【社会司牧通信 135号 2006/12/15】
京浜だより⑱ 地球規模の環境が危ない
阿部 慶太(フランシスコ会)
 春にこの紙面で、ブラジルのパンタナールの自然が危ないというニュースを紹介しましたが、ブラジルで宣教する小川満師(フランシスコ会)から最近届いたニュースを読んで、地球規模の環境がさらに危ないと感じました。
 ご存知の方も多いと思いますが、アマゾンの密林は地球上においてもっとも森林が豊富でいろんな生物の多様性に富んだ地域で、地球上の哺乳類の10%、植物の15%がそこに生息していますが、世界でもっとも環境破壊にさらされている地域でもあります。毎年18,000kmもの森林がこのアマゾンから消滅しているからです。
 過去25年間に、日本全土の面積377,000kmとオランダの国土面積42,912kmの二つの国の面積を足したに等しい面積の森林が、この地上から消えていきました。近年、ブラジル政府はアマゾンにおける違法な森林伐採と違法な木材取引に対処する重要な法案を採択し、同時に森林破壊にアマゾンがさらされることになりました。それは、この地方に欧米の巨額の農業融資資金が投入され、アマゾンが2004年までに約120万haの密林が大豆畑に変えられたからです。
 ブラジル全土から見ると5%にすぎませんが、すでに森林が伐採されて耕地になっている地域もあるのに、カーギルや他の大企業のための新しい舗装道路や大豆の貯蔵庫、港湾設備への融資は、すでに森林伐採された土地を買うよりも手つかずの密林を買って森林伐採するほうがより経済的であるようにしています。これがアマゾンを大豆畑にするのに拍車をかけています。さらに密林の伐採にとどまることなく、そこに住む先住民の土地と、先祖からの土地を守って生活している住民たちの土地を大豆畑にするために、住民たちを追い出しているのです。
 また、ブラジルが生産する大豆を扱う企業について、オランダに本部をおくグリ-ンピース・インターナショナルが行っていた調査は、欧米の多国籍企業が、アマゾンにおいて実行している森林伐採、土地の不法取得(ニセの土地登記証をたてに住民を追い出す)、地元の住民たちを過酷な労働を課しているなどの、調査結果を公表しています。この調査は欧米の三つの多国籍企業、ADM(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社)、ブンゲ、カーギルが、農産物貿易の分野で森林破壊に大きな責任があることを示しました。大豆生産に関するブラジルの総支出の少なく見積もっても60%の費用をこれらの企業が出しているのと、2004年にはブラジル人の大農場主への農業設備投資として、ブンゲだけでも10億ドル相当の融資をし、広大な土地の開発を促進しているからです。
 2年間続いたこの調査は、アマゾンの大豆や密林の破壊に留まらず、アマゾン産の大豆に絡まるすべての事項に及びました。北米のこれら大企業本部の密室で開かれた重役会議で決定されたことから始まり、ヨーロッパのスーパー・マーケットにある商品やレストラン、軽食堂の皿に盛られた大豆にまで及びました。それらの大豆は地球の大部分を占める熱帯雨林を破壊し生産されたからです。
 さらにグリーンピースは大豆のために密林がさらに100万ha消失することを報告しています。以上の数字は森林破壊の直接的な事実によるものであり、化学肥料とか農薬の影響、大豆生産から派生する間接的な影響による破壊は計り知れないほど大きなものになります。
 さて、以上は日本から見ると地球の反対側で起こっていることですが、今年は国内で温暖化の影響が多く見られたことからも、地球規模の環境の危うさが遠い世界のことではなく私たちにも迫ってくるのを感じます。
 気象庁は、2006年10月発表の「気候系監視報告」で、世界の月平均地上気温平年差(陸域における地表付近の気温と海面水温の2つを平均したもの)は+0.38℃(速報値)で、1891年の統計開始以来2番目に高い値でした。統計開始以来最も暖かかった10月は2003年です。世界の10月の平均地上気温は、長期的には100年あたり0.59℃の割合で上昇しています。