[映画]ブルー・ゴールド-狙われた水の真実 【社会司牧通信154号】

http://www.uplink.co.jp/bluegold/
 
 「グローバリゼーション(グローバル化)」はイエズス会にとって主要課題の一つだが、いまだに十分に理解されていない。おおざっぱに言えば、「国境を越えて、人やモノやお金や情報が行き来することで起きる、よい結果や悪い結果」のことだ。イエズス会が「グローバリゼーション」を優先課題にするのは、それが単に国際経済や政治にとどまらず、世界各地の、特に貧しい人々に大きな影響を及ぼし、「周辺化/疎外(マージナライゼーション)」するからだ。
 まだ、分かりづらいだろうか? 「水」を例に、具体的に説明しよう。国境を越えて「水資源」が売買されるようになった結果、第三世界の貧しい人々は、ますます水が手に入りにくくなっている。これが「水のグローバリゼーション」の悪影響だ。水が豊富だと言われる日本の人々には、にわかに信じられないだろう。この問題について、徹底的に調べたドキュメント映画が『ブルー・ゴールド』だ。
 本作は『「水」戦争の世紀』(モード・バーロウ、トニー・クラーク共著、鈴木主税訳、集英社新書)を下敷きに、アメリカで製作された映画だ。原作者のバーロウやクラークの他、インドの物理学者・環境活動家であるヴァンダナ・シヴァや、ボリビアの工場労働者で「コチャバンバ水紛争」の指導者オスカー・オリベラなど、さまざまな学者・活動家が登場して、水資源をめぐる地政学とパワー・ゲームについて語っている。
 「ブルー・ゴールド(青い金)」とは水のこと。水が金と同じ富の象徴であることを示している。登場人物の1人は、「時代はブラック・ゴールド(黒い金=石油)から、ブルー・ゴールドに代わった」と語っている。つまり、20世紀は石油が最も重要な資源で、石油をめぐって戦争になったが、21世紀は水が最も重要な資源となる-というのだ。
 たとえば、プラスチック・ボトル入りのミネラル・ウォーター。水道が普及していない発展途上国に行った人なら分かると思うが、ミネラル・ウオーターはコカ・コーラよりも(場合によってはビールよりも)高い値段で売られている。また、発展途上国だけでなく先進国でも、水道事業が民営化されるケースが増えており、民営化された水道料金は例外なく値上がりする。さらに、砂漠化が進行する国々は、海水の淡水化プラントに膨大な資金を投入する。このように、水は有望な商品となっているのだ。
 このような水の「商品化」は、貧しい人々に悲劇をもたらす。アフリカのある国のスラムでは、水道が民営化され、高い料金を払わないと水が使えなくなったため、火事が起きても水を出して消火することができず、子どもが焼死したケースもある。また、ボリビアでは、他国籍企業が大統領に賄賂を贈って水道事業を請け負い、料金を値上げしたため、住民が怒って蜂起し、政府軍と衝突。犠牲者を出しながらも、ついに企業を追放した。
 日本も無関係ではない。ミネラル・ウォーターのはもちろんだが、「仮想水」(バーチャル・ウォーター)も、日本は大量に輸入している。つまり、大量の水を消費して生産された農産物を輸入することで、私たち日本人は外国から大量のバーチャル・ウォーターを奪っている。輸出用の作物を作るために、大量の地下水をくみ上げた発展途上国の土地は乾燥し、人々から水が奪われるのだ。
 地球は「水の惑星」と呼ばれているが、地球上の水のうち、利用可能な淡水は0.8%に過ぎない。だが、水質汚染は深刻だし、気候変動は砂漠化をもたらす。だからこそ、私たちは21世紀を生き延びるために、水のグローバリゼーションと「商品化」を止めなければならない。バーロウたちが言うように、「水へのアクセスは基本的人権」なのだ。


【 社会司牧センター柴田幸範 】
 
=====     Copyright ®1997-2007 Jesuit Social Center All Rights Reserved     =====