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【スロベニア/拡大するEUを考える「社会週間」】
 EU(ヨーロッパ連合)に新たに10ヶ国が加盟してから数ヶ月たった8月、3つのイエズス会ネットワーク(JRS:イエズス会難民サービス、MOSJ:イエズス会労働者ミッション、EUROJESS:ヨーロッパ・イエズス会社会科学者ネットワーク)がスロベニアのセルジェで、初の合同会議を開催した。
 3日間の会議のテーマは移民であった。人口移動に対するイエズス会の姿勢と関わり、特にネットワーク間の協力や、移民送出国・受け入れ国双方のイエズス会管区同士の協力について話し合われた。会議では、いつくかの対応策が確認された。たとえば、移民の根本原因にたちかえる必要性。異なる文化を尊重しつつ平和を実現する努力。世論と政策決定者を、この問題に対して敏感にさせること。不適切で危険な仕事にたずさわる労働者を探すのに、地下経済に頼っているくせに、表面的には「適法」を装っている経済の偽善を糾弾すること。誰もが知っている仕事に就いた移民労働者が「違法」と摘発されたら、理解に苦しむという意見を表明することなどだ。ほかにも、社会使徒職や管区同士の協力や共同行動について、実際的なチャンスも見出された。JRSやMOSJ、EUROJESSは、現場だけでなく、多くの社会センターで行われている調査研究においても、協力を強化することを決めた。
 この会議で検討された社会問題は、私たち自身の霊性や神学にも関わってくる。私たちは移民の問題に関して、どうすれば基本的「人権」というアプローチを乗りこえることができるだろう? 私たちは、「選ばれた民」という神学を超えて、すべての人を尊重する神学を表していくために、どうすればよいだろう?
Fr. Lucien Descoffres, SJ [HL40902]

【日本/バブルが崩壊するとき】
 日本の工業化は1964年の東京オリンピックから全国に広がった。このような巨大イベントに際してしばしば起きることだが、スポーツ競技施設や選手村の建設にともなって、労働需要が急増した。その後、大阪万博(1970年)によって、給料のよい新しい仕事が出てくると、職を求める大勢の人が集まって、大阪の労働人口はあっという間に増えた。その後、石油ショックをはさんで、日本経済は1980年代にバブルと呼ばれる好景気を迎えたが、このバブル1990年代に幕を閉じた。このバブル破たんは、すでに高齢化を迎えた日雇い労働者の町(そして野宿者の町)、大阪・釜ヶ崎に深刻な影響を及ぼした。バブル到来とともに釜ヶ崎に林立した労働者向けの安宿は、最盛期にはいつも満員だったのが、今では宿代を大幅値下げしても、ガラガラだ。
 日本のイエズス会員は、この貧しい地域で積極的に活動している。「旅路の里」は、新自由主義経済の原則に忠実にしたがう日雇い労働市場の、悲惨な状況に関心を持つ若者や学生のために、宿泊や案内を引き受けている。
道を歩いている人のほとんどは、高齢の男性や、専門的な技能を持たない若い男性だ。彼らに話しかけてみれば、「自分たちは物乞いではない。あの古くて大きな職業安定所で、日雇い仕事を探しているのだ」と、熱心に教えてくれる。朝の6時になると数少ない求人が紹介され、運がいい人は、小さなトラックやワゴンに乗って現場に行く。労働者の多くは、運さえよければ、月に5~10日は働くことができる。高山神父は、古い和風建築の旅路の里に毎日、通ってくる。少人数だが経験豊かなスタッフに助けられながら、若者たちが日雇い労働者の厳しい現状に触れて、考える手助けをしている。
Fr. Fernando Franco, SJ [HL40903]
(筆者のフランコ師はローマでイエズス会の社会使徒職の責任者を務めており、この8月日本管区を訪問した際に、大阪の旅路の里を訪問した)

【スペイン/経験にもとづいた福音宣教】
 聖フランシスコ・サビエル生誕500年を祝って2006年に開催される国際会議の準備として、イエズス会と関係深いアルボアンというスペインのNGOが、イエズス会系の大学であるデウスト大学(ビルバオ)とコミリャス大学(マドリッド)の神学部と共同で、セミナーを開催した。このセミナーは、イグナチオのメッセージの最も基本的な要素の一つである「アド・ジェンテス」のミッション(非キリスト者への宣教)が、こんにち直面する課題について考察し、話し合うものだ。このセミナーはスペインのハビエルで、7月11~15日に開かれ、出身も文化的背景も異なる16人の参加者が集まった。この種のセミナーにはつきものの発題がなされた一方で、体験の分かち合いや相互理解を促すための時間もとられた。こうしたプロセスの中で、いくつかの予想もしなかった、興味ある論点が浮かんできた。たとえば、いのちと人間の尊厳に奉仕するミッションとか、「下位の」人々が強力なエリートたちと対決しなければならない紛争状況におけるミッションの役割、といったものだ。
 参加者たちは、福音宣教を定義し、理解するにあたって、直接的な体験がどれほど豊かで大切であるかということ、また、一から十まで理論的なアプローチなどというものは、複雑で困難な神学的難問にのりあげて遭難してしまうようなものだ、ということを再確認した。こうした理解に立って、2006年のイベントを、福音宣教されてきた人々の体験や証言に焦点をしぼったものとすることが、決定された。同じ理由で、そのイベントを、会議というよりも出会いの場とすることも決められた。
Fr. Javier Arellano, SJ [HL40905]

以上は、イエズス会社会使徒職の電子メールニュース、HEADLINES: News From the Jesuit Social Apostolate, 2004/09, http://www.sjweb.info/sjs
【覇権か生存か/国際社会フォーラム、キト】
 7月25~30日、エクアドルのキトで、52カ国11,000人の参加者が集まって、429のイベントからなる国際フォーラムが開かれた。
 主催者によれば、「このフォーラムは、世界社会フォーラム(世界規模で開かれる市民運動のフォーラム)の準備の一環であり、新自由主義的政策に反対する市民運動の多様さを表すためのものだ。この多様さを保ちつつ、市民運動は一つ屋根の下に共同で、人間性あふれるさまざまな代替的諸提案を行うのだ」。周知のように、この種の集まりで最近開かれたものといえば、2001年1月末にブラジルのポルト・アレグレで開催されたものがある。これは、毎年、先進国の政財界首脳がスイスのダボスに集まって開かれる、世界経済フォーラム(WEF)に反対して開催されるものだ。この問題にくわしいイマニュエル・ウォーラースタインによれば、「ダボス-ポルト・アレグレの対立は、新自由主義的グローバリゼーションの功罪をめぐっての対立ではない。なぜならそれは、グローバリゼーションが両グループの参加者によって、どのように描かれているかの違いに過ぎないからだ。また、両者の対立は、世界システムとしての資本主義をめぐるものでもない。なぜなら、世界システムとしての資本主義は構造的な危機に瀕しており、20~50年後には消滅するだろうからだ。この両者の対立は、歴史的システムの一つとしての資本主義経済に代わるものは何か、という問題をめぐる対立と理解されなければならない。つまり、我々は、資本主義の核心的な特徴-階層的で不平等、対立的な性質-を受け継いだ他のシステムに移行すべきなのか、それとも、より民主的で平等な、新たな世界システムの方向に進むべきか、という対立なのだ」
 今回のフォーラムは、際だった特徴をもつ、大いなる出会いの場となった。その特徴とは、世界中で超大国の覇権主義に抵抗しているあらゆるグループが、一つに結集しなければならないという必要性を強く訴えたことだ。バラバラになったままでは共通の大義を実現することは困難であり、論点をしぼって、最小限の合意を取り付けることが好ましい、と考えられたのだ。先住民が「多様性の中の一致」に関する提案は、熱狂的に受け入れられた。
 キトでのさまざまなイベントで取り上げられた問題の本質は、エクアドルの先住民族リーダー、ブランカ・チャンコソの叫びに集約されている。彼は、ラテンアメリカの貧しい人々を代表して、こう述べる。「今、的にかけられているのは、我々のいのちそのものだ! 我々が本当に民族として抵抗してきたとすれば、まさに今、的にかけられているのは我々のいのちそのものであり、我々が人間としてもってきた集団的・個人的権利なのだ。政府は、我々が残してきた少ない資源を始末しようとしており、多国籍企業の側にたって行動している。国際機関や自由貿易協定も、水や石油、鉱物資源、木材などの天然資源や、我々の先祖伝来の知識をますます搾取する方向へと、圧力を強めている。ILO条約第169号や各国の憲法で保障されている先住民族との事前協議の原則は、守られてこなかった。国際協定と国内法は一致していないし、一致させようという試みもなかった。国連そのものさえも問題にされたのだ。こうしたわけで、我々は各国政府に対して、多様性、生物学的多様性や多国籍性を擁護する公式政策をうちだすよう要求する」。今、本当に問題なのは「覇権か、生存か」という選択なのだ。
Eduardo Valencia
教皇庁立カトリック大学、キト、エクアドル
IJND(International Jesuit Network for Development) News - September 2004,http://www.jesuit.ie/ijnd/IJNDNEWS.html

編集/安藤勇(イエズス会社会司牧センター)