「京浜便り(29)」 韓国の事業プロジェクトから感じたこと 【社会司牧通信146号】

阿部 慶太(フランシスコ会)

 私事ですが、委員会の仕事のため韓国を訪問しました。仕事のほかに各種施設見学の時間もあり、ハンセン病施設や特別養護老人ホームも見学しました。


 ご存知のように韓国のカトリック教会は、信徒数が500万人を超え、邦人と滞日・在日外国人信徒を合わせて約100万人という日本の教会に比べると何倍も大きな教会です。そのためカトリック教会の福祉や医療の事業も、日本よりも大規模なものが多数存在します。
 一例ですが、フランシスコ会の事業の中で、全羅南道の長城における田園福祉村は地方の小さな町における総合的な地域事業です。過疎化によって独居老人と介護を必要とする老人が年々増加するのに対し、カトリック修道会、行政、開発会社が共同で、老人ホーム、医療施設、デイケアセンター、スタッフの宿舎、老人専用住宅とアパート等々が完備されたトータルな福祉地域作りをするものです。こうした開発を含めた教会関係の事業は、日本の場合、なかなかできるものではないと感じました。
 このプロジェクトは、2002年に訪問した時に比べ、多くの施設がさらに充実し、毎年国内外から多くの福祉関係者が見学に訪れています。しかし、韓国のカトリック教会の施設プロジェクトでは上記の施設はまだ小規模な部類で、これよりさらに巨大な福祉大学を含めた福祉都市もあります。地域の福祉に対応する総合福祉地域という、大きなハード面の充実は、国民にクリスチャンが多く、行政にもクリスチャンの意向が反映され、プロジェクト開始と後援会発足が同時進行し、十分な資金が集まる韓国だから可能だと訪れるたびに感じます。
 そのため、こうした部分などを見ただけでも、日本の教会は圧倒されることはあっても提供できるものがないと感じていたのですが、今回は違う角度でこうしたプロジェクトの将来を考えてみました。それは、将来的に同じような水準でこうしたプロジェクトが維持できるのか、という点です。こうしたことを考えたのは韓国にも日本と共通する問題があるからです。それは少子化の問題です。儒教の影響が強くDINKS("Double Income No Kids"、夫婦共働きで子どもを持たないライフスタイル)などとんでもない、という風潮の残る韓国にも、この流れが来ているというのです。
 日本のカトリック教会も第二次大戦後は多くの宣教師たちが来日し、教会や施設を海外からの支援で設立し、信徒も年々増加しましたが、やがて信徒数も頭打ちになり、ある時期から司祭・修道者の召命も減少し、修道会や教区などで多くの事業が縮小、または閉鎖・撤退せざるをえなかったケースも多いからです。
 この一因に少子化の影響も少なからずあります。団塊の世代と次の世代を比較してみても、日本の経済を支えてきた世代や技術を担ってきた世代が第一線を退き、衰退した分野も珍しくはないからです。日本の教会も後継者の面で修道会だけで、または教会関係者だけで福祉や教育などの事業ができなくなってきていることを経験しているからです。
 しかし、こうした経験が、教会関係者以外の人々と共に次の時代に事業を継続していくノウハウや、新しい事業の在り方を生み出しているともいえます。日本の教会が韓国の教会に対して、次の時代に提供できるものがあるとすれば、それは、辛い時期をどのように耐えて次の時代につなげてゆくのか、という体験ではないのか、と韓国を訪問して感じました。
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