ボランティア活動ネットワーク

いよいよスタート
川地 千代(イエズス会社会司牧センター)
 ゴールデンウィーク終盤の5月3~5日、下関の労働教育センターで、初めての「イエズス会ボランティア研修会」が開かれました。この研修会は新たな試みであり、参加事業体の協力を得ながら、この度は主に社会司牧委員会によって企画されました。企画に携わった者として、全体的な流れをお話したいと思います。
 労働教育センターは、下関駅から15分程の、小高い丘の上(心臓破りの階段を上り詰めた所)にあり、眼下には紺碧の関門海峡を眺望することができます。その素晴らしい景色、海や山の幸、そして距離を縮めた人の交流といったご馳走に、舌鼓を打ちました。男性参加者の大半のジュニア(?)の方々は、修学旅行を思わせる雑魚寝になりましたが、学生時の気分でも懐かしんで過ごして頂けたようで、感謝しています。
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 さて、参加者は

イエズス会中高4校

  • 泰星学園
  • 広島学院
  • 六甲学院
  • 栄光学園
  • エリザベト音大
  • 上智短大
  • 上智大人間学研究室
  • 上智社専
  • イエズス会神学院
  • 三木ハイム
  • 労働教育センター
  • 旅路の里
  • 社会司牧センター(東京)
  • 細江教会
  • 山口教会
  • 社会司牧委員会
そしてイエズス会と縁のある
  • サビエル高校(小野田)
  • 松徳女学院(松江)
  • 育英高専(東京)
からで、総勢30名が集まり、熱心に話し合いました。その他にも、残念ながら今回は都合が悪く、参加できない事業体もありました。
 このイエズス会ボランティア活動への取り組みは、イエズス会第32総会の「信仰の奉仕と正義の推進」「世界への関与」等の延長線上にあります。最近の第34総会や管区フォーラムでの決定を受けて、教育事業と社会司牧委員会との相互の呼び掛けで、いよいよ具体化しました。まず1996年に、前述の学校関係や、日本管区内のいくつかの教会の現場へ、社会司牧委員会のメンバーが手分けして出かけていき、現状や意見を聞き取り調査し、中間レポートにまとめました。そしてその中で、日本でもボランティアネットワークを築きたい、ハンドブックがあったらいいという共通した強い要望が窺えました。そこで次のステップとして、先ずは教育事業を中心に、イエズス会員や共に働く教職員が、ボランティアハンドブック作りを通してネットワーク作りを試みようと、この研修会に至りました。
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 今回の研修会について、プログラムに沿って紹介してみましょう。

 初日夕方から、自己紹介、管区長代行の挨拶、各事業所毎の体験の分かち合い、3社会司牧センター(下関・釜ヶ崎・東京)並びにJVC(米国のイエズス会ボランティア)の紹介をしました。各校でのボランティアや体験学習の実情・良い点・課題を重点にして、限られた時間では言い尽くせない程の、工夫した実践事例が分かち合われました。

 翌日は午前中、まず「ボランティア」について考えると言う短いインプットがありました。その後4分科会に分かれて、ハンドブック作りにあたってのボランティアの理念的なことについて話し合い、全体に発表しました。
 午後は、開発教育について紹介し、実際に「貿易ゲーム」を全員でやってみました。世界の貿易のシミュレーションで、豊かな国の人々は「暇を持て余しているので、ボランティアでも(??)しようか」なんて言う始末、一方、貧しい国の人々は「働こうにも何にも無くて、やる気さえ起きない」と嘆息混じりでした。各々の立場で不公平感を味わって、ゲームにすっかりハマッテいました。
 ブレイクを挟んで後、ハンドブック作りの為に、準備・ボランティア・振り返りの過程に従って、また4分科会になって、それぞれシミュレーションしてみることにしました。
各テーマ設定は、アジアの国での体験学習、釜ヶ崎での体験学習、滞日外国人に関わる、福祉施設訪問と学校でのコンセンサスに決めました。どれも既に実行もしくは計画中の内容で、具体的かつ興味深いものばかりでした。全体で分かち合った後、ミサを捧げました。
 その後夕食を兼ねた交流会には快く、地元の下関市民グループの方11名やイエズス会の山口島根地区長も加わってくださいました。市民一人ひとりの生活の中に、自然体でしっかりと根付いている、環境・反原発・被爆・10フィート・戦後問題・東ティモール・NGO山口ネットワーク・教育・障害者・点訳・地雷廃絶等々の活動への取り組みとその人柄に耳を傾け、楽しい中にも互いに大いに励まされる一時を過ごしました。
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 3日目朝、参加者が東ティモールを思い起こす素敵な祭壇を準備してくれていて、皆で心のこもった感謝の祭儀を捧げました。午前中の最終セッションでは、これからについて取り上げました。ボランティアハンドブック作りを継続させること、当面は参加した学校を中心にしたボランティアネットワークを作ること、Eメールや各学校・センターのニュースレター等を使って積極的に情報交換を図っていき、来年も同時期に集まりを持つことを約して散会しました。二日間とも夜更けまで、実によく話し合いました。来年は、広島の長束黙想の家を借り切って、ハンドブック完成を目指しています。そうした過程を経ながら、ハンドブックの中身もネットワークも徐々に強化されることでしょう。同時に、主体である各学校においても、この取り組みが学校全体で一層明確に受け止められ、生徒・教職員・保護者・卒業生・地域の人々の輪が、もっともっと広がっていくようになるのが楽しみです。
 日程調整が困難で、乙女峠祭と重なってしまったり、各人の予定や家族団らんを返上して、ゴールデンウィーク中の実施となった研修会でしたが、イエズス会中高4校をはじめ教育の場にある教職員が、自ら足を運んでやっと一同に集まれた意義は大きいと思います。ボランタリティー溢れる参加者に支えられて、ボランティアネットワークがいよいよスタートしました。そしてこのネットワークの営みは、これらイエズス会員を含む一緒に働く人達が、オールタナティブな道を生み出していける好機ともなっていると感じました。
 最後に、労働教育センターのスタッフはもとより、裏方を担ってくださった方々、ご協力頂いた下関の市民グループの方々、そして参加者の皆さんに心から感謝いたします。そして、これからも互いに意見や情報を交換し合い、協力していきましょう。詳しい報告書は、別に進めているところです。
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