「京浜便り(25)」 依存症への新たな取り組み 【社会司牧通信142号】

依存症への新たな取り組み
阿部 慶太(フランシスコ会)

 2007年4月に横浜市保土ヶ谷区で依存症のための新たなリハビリ・センターが誕生しました。「ヌジュミ」(沖縄の方言で「希望」の意味)という、女性のギャンブル依存症者のためのリハビリテーション・センターです。

 これまでは、男性のギャンブル依存症のための機関があり、そこで訓練し回復して社会復帰するケースがありました。でも、女性にもギャンブル依存症が多いのに、そうした機関がなかったため、「女性のギャンブル依存症のためのリハビリ・センターが欲しい」という声が強まり、2004年12月に「ヌジュミを考える会」が発足。2006年10月より川崎市の中原教会で定期的に集会を開催した後、横浜教区の支援や「市民社会チャレンジ基金」(地域政党「神奈川ネットワーク運動」が助成している基金)からの助成金などで、去年JR保土ヶ谷駅の近くに物件を借りてオープンしました。現在は、横浜教区の教会などを回り、ギャンブル依存症について、また、そのリハビリについて理解を深めてもらうほか、依存症の女性のケアに当たっています。


 「女性のギャンブル依存症」と聞いてもなじみがないと思いますが、意外に依存症の女性は多く、ギャンブル依存症は、米国精神医学会のでは1980年から病的賭博(Pathological gambling)としてあつかわれ、WHO(世界保健機構)作成の診断ガイドラインでも、障害の一つとして扱われています。

 日本の『レジャー白書』によると、およそ1900万人のパチンコ・パチスロ人口がおり、パチンコ業界の2006年の調査結果では、全体の2割に依存傾向があります。仮に、1900万人の2割の380万人がパチンコ依存症だとすると、競馬やそのほかの依存症も加えれば、ギャンブル依存症者全体は数字がもっと大きくなります。また、先の業界の調査ではパチンコ・ユーザーの男女比は2対1といわれており、女性のパチンコ依存症者は約130万人となります。
 また、専門病院の一つである赤城高原ホスピタルのホームページによると、アメリカでは問題賭博(Problem gambling)、病的賭博などは、全体としては男性が女性より多く、この傾向は若年層で顕著。中高年層では、男女比はほぼ同数。女性では30~40代の中年期に賭博をはじめ、急速に病的賭博にまで進行するグループが存在することが、注目されています。
 現在、東京都や神奈川といった首都圏には、ギャンブル依存症からの回復を目指す自助グループ「GA」(ギャンブラーズ・アノニマス=無名のギャンブル依存症者たち)も多くミーティング会場を持ち、活発に活動をしています。GAは1957年、米国カリフォルニア州ロス・アンジェルスで始まり、日本では1989(平成元)年東京で始まりました。現在、GAは日本全国で50ケ所以上のミーティング会場を開いています。


 「ヌジュミ」は、女性たちにこの病気の正しい知識を知ってもらうことと、ギャンブルのない社会生活を目指す過程において、再度ギャンブルに戻るという危険性を回避し、回復の軌道に乗るため、GAに確実に橋渡しをしてゆくことを目的とします。「ヌジュミ」では、様々な場所で依頼があれば、女性のギャンブル依存者の回復プロセスや女性特有の困難・苦労についての話をします。また、ギャンブル依存症の人たちが陥る多額の借金問題についても、弁護士、司法書土、行政などの関係機関とコンタクトをとりながら、医療面、精神面と法的な面でも改善に向けてサポートをします。そのために、現在も社会に理解と支援を呼びかけ、将来的にはNPO法人化を目指しています。


 「ヌジュミ」が開設されて約1年になりますが、この依存症についてもっと知ってもらうため、また苦しむ女性たちをケアするために、メンバーたちは今日も奔走しています。

<支援の情報>
240-0023
横浜市保土ヶ谷区岩井町122-12-101
ヌジュミ
電話045-743-5854
E-MAIL: nujyumi070211@family.nifty.jp

郵便振替:00270-4-61229
加入者名:ヌジュミ