ビセンテ・ボネット(上智大学教授、「カンボジアの友と連帯する会」代表)

 昨年の暮れに「かんぼれん」(カンボジアの友と連帯する会)が発足しました。その経緯と、会の最初の実りについて報告したいと思います。
 3年前からスタディ・ツアーでカンボジアを訪れる機会に恵まれ、障がい者のための技術訓練校「鳩センター」、子どもも含むHIVや結核患者の施設、多くの人が働くゴミの山、障がいのある子どもたちの家、地雷がまだ残っている地域などを訪れました。
 その中で、カンボジア北西部、タイ国境近くにあるシソポンを、昨年2月のツアーで初めて訪問しました。そこで、人々の貧困状態、住む場所や子どもたちへの教育の必要性、そのための支援活動状況やアフターケアの細かい記録などを見て、ツアー参加者全員が感銘を受けました。その時、私たちは、シソポン周辺の人々、彼らと共に歩もうとしている支援者たちと連帯し、物質的な援助のみでなく、教育・保健活動、農村開発など、「人間を中心とした」活動を支援する強いインスピレーションを感じました。そして「カンボジアの友と連帯する会」、通称「かんぼれん」を立ち上げることにしたのです。
 「かんぼれん」は、連帯を実感できるために協力会員が少しでも自分の時間をかけて、カンボジアの友の状況を知るようにし、また少しでも自らの消費を減らして、その分を協力支援に当てるように願っています。
 今年も2月、カンボジアを訪れ、イエズス会サービスがシソポンで行っている活動をゆっくりと見たいと思って、そこで2泊しました。
 まず本部で活動全体とそれぞれの計画についてのきめ細かい記録を、グレッグ神父から紹介されました。次に出掛けて、識字学級、小学校、その先生たちのためのモデルクラスと、その後の研究会、また移動図書館による教育補助のプロジェクトを見学しました。
 また、イエズス会サービスの援助によって造られた家を観ました。そして、責任者のソク・エンさんとグレッグ神父とよく話し合った結果、彼らからの要望に応えて、今年のかんぼれんからの連帯援助は、この『家造り』のプロジェクトに当てることにしました。
 具体的に今年は、20軒の家-大きい(?)のを10軒、小さいのを10軒-を建てる計画です。大きい家と言っても、広さは4×5mで、6人以上の家族用で、材料や人件費は約400ドル(約44,000円)かかります。小さい方は3×4mで、5人以下の家族用で、費用は350ドル(約38,500円)です。
 その場合、どういう家族が優先されるのかという基準は、次のようです。①家族の大黒柱が障がい者、あるいは夫を亡くした障がい者であること、②貧しいこと、③行政から土地が与えられていること(土地は行政から分配されていて、買うものではないから)、④その家族か友人かが、仕事や材料などで何らかの貢献をすること。
<写真/kawachi>
(写真説明)家を手に入れた母親。薪拾いで両足を失った。

 しかし残念ながら、かんぼれんの財政的な『力』がまだそれ程ないので、必要経費のすべてを背負うことができなくて、5,000ドル(ちょうど3分の2)だけを渡してきました。
 このように、かんぼれんの連帯の実り、その初穂として、人間にとっていのちを支えるために必要な「住む場」を十数家族が得られることは、非常に大きな喜びです。その喜びをもとに来年の連帯の実りが、さらに豊富なものになることを祈りながら期待しています。
※かんぼれん連絡先:ckawachi@m78.com(川地)