[書評]『ヒロシマ・ナガサキ議定書を読む絵本』【社会司牧通信154号】

 
 
http://yes.hiroshima-nagasaki.net/
「世界の約3000都市が加盟する平和市長会議が、2008年4月、核不拡散条約(NPT)を補完する「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を発表しました。

この議定書は核兵器のない世界を2020年までに実現するための具体的な道筋を提示しています。その主要な段階として、核兵器の取得と開発の即時停止、そして話し合いを即座に開始し、2015年までに核兵器禁止条約を締結することを求めています。

目指すべき方向と道筋が明らかになった今、必要なのは行動を起こし、子どもたちの未来を守ろうとする政治的意志だけなのです。

そして、この政治的意志を生み出す最良の方法は、ヒシマ・ナガサキ議定書を推進することです。ですから、あなたにこの議定書を理解し、推進者となっていただきたいのです」

 これは本書の「はじめに」からの引用だ。本書を発行しているのは、「YES! キャンペーン実行委員会」。広島市・長崎市・平和市長会議・日本YMCA・広島生活協同組合の後援を得て、平和市長会議と提携して活動している、広島の市民団体だ。その主な活動は、本書『ヒロシマ・ナガサキ議定書を読む絵本』の販売と、全国の市町村長に議定書への賛同署名を求める全国キャラバンだ。
 本書は、前文と全3条(10項)からなる議定書を、一文ずつ日本語と英語で紹介し、それを子どもでも分かるように、やさしい言葉で言い換え、写真とイラストを添えている。さらに、広島や長崎の市民からのメッセージも載せている。
 イラストを担当している黒田征太郎は、日本を代表するイラストレーター。世界的な建築家・安藤忠雄が表紙カバーにイラストを寄せ、やはり世界的なトランペット奏者の近藤等則が表紙にメッセージを寄せている。
彼ら一流アーティストによる文章やイラストは、もちろん素晴らしいものだが、同時に広島・長崎の市民の平和を求める生の声も、とても感動的だ。A5判・60ページの小さな本だが、平和への意志が静かに、しかし力強く伝わってくる。 
 2009年8月に出版され、11月に第3刷が印刷された本書は、市民運動の手売りにもかかわらず、販売数はすでに1万冊を越えているという。
 もう一つの活動である、全国自治体の賛同署名は、2010年4月6日現在で、全国1772自治体中1041治体、約59%にのぼっている。キャンペーンのメンバーは、各地でボランティアの運転手を募集して、自治体を一つ一つ訪れて、賛同を訴えている。実は先日も、カトリック正義と平和協議会を通じて柴田に、千葉県キャラバンの運転手を紹介してほしいという依頼が来た(残念ながらお役に立てなかったが)。かれらの熱意と行動力には、本当に頭が下がる。
 キャンペーンでは、絵本販売と、地元の市町村長への賛同署名の依頼に協力するよう、広く呼びかけている。絵本の売り上げは、キャラバンなどの活動資金となる。詳しいことは、上記のホームページを参照してほしい。
 最近、辺野古の米軍基地問題がクローズアップされ、平和問題に対する地方自治体の姿勢が問われている。国が動かないなら、地方から平和を実現するために、声をあげなければならない。この本は、その一歩となるに違いない。

<社会司牧センター柴田幸範>
 
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