去る9月、ローマの世界CLC(クリスチャン・ライフ・コミュニティ)の副教会助言者、アルベルト・ブリトー神父(イエズス会)が、日本CLC全国大会に出席するため初来日しました(P.5の岩田鐵夫さんの記事を参照)。東京に滞在中のブリトー師に、社会司牧センターの柴田幸範がインタビューしました(2006年9月22日、本郷レジデンス、インタビューは日本語とスペイン語で行われた)。
<柴田(以下S)>
 最初に、イグナチオの霊性と社会使徒職の関係について教えてください。イエズス会の前総長アルペ神父は、イエズス会学校の同窓会世界連盟での講演で、「他人のために生きる人間」になるためには、イグナチオの霊性が役立つとおっしゃっています。CLCは社会的意識を促進するために、どのような活動をなさっていますか?

<ブリトー(以下B)>
 何かを願ったら、それを実現するために行動することほど、霊的なことはありません。何かを願うだけにとどまるのは、「霊性主義的」かもしれませんが、それだけでは不十分です。霊の動きは行動へと向かうのです。聖書でも、お告げを受けた聖母マリアや、弟子たち、教会の働きに、そうした例を見出すことができます。
 具体的に言えば、私はローマのCLC本部で働いてきた2年の間に、たびたびそうした実例を見てきました。私はふだん、仕事時間の半分を費やして、世界中のCLCコミュニティを訪ねています。たとえば、ケニヤのCLCを紹介しましょう。彼らはもちろん、神との個人的関係を生きていますが、同時にナイロビ市内を見回って、人々のニーズを把握する活動も行っています。ケニヤのCLCには20年以上の歴史がありますが、7年前からエイズ孤児に焦点を合わせた活動をはじめました。彼らは実際に、中学校を設立し、これまでに850人が卒業しています。これは、祈りと省察を通して現実の世界に開かれた、アウトリーチング(現場に出かける)コミュニティです。シナイ山のモーゼのようです。主はモーゼに現れ、こう呼びかけられました。「行って、私の民を救いなさい。私の民の嘆きを、もうこれ以上、がまんできない」。もし、私たちが「霊性主義的な」(霊性ばかりの)グループではなく、「霊的な」グループであろうとするなら、扉と窓を開けなければいけません。実際、ケニヤ政府のような外部の人から見れば、そうした人々にはインパクトがあります。それは、彼らがともに祈り、計画を立て、行動へと進んでいるからです。彼らの生き方には一貫性があるから、人々は彼らを信頼するのです。
 他にもたくさんの実例がありますが、ここではエクアドルの首都、キトの例を挙げるにとどめておきましょう。キトは標高2600メートルの町で、時期によっては非常に寒いときもあります。


そこには、同じように祈りと省察を通して、人々のより普遍的な緊急のニーズを識別しようと努めている、小さなCLCコミュニティがあります。彼らはすでに12年前から、ホームレスの人々を助けるために家を建てる取り組みを行っています。彼らはホームレスやボランティアとともに、これまでに200軒以上の家を建ててきました。4人のフルタイムのスタッフがいるセンターも設立されました。
 たとえばヨーロッパでも、移民の問題がとてもホットな問題となっていて、たくさんのCLCコミュニティが、法律問題や保健医療の問題など、さまざまなレベルで深く関わっています。ホームレスやエイズ孤児、移民といった国内レベルの問題の他にも、より国際的なレベルの重要な問題があります。CLCは国連に登録されたNGOです。実際、ジュネーブと国連本部(ニューヨーク)に二つのCLCグループがあります。そのことは実際に、インパクトがあります。というのは、CLCは各国内のレベルでも、きれいな飲み水や保健衛生、女性などの社会問題に積極的に取り組んでいるからです。
  S  
 英神父(イエズス会、日本CLCの助言者)から聞いたのですが、CLCはラテン・アメリカのフェ・イ・アレグリア(Fe y Alegria/信仰と喜び:貧しい人々のための無料学校プログラム)にかかわっているそうですね。

  B  
 そうです。これはとても興味深いことです。たとえば、チリはラテン・アメリカで唯一、フェ・イ・アレグリアのない国でした。首都のサンティアゴには900以上の小さな(8~10人)CLCコミュニティがあり、それらは高校生、大学生、大人の3つの段階に分かれています。その中に学校の先生が集まったコミュニティがあります。彼らは活動の焦点を、サンティアゴ市内のストリート・チルドレンに合わせました。
 彼らは他の国のフェ・イ・アレグリアの情報を集めたり、直接訪ねたりして、活動を研究したり、リーダーと連絡を取ったりしました。それから、活動をはじめる前に、イエズス会の管区長と会って、この問題について話し合いました。やはりCLCのメンバーであった二組の夫婦と、チリの前政権の経済相であった人が、管区長と会って、チリの法律に適合し、公的資金を獲得する見込みのある、非常に良くできた教育プログラムを提案しました。管区長は、フェ・イ・アレグリアが行ってきたすばらしい教育プログラムを認めていましたが、このプログラムに充てるイエズス会員の余裕はないことを、率直に打ち明けました。CLCメンバーはこう答えました。「問題ありません。私たちは準備ができています」。多分、管区長はびっくりして言葉を失ったことでしょう。こうして、チリでフェ・イ・アレグリアがはじまりました。今では、サンティアゴ周辺で九つの教育センターがあり、3,000人人以上が教育を受けています。

  S  
 CLCの霊性と社会使徒職の関係に戻りますが、日本では今、特に両者の協力はありません。今年の7月に東京の社会司牧センターは25周年を迎えましたが、記念講演を行ったジャン・イヴ・カルヴェ神父は、イエズス会本部では、社会正義事務局とイグナチオ霊性センターの間で共同作業が始まっているとおっしゃいました。そのことは、CLCの活動にどんな影響がありますか?

  B  
 はい、私たちも共同作業をはじめようとしています。CLCの事務局長も、社会使徒職と霊性センターの共同対話に参加して、具体的なプログラムを模索しています。私も事務局長の補佐役として、討論に参加しています。JRS(イエズス会難民サーヴィス)もネットワークに参加しています。
 そのことで思い出すのは、ヨーロッパで行われている、難民や移民労働者についての共同の取り組みです。私が一番よく知っているのは、ポルトガルの例です。ポルトガルではJRSがたいへん有名で、2005年12月には、「ポルトガルで影響力のある10人」の一人に、JRSのポルトガル責任者が選ばれました。彼女は3人のこの母親です。
 実際、JRSはポルトガルで移民のために働く最良の団体です。ポルトガルのCLCはこの分野で活動していませんが、JRSがすでに深く関わっているので、CLCはJRSの活動に乗って、たくさんのボランティアを送り込んでいます。
 JRS、社会使徒職、イグナチオ的霊性、そしてCLC。これはたしかに、一つの重要な問題です。私たちはイエズス会員はみな、同じ関心を持ち、同じ分野で働いています。お互いに相手の仕事に関心を示し、一つの体であるという意識を持つことは、大切なことです。使徒職の垣根を越えた協力は、信徒とイエズス会員との関係と並んで、来る第35総会の最重要課題の一つとなるでしょう。


  S  
 最後の質問ですが、日本では心理的な問題、「心」の問題が重大な問題となっています。ヨーロッパではいかがですか? CLCはこれについて何かなさっていますか?

  B  
 データはないのですが、それはどこでも共通の問題です。私なりの答えとしては、人であれコミュニティであれ、外に開かれていればいるほど、心理的な問題は減ると思います。信頼と開放性は、人間関係と社会環境によい影響を及ぼします。これはもちろん、イエズス会をはじめ、あらゆるコミュニティについて言えることです。人々と仕事に献身すること、言い換えれば、人間関係の質が、とても重要です。他方で、私たちは、自分が想像によって創り出す世界と、現実の世界とがかけ離れてしまわないように、現実の状況に対する感覚を持ち続ける必要があります。
 私の体験から、一つのことを申し上げたいと思います。おかげさまで私は、コインブラという町で、ヨーロッパでもっとも古い公立大学の近くで、20年間暮らしてきました。1975年当時は、ヨーロッパでは政治的にも社会的にもとても難しい時期で、学生たちと私たちとの間はとても緊張していました。というのも、学生たちは既存の体制全体にひどく失望していて、新しい体制を探していたからです。私は学生たちから大いにチャレンジされ、彼らとの関係は私のうちに根本的な姿勢の変化をもたらしました。私はしばしば彼らの思想や闘い方、理想について考察しました…。こうしたことは、私のうちに、現実の状況に立ち向かう新たな態度を生み出しました。それ以来、私には何も恐れることがなくなったのです。ありがとうございました。