【社会司牧通信 141号 2007/12/15】
阿部 慶太(フランシスコ会)
外務省の以下のページからお借りしました
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/pakistan/index.html

 私事ですが、海外宣教委員会の仕事でパキスタン・カラチに行ってきました。パキスタンはご存知のようにイスラム圏で95%以上を占めています。この国では、キリスト教徒はマイノリティーで社会的地位も低く、独自のコロニーと呼ばれる居住区を形成しています。

 このうちカトリックコロニーのような単一教派の密集地域以外は、スラム化した地域で治安や犯罪など問題も多い地域でした。カラチ市内では、コロニーあるいは修道院に学校や教会が隣接する複合施設として街の一角に存在するなど、キリスト者はまとまって生活していました。

 そのカラチ市内に今回訪問したハンデキャップセンター「ラハト・ガ」(現地のウルドウ語で安らぎの園の意味)があります。この施設は複合障害と呼ばれる心と身体のハンデキャップを抱えている小学生くらいから15歳までの子どもたちがトレーニングを受ける施設です。

 以前、この施設については紹介し、パキスタンの福祉制度についても少し紹介しましたが、現地に行って、この国が福祉制度ばかりでなく、教育にも多くの問題を抱えていることを感じました。

 日本ではハンデキャップを抱えた子どもたちは、ハンデキャップを持ちながら教育を受けることのできる学校や養護学校などに通うなどができるのですが、パキスタンではそうした学校は非常に少なく、ハンデキャップがある子どもばかりでなく、そうでない子どもたちも教育を受けることが困難な国です。

 理由は、国の教育制度が徹底しておらず、日本で義務教育を受ける年代の子どもの就学率が低いからです。その就学する年代の子どもたちが労働力となっており、貧困も就学を妨げる原因となっています。

 その中で、無料で衣食住が提供され、高度な教育を受けることができるのは、イスラム教ではタリバン(イスラム神学校)、キリスト教では小神学校または神学校です。
ニュースなどで報道されているタリバンはイスラムの神学生の集まりですが、その中でも過激派になっていくのは、かなり高学年の高度な教育や洗脳を受けた青年たちですが、こうしたものがなくならない原因が現地の就学状況などを見て納得できました。

 さて、このような状況なので、ハンデキャップを持つ子どもたちの教育などは支援無しにできない場所が多く、今回訪問した施設も同様でした。小規模な施設ですが、プログラムは、簡単な作業ができるようなゲームのようなものから、同じ種類のものを組み合わせるものまで様々で、こうしたプログラムは、ここの施設長ブラザー松本が、モンテッソーリのものを応用して試みており、教材の入手が難しいため、身近にあるものを利用して行っています。

 こうしたプログラムを見て「教育内容がよい」と口コミで、入園希望者は多いのですが、拡張のために職員の雇用や送迎のために車の購入など、施設の運営上の問題があるので、今の状態でプログラムを充実する以外にない状態です。現在必要以上に施設を拡張したり、大々的に寄付を募らない理由は、ブラザー松本によると「数や規模の問題よりも継続することと施設の内容が大切です。現地のスタッフが自分たちの手でできる範囲で運営できることが将来的には大切なことなので、今の施設を充実させて小さな奉仕を続けてゆきたいです」とのことでした。

 パキスタンを離れる前にブラザー松本は「阿部さん、この国の宣教はとにかく忍耐、忍耐です。子どもたちの世話にも忍耐が要りますし、スタッフにもここ(施設)が目指していることを理解してもらうのも忍耐なんです」といいました。この忍耐という言葉が耳に残りました。気が遠くなるような課題の多い国での奉仕と宣教を表す言葉だと思いました。

<支援窓口>
パキスタン「ラハト・ガ」支援の会
郵便振替口座00180-2-629559
〒106-0032東京都港区六本木4-2-39
聖ヨゼフ修道院内
Tel.03-3403-8099 内線208 / Fax.3401-3215
パキスタン・カラチ市内の知的・身体的ハンデキャップを持つ子どもの施設「ラハト・ガ」はパキスタンが福祉政策が充実していないのと、パキスタンの教会も貧しいため、日本からの支援によって運営が維持されているのが現状です。また、パキスタンは15歳以上を対象にした施設がほとんどないため、この施設では入所期間を延長して生活訓練などを行っています。