【社会司牧通信 137号 2007/4/15】 |
阿部 慶太(フランシスコ会) |
最近、日本の人権はどうなっていくのだろうというようなニュースが急増したような気がします。 たとえば、3月末に大阪市は大阪市西成区にある解放会館等で住民登録している労働者たちの住民票職権消除を強行しました。 解放会館を住所とする届出及び住民登録事務を、法的にも実務的にも違法ではないのに、強行した大阪市のやり方は、統一地方選挙告示前の消除ということもあり多くの批判の声が集まりました。 それは、住民票は、選挙権だけの問題ではなく、その消除は他の憲法上の権利を侵害し、不利益を労働者たちに及ぼすからです。住基法の総合的解釈により、住民としての権利や選挙権行使を可能なのに、突然、取扱い方針を変えて権利行使を不可能としてきた背景には職業上の理由または貧困のため住所を確保できない人への配慮のなさや差別があると考えられます。 また、最近マスコミで取り上げなくなった厚生労働大臣の「女性は子どもを産む機械」発言についても、さまざまな人権団体が、人間を機械扱いしたこと、人間を道具扱いしたことに対して、人間としての尊厳性を侵害する憲法13条(個人の尊厳)、男女平等の原則(憲法14条)に違反するものとして責任追及のための抗議活動をしているにもかかわらず、政府は擁護の姿勢を崩していません。 そのほかにも、教科書問題への抗議活動に対しても文部科学省は態度を変えませんし、国会で可決をすすめようとしている米軍再編関連法案、少年法改悪法案、共謀罪法案、改悪教育基本法関連3法案、派兵恒久法案などへの反対の動きがありますが、強行採決への方向は変わりそうにありません。 こうした、人権を脅かす動きに対して反対する草の根レベルの運動や市民運動は、マスコミにも取り上げられませんが、地域やグループそしてネット上のレベルでも絶え間なく続いています。 日本の人権の状況は決して安泰ではありませんが、そんな中、こうしたレベルの取り組みの必要性や可能性を探るシンポジウムが5月に開催されます。2006年に国連には新たな人権機構として、「人権理事会」が創設されました。その関係者が来日し、シンポジウムが開かれるのは、人権を踏みにじる動きがあってもそれに屈しない動きがあることも忘れてはならない、ということを私たちに示すしるしといえるでしょう。 |
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