「報告」 国境なきイエズス会 【社会司牧通信142号】

 イエズス会にとって最も重要な歴史的イベント、総会が始まってから1ヶ月半が過ぎた。今回の総会は13年ぶりの開催だ。総会に先立って、ペーター・ハンス・コルベンバッハ師は、教皇の許可を受けて、総長職を辞任する意向を表明した。そして2008年1月8日、総会が招集された。総会はコルベンバッハ師の辞任を了承し、新総長に日本管区のアドルフォ・ニコラス師を選出した。その後、総会は通常通りの進行に戻った。つまり、イエズス会を世界の現状の中に位置づけて、刷新しようという仕事が始まった。

 日本管区のイエズス会員の多くが、同僚であったニコラス師と思い出を共有しており、彼の総長選出に喜びを抑えられないので、今回の総会は格別な意味を持っている。実際、彼を「総長」と呼ぶのがまだピンとこない仲間もけっこういる。

 今回の総会にあたって、会場のローマと東京が飛行機で12~14時間もかかることは、あまり意識されないようになった。毎朝仕事を始める頃には、イエズス会本部からファックスやEメールで情報が届いているので、私たちも総会に参加していると感じることができる。今回の総会は、イエズス会史上初めて、「国境なきイエズス会」が出現した総会だ。25年前の前々回の総会では、新総長選出の知らせは本部から電話やファックスで知らされたが、今やインターネットで瞬時に総長の顔を見ることができ、新総長が教皇に謁見するシーンがコンピュータ画面に映し出される。
 イエズス会のウェブやブログでは、さまざまな記事やコメント、祈りが日夜更新されていて、私たちはそれをさまざまな言葉で読むことができるが、残念ながらその中にアジアの言葉(日本語、韓国語、中国語など)はない。私たちは毎日、コンピュータ画面で、イエズス会のアイデンティティとミッション、他者との協力、移民と難民、統治、エコロジー、グローバル化といったテーマについて、決議文書の草案のニュースを見ることができる。私たちはウェブを見る度にいつも、イエズス会の刷新(renewal、ある人に言わせれば「再創造」re-creation)や教会へのよりよい奉仕、イエズス会員同士のより生き生きとしたコミュニケーションの必要性を感じることができる。貧しい人びとへの関心も高まっているが、「正義の促進」や「グローバル化と周辺化」といったテーマは、総会の場では、まだはっきりとした形で表れてきていない。もちろん、総会について評価を下すには、まだ早すぎるのだろう。

 最後に、スペインの大手新聞から東京に派遣されて、新総長ニコラス師の日本での生活と仕事を取材した特派員の言葉を紹介したい。「私たち西洋の人間が、カトリック教会や修道会に第一に望むことは、生きた証を示してくれることです」。私たちも全面的に賛成だ。
(2008.2.15)
【ニコラス新総長(左)とコルベンバッハ前総長(イエズス会本部のホームページから)】