「京浜便り(30)」 沖縄、辺野古・高江の反対運動と受難 【社会司牧通信147号】

阿部 慶太(フランシスコ会)

 沖縄の辺野古の米軍基地建設、高江のヘリパッド(ヘリコプターの離着陸帯)建設反対運動の現場を訪れる機会がありました。
 ご存じのように、辺野古沖はジュゴンのための藻場があり、数頭が目撃され、基地の建設計画はジュゴンと近海のすべての生態系に大きなダメージを与えるのと、豊かな漁場も台無しにされる可能性もあるため、既にWWF(世界自然保護基金)や自然保護団体などから建設計画見直しの要請が国に出されています。高江も動植物の絶滅種多数が生息するのと、集落で農業などに従事する人々の生活があり、同様の反対があります。
 そのため、現地には沖縄県内外から、自然保護団体・反戦団体・NGOなどの人たちが何かの動きがあるたびごとに駆けつけ、交代でテントでの座りこみを続けています。こうした反対運動は、地元の漁業や農業や地域で生きる人々によって行われ、それに賛同する人たちによって支えられています。
 現場へ行って感じたのは、座り込みに参加している人々の中に、子供を含めた家族単位の参加がみられる点と、農作業などのかたわら交代で座り込みやニュースの発信を行っている点で、生活に根ざした、というより生活を守るためにこうしたことを継続しているという印象を受けました。
 また、地元のすべての住民が一律に反対というのではなく、辺野古の場合、漁港脇にテントが陣取り、それを取材するための報道陣なども県内外から集まるなどに対して、港の機能が低下し、通常の作業が行えなくなった、という苦情を出す漁業関係者もいるという部分で、基地やヘリパッド建設には反対ではあるが、それぞれの事情や思いが交差する中で続けられている反対運動の苦悩が第三者にも十分伝わるものがありました。
 このうち高江からは、去年の年末に大きな動きがあったことがメールや画像で送られてきました。ヘリパッド建設に揺れる高江の住民側から話し合いの機会を設ける要求に対し、沖縄防衛局は要求を退けるばかりか、8歳の子供まで含めて座り込み禁止を求める仮処分申し立てを行ったという知らせでした。
 地元の沖縄タイムスの2008年12月27日朝刊によると「沖縄防衛局が東村高江区でヘリパッド移設に反対し座り込みをする住民に対し、通行妨害禁止の仮処分申し立てを行ったことで基地をめぐる住民と政府の関係が異常な展開に発展している」と書かれていました。この仮処分申し立ての中に8歳の子供も含まれていたわけです。
 この8歳の子どもへの仮処分申し立ては結果的に引き下げましたが、他の住民の仮処分申し立ては取り下げを行いませんでした。こうした動きは、今後も様々な方法で円滑に工事を実施したい防衛局側の意思の表れだとする見方もあります。
 こうしたことが報道されたことによって、沖縄防衛局が「子どもまで利用する反対住民」という構図を出そうとした意図や、小さな集落で生活する人達とその平穏な暮しを守れないという、国の建設計画の問題点が露見される結果になりました。
 こうしたことに対して、これは国策裁判である、とする住民側代理人の弁護士をはじめ、県内の弁護士らが弁護団へ参加する意向を示しました。国側が政治的圧力に加え法的手段まで用いて、基地反対の住民運動を弾圧する事態に対して、同じ手法が名護市辺野古などの運動にも及ぶ可能性から、法廷で基地建設の是非を改めて問うことになりました。
 2009年に入っても、こうした国側の動きと地元住民の間に緊迫した日が続く模様で、辺野古や高江に平穏な日々が戻りそうにありません。住民の受難はこれからも続くため、辺野古や・高江の動きに注目したいと思います。

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●記事:「国策裁判」集落に重圧/ヘリパッド移設 国が仮処分申請

●辺野古の様子は以下のページで
辺野古への基地建設を許さない実行委員会

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