阿部 慶太(フランシスコ会)
 今年は、大きなものでは戦後60年、阪神淡路大震災から10年、という節目の年でした。今年もあと40日あまりという11月中旬、アメリカのブッシュ大統領と日本の小泉首相の会談が行われ、この会談の焦点についてのニュース解説が、テレビから流れていました。
 自衛隊のイラク派遣の延長や米軍基地の問題など、これから注目される憲法九条の「改正」にも関係ある内容が話し合われたようで、ニュースをみながら、世界で唯一の被爆国である日本が戦争から学んだ教訓が生かされているのか、と感じてしまいました。
 また、11月11日、麹町教会メルキゼデクの会から、「10月29日、辺野古(へのこ)への米軍基地建設に反対し、沖縄への基地の押し付けに抗議する平和行脚の最中、沖縄の嘉手納(かでな)基地第2ゲート前で、パトーカーの進行を妨害したとして日本山妙法寺の木津博允(きづひろみつ)上人が沖縄警察署員に不当逮捕・拘留されており、ほぼ断食を貫いているので、拘留延長への抗議、不起訴・即時釈放の要請の声をあげほしい、というメールを受け、沖縄の警察に抗議の電話を入れた際に、電話がつながらないほどアクセスがあったようで、まもなく「木津上人釈放」の一報が入りました。
 ここ数週間の出来事ですが、日本という国が平和とはかけ離れた方向に行くのではないか、と感じるニュースを聞くたびに、最後の砦ともいえる憲法九条の「改正」を前にして、日本の宗教者たちがこの憲法を守ろうと行動を起こしているのは、日本に平和を求める人々がいるのだ、という一つのしるしといえるでしょう。それぞれの宗教の教義・精神に従い、憲法九条を守るという一点で宗教の違いを超えて、「宗教者九条の和」として、新聞広告やなどで憲法九条を守ることを呼びかけています。
 こうした動きに対して、北朝鮮がミサイルで攻めてきた時に有事法制が必要ではないかとかいう声もありますが、防衛庁が昨年の『防衛白書』で、日本が他の国から攻められる可能性は少ない、と書いている部分がある中での憲法改正は、やはり疑問を感じる人も多いのではないかと思います。
 日本と北朝鮮との関係だけでは北朝鮮がミサイルで攻めてくるとは考えられず、アメリカの軍事圧力に対して、追い込まれて在日米軍基地や日本の大都市をねらってテポドンを打ち込む可能性のほうが強いといわれています。だから、憲法九条を変えて、アメリカ軍と日本の自衛隊が一緒に戦争の準備をすることが、かえって北朝鮮の軍事行動を引き起こす要因になると、さまざまな集会で検証されています。
憲法九条を変えないことこそが、北東アジアの安定と平和にとって大事なことといえるわけです。
 また、日本国憲法第九条は、1999年のハーグ世界市民平和会議、2000年の国連NGO会議などでも評価されている、世界でも類のない平和憲法です。それだけに、憲法「改正」をめぐる動きやそれを阻止しようという動き、特に宗教者の動きに戦後60年の年の終わりに注目が集まります。



【宗教者九条の和】
2004年6月、改憲論議の高まりに危機感を感じた井上ひさし、大江健三郎氏ら9人の著名人が「九条の会」を結成し、平和憲法の理念を世界に輝かせようという市民運動をはじめました。その趣旨を宗教界にも浸透させ、平和を守る宗教者として「九条の会」を支えていこうと、2005年4月に発足したのが、「宗教者九条の和」です。呼びかけ人には各宗教から60名以上が名を連ねており、カトリックからも10司教区の司教と、白柳枢機卿、シスター弘田しずえが参加しています(9月現在)。この組織の目的はあくまで、「九条の会」に対する賛同を宗教界に広めようというものであり、別組織をつくろうというものではありません。
 「宗教者九条の和」は賛同者を広く求めています。下記にお問い合わせ下さい。
●宗教者九条の和
135-8585東京都江東区潮見2-10-10
日本カトリック会館 正義と平和協議会気付
電話03-5632-4490 FAX.03-5632-4523
e-mail: info@shukyosha9jonowa.org
http://www.shukyosha9jonowa.org/
●九条の会
電話03-3221-5075 FAX03-3221-5076
e-mail: mail@9jounokai.jp
http://www.9-jo.jp/