阿部 慶太(フランシスコ会)
 仕事の関係で教区報などに目を通すことがあり、病気や高齢のためにやむをえず自国での生活に入る宣教師のニュースを目にすることがありますが、もう少し積極的な意味で自国に帰る宣教師もいます。日本や他の国で宣教して、その国の教会が自立しているのをある程度確信してから、宣教師として働いた経験を母国で生かしてみよう、という意向で宣教に行く「リバース・ミッション」のためです。
 こうしたケースは年齢的にも働き盛りで、母国の教区や地域で司祭が不足している、母国の社会問題などに関わってみたい、ということから、こうした再宣教を考えるようです。
 2年ほど前、再宣教のために母国に帰っていた宣教師が、夏の休暇で日本に立ち寄りました。母国に帰ってからやたらと忙しくなった、ということでした。確かに、彼の母国はキリスト教国ですし、信徒の数も日本とは比較にならないくらい多く、その分仕事も増えるわけですから、忙しくなるのもうなずけます。
 こうした形の宣教方法が少しずつ出てきたということは、世界的に先進国の召命が少なくなったことや宣教師の意識も変わってきている、ということもいえます。つまり、第二バチカン公会議以前の宣教師達は宣教地で土になるべく派遣された面が強かったと思います。今でも40数年休暇でも母国に帰らない高齢の宣教師がいます。しかし、現在50代後半から60代の宣教師でそうした意識の宣教師は減少しています。もう少し体力があったなら、もう少し恵まれない国に行って働いてみたい、と希望する宣教師も多く意識も変化しています。
 さて、ここまでは日本に宣教にやってきた司祭、修道者の例ですが、違った意味でのリバース・ミッションは信徒の中に見ることが出来ます。
 日本には日本カトリック信徒宣教者会(JLMM)というレイ・ミッショナリーの組織があります。派遣希望者は研修生として毎年4月から11月初旬まで約7ヶ月日本で研修を受け、派遣後現地にて現地語の勉強を半年、あわせて約1年の研修を受けます。こうしたすべての研修が終了後、2年から3年の契約で海外の様々な国で生活と仕事を通じた宣教をします。
 帰国後は、NGOを立ち上げたり、海外の支援団体で奉仕したり、自分の経験を生かし信徒宣教者の養成に関わったりします。これは立派なリバース・ミッションといえるでしょう。
 そのため、信徒が一定期間、宣教者として派遣されるということは、帰国後違う役割での宣教活動を行う可能性や社会への広がりがあるといえます。何故なら、司祭、修道者の場合、小教区や修道会の仕事に戻るケースが多く、社会で様々な形で宣教するというケースのほうが少ないからです。
 しかし、将来は司祭、修道者もリバース・ミッションのため日本に帰ることがあるとしても、こうした信徒宣教者の前例がある以上、その働きも変わる可能性もあるのではないか、と考えます。理由は、信徒宣教者から司祭になり、日本で働いた後、海外宣教へ出かける司祭が最近出てきたからです。
 現在の日本の教会において、リバース・ミッションの課題は、こうした信徒宣教者の経験を持つ人や、もう少し広げてみると海外でのボランティア活動の経験者などの意見や体験をどのように生かすのか、ということにかかっているように思います。また、それは日本での福音宣教を考える意味でも大事な課題の一つといえるでしょう。
 日本カトリック信徒宣教者会(Japan Lay Missionary Movement/JLMM)はタイ、カンボジア、フィリピン、ミクロネシア、東ティモールに信徒宣教者を派遣しています。信徒宣教者はそれぞれの地で、自らの信仰とタレントをもって現地の人々とともに、少数民族支援や衛生教育、識字教育などに取り組んでいます。
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