【社会司牧通信 135号 2006/12/15】
J R Sアジア太平洋年次会議

 2006年10月16~19日、タイの首都バンコクから車で3時間離れたフアヒンで、イエズス会難民サービス(JRS)アジア太平洋が、年次会議を開催し、今後3年間の活動の方向性について話し合った。会議には、JRSアジア太平洋が活動している国々から、52人の信徒ワーカーと数人のイエズス会員が参加した。参加者のなかでも特に、2年前の津波と最近のジャワ島地震で、大きな被害と多数の犠牲者を出した、インドネシアからの参加者が多いのが目立った。
 今回の会議の焦点は、予備的な会議とグループ討論の後に、戦略的な計画を立てることだった。具体的には、今後3年間に実施すべき「戦略計画文書」の作成をめざした。この戦略計画の焦点は、「難民に奉仕し、寄り添い、代弁する」というJRSの使命に忠実であるということだった。参加者に求められたのは、アジア太平洋地域の複雑な政治状況や、そこで行われているプログラムの多様さに対処するために、JRSアジア太平洋はどのような立場を取るべきかを考察することだった。特にたびたび強調されたのは、強制的に移住させられた人々のそばにいるとの必要性と、JRSアジア太平洋が常に下からの声に応えて、プログラムを採択することだ。難民に寄り添い、その声に耳を傾けることが、JRSの活動の重要な一要素なのだ。


各国のJRSの活動が、以下の通り報告された。
 【タイ】 バンコクにあるJRS地域事務所は、この地区のすべてのJRS事務所が行う、難民や避難民に関するあらゆる活動の本部だ。同時にJRSタイでは、多数に及ぶ山岳民族(その多くはビルマの人々だ)などのような、国のない人々や非正規の移民に焦点を絞って、特別なチームが活動している。また、バンコクにある入管の強制収容所での活動にも深く関わっている。

 【インドネシア】 インドネシアのJRSは、暴力が人間の発展にとって最大の障害であるような紛争のさなかで、深く貢献している。JRSは特に、マラッカとアチェの被災地で、際だった活動を続けている。2004年の津波被害を受けて、アチェだけでも65人ほどのJRSスタッフが、生活道路の復旧や住宅全壊地域での住宅再建、カウンセリングや紛争和解のプログラムなど行っている。ジョグジャカルタでは、25人のJRSスタッフからなるチームが、1年ほど前の大地震で破壊された地域で、さまざまな再建プログラムを行っている。

 【マレーシア】 マレーシアには、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に登録された難民が約5万人いる。そのうち2万人はインドネシアのアチェから来た人々で、その他はビルマのさまざまな少数民族だ。JRSマレーシアの事務所は小さいが、スタッフは、難民がマレーシアで安全な避難所を見つけられるよう闘っている。実際のところ、難民に与えられている選択肢は、自発的帰国、避難国での定住、第三国での再定住の三つだ。また、JRSはマレーシアで、非正規の移民の支援に携わり、収容所を訪問して、医療支援を行っている。


 【カンボジア】 カンボジアでの難民は、都市(さまざまな国からの難民)と山岳部(ベトナムからの先住民族)の二つに分かれる。政府は、この二つのグループに対して、異なる政策を行っている。カンボジアの法律には、難民や避難民の権利を保護する法律はない。JRSはカンボジア国内の難民を保護するために働き、難民の再定住や本国帰還を支援しているほか、地雷廃絶国際キャンペーンでも非常に積極的に活動している。


 【オーストラリア】 オーストラリアは難民を積極的に受け入れてきた歴史を持っており、JRSは国内の難民を世話し、その権利を代弁する特別な事務所を持っている。また、活発にロビイング活動し、JRSアジア太平洋のさまざまなプログラムに貴重な財政的貢献を行っている。


 【シンガポール・日本】 JRSはそれほど活発でない。シンガポールのイエズス会が司牧するある教会では、「JRSボランティア」という名前で信徒のグループが結成され、近くの教会や学校にJRSの宣伝をして資金を集め、JRSアジア太平洋のさまざまなプログラムを支援している。日本についていえば、東京のイエズス会社会司牧センターが、JRSの連絡先として、地雷廃絶日本キャンペーンと協力したり、バンコクの入管収容者プログラムや、アチェの津波被災地復興プロジェクトなどに協力している。また、日本国内の非正規移民労働者の権利擁護のためにも活動している。

安藤勇(イエズス会社会司牧センター、東京)