日本は2008年、15人に死刑を執行した。
執行された方々のご冥福をお祈りする。
●2月1日/3人
松原正彦 名古圭志(なごけいし) 持田孝
●4月10日/4人
中元勝義 中村正春 坂本正人 秋永香
●6月17日/3人
山崎義雄 陸田真志(むつだしんじ) 宮崎勤
●9月11日/3人
萬谷(まんたに)義幸 山本峰照(みねてる) 平野勇
●10月28日/2人
久間三千年(くまみちとし) 高塩正裕 |
|
2006年以前は、法務大臣の在任中(数ヶ月以下の場合を除いて)、少なくとも1回、1~2人の死刑執行が普通だった。だが、2005年10月31日~2006年9月25日に法務大臣をつとめていた杉浦正健(せいけん)氏は、自らの宗教的信念(仏教)に基づいて、在任中に死刑執行をしなかった。
ところが、後任の長勢甚遠(じんえん)法務大臣は、2006年12月25日に4人に死刑を執行した。異例の「クリスマス執行」の背景には、「死刑ゼロ」の年があってはいけないという、法務省の強い意向があったと言われている。長勢法相は翌2007年、4月に3人、8月に3人に死刑を執行し、「4ヶ月ごとに3~4人」の執行という流れをつくった。
2007年8月から約1年間、法務大臣をつとめた鳩山邦夫氏は、2007年12月に3人、2008年2月に3人、4月に4人、6月に3人と、「2ヶ月ごとに3~4人」の執行という慣例をつくって、死刑執行を加速した。この流れは、後任の保岡興治(おきはる)氏、森英介氏にも受け継がれ、9月に3人、10月に2人に死刑が執行されている。なお、鳩山氏の時代から、死刑執行時に法務大臣が記者会見して、執行者の名前と罪状を発表するようになった。これは、法務省がこれまで、死刑を執行した事実だけを発表し、氏名などを公表しなかったため、「秘密主義」と批判されてきたことに対応したと思われる。
なぜ、このように急激に死刑執行が増えているのか? 一つの背景は、死刑判決と死刑囚の急増だ。 |
【近年の死刑確定者と執行者数】(法務省)
 |
*2008年は6月17日現在。( )は拘置所内で死亡。 |
この表を見れば、2004年から死刑確定者が急増しているのが分かる。これは、1990年代後半に検察庁が、死刑の求刑を拡大する方針を打ち出した影響だと言われている(実際、この頃から二審での無期懲役の判決に、検察側が死刑を求めて上告するケースが増えている)。他方、死刑執行数は減っている。そのため確定死刑囚の数は増えつづけ、2007年にはついに100人を突破した。このことはマスコミでも大きく報道され、死刑大国・日本を印象づけることになった。今後は、地下鉄サリン事件の裁判で、死刑確定者がさらに増加する見通しだ。そこで法務省は、確定死刑囚の数を100人以内に留めるために、定期的な複数の死刑執行を定着させようとしている、と言われている。
さらに、2008年12月からの被害者裁判参加制度の導入、2009年5月からの裁判員制度導入なども、死刑の増加と関係している。これまで、犯罪被害者の支援がまったく不十分だった反動なのか、最近の世論は過剰とも思えるほど被害者に同情し、加害者を攻撃するようになっている(殺人犯の弁護士に、「そんな悪人を弁護する必要はない」と、弁護士の仕事を否定するような発言まで飛び交っている)。また、最近の裁判では、立て続けに死刑の基準を拡大する判決が出ているが、これも一般市民が裁判員として、主に死刑相当の重大犯罪で、有罪・無罪の判断だけでなく、量刑にまで参加するのを踏まえて、死刑判決の判断基準を下げておこうという意図が働いているのではないかとも思われる
|