中間報告 現代日本の心の悩みについての取り組み
タスク・チーム
 イエズス会日本管区の社会使徒職委員会は、2004年10月に、管区の全会員を対象に、社会問題についてのアンケートを行いました。回答を集計した結果、イエズス会日本管区の社会使徒職の優先課題として、①現代日本の心の悩み、②日本における移民労働者、③地球規模の周辺化-の三つの課題に社会使徒職委員会として重点的に取り組んでいくことにし、それぞれの課題についてタスク・チームを立ち上げることにしました。今回は、そのなかで「現代日本の心の悩み」(以下「心の悩み」)タスク・チームのこれまでの経過をご報告します。
チームの構成とこれまでの経過
  「心の悩み」チームの世話役である英隆一郎神父(イエズス会)と柴田幸範(イエズス会社会司牧センター)は、昨年5月に最初の会合を持ちました。まず、チームのメンバーについて話し合い、学校や教会などの現場でこの問題に取り組む方々と協力していくため、松井紀直神父(カトリック麹町教会)、中田久美子さん(上智大学カトリックセンター)、岩田鐵夫さん(麹町教会信徒)に参加していただくことになりました。また、8月に行った「心の悩み」追加アンケートに回答いただいたイエズス会員の中から、精神障がい者施設「浦河べてるの家」について詳しい情報をくださった吉羽弘明神学生にも、参加していただくことになりました。
 チームは昨年12月までに5回の会合を開き、活動方針を話し合ってきました。そこで問題になったのは、「心の悩み」の特殊性でした。「心の悩み」はこれまで、社会使徒職の仕事ではなく、教会や学校の仕事と考えられてきました。実際、一昨年のアンケートでも、「心の悩み」こそ最大の優先課題であるという声は、教会や学校現場から多く寄せられました。ではなぜ、あえて社会使徒職委員会が「心の悩み」に取り組むのでしょうか?
 それは、「心の悩み」が個人だけの問題ではなく、競争社会や弱者切り捨て、差別、経済至上主義など、社会全体の制度や価値観のゆがみも、大きく影響しているからです。たしかに、「心の悩み」に苦しんでいる個々の方々と接する機会は、社会使徒職には多くないかもしれません。けれども、そうした悩みの背景にある社会の問題について分析することや、それらの問題に取り組んでいる市民グループを紹介することは、社会使徒職の得意分野なのです。
 このような視点から、タスク・チームのメンバーそれぞれが、個々の「心の悩み」の問題に取り組んでいるグループに関わって、それらの問題の制度的背景について学び、社会司牧通信などを通じて情報発信していくという方針が決まりました。
 タスク・チームのメンバーはそれぞれ、カルト宗教からの脱会、犯罪者の更生や犯罪被害者の支援、精神・身体障がい者の自立といった分野で、市民グループの方にお話をうかがったり、一緒に活動したりしています。また、今後、うつ病、自殺者遺族のケアなどの分野にも関わろうと考えています。こうした関わりや関心を通して見えてきた一つの方向性は、冒頭でも書いた「セルフヘルプ(自助)・グループ」という取り組みです。
 セルフヘルプ・グループは、単に困っている者同士が助け合うだけでなく、自分たちの生きづらさを話し合い、分析を深めて、その解決のために社会に対してメッセージを発していく力も持っています。こうしたセルフヘルプ・グループの方法論は、まさに、第三世界のスラムにおける住民運動や、日本における野宿者の当事者運動など、社会使徒職がこれまでフォローしてきた、オルターナティヴな社会づくりをめざす市民運動に通じるものです。ここに、私たちは社会使徒職と「心の悩み」の接点を見出します。
 タスク・チームは今後、次のような取り組みを行っていきたいと思います。
セルフヘルプ・グループの紹介(社会司牧通信)
個々の問題についての入門的なブックレット作成
「心の悩み」に対するイグナチオ的霊性からのアプローチの探究
前述のように教会や学校、その他の現場で取り組んでいる皆様との協力がなければ、実際的な取り組みは不可能です。皆様からのご意見・ご感想・ご質問・情報提供を心よりお待ちしています。
(イエズス会社会司牧センター/柴田幸範)