(2003/11/29)

 「死刑を止めよう」宗教者ネットワークの主催で、「共にいのちを考える」第2回死刑廃止セミナーが、11月29日(土)に上智大学で開催されました。会場には宗教者や市民運動関係者など、約60名が集まり、講師の話に熱心に聞き入っていました。
 最初に、共催者である上智大学社会正義研究所の理辺良保行(リベラ・ホアン)所長が挨拶したあと、宗教者ネットワークの結成を呼びかけたイタリアのNGO、聖エジディオ共同体のアルベルト・クァトルッチ事務局長が、ネットワークの結成に至るいきさつや、今後の期待を述べました。
 続いて3名の講演者が話しました。最初は1947年に福岡市で起こった殺人事件の、元死刑囚である石井健治郎さんです。強盗殺人の罪に問われた石井さんは、「けんかによる正当防衛」を主張しましたが認められず、56年に死刑が確定。その後、75年に恩赦で無期懲役に減刑され、89年に仮釈放されました。また、無実を主張し、石井さんも「事件とは無関係」と主張していた「共犯」の西武雄さんは、石井さんが減刑された日に、死刑を執行されました。86歳の人生の半分を刑務所で過ごした石井さんは、過酷な獄中体験や、「無実」の西さんを処刑した司法の不当性を、熊本弁で雄弁に訴えました。
 次は、3年前の佐賀バスハイジャック事件の被害者、山口由美子さんです。ご自身も犯人の少年に顔などを切りつけられ、隣にいた恩師の塚本先生は犯人に刺されて殺されるというつらい体験をされた山口さん。それでも、ご自身の娘さんの不登校という体験を通して、子どもたちのつらさ、生きにくさが分かったという山口さんは、「犯人の少年を恨んでいない。被害者も加害者も、一つの事件を通して同じ船に乗り合わせてしまった。その事件とどう向き合い、どう抱えていくのかを考えたい」と、静かな中にも力強く語りました。
 最後にNCC(日本キリスト教協議会)総幹事の山本俊正さんが、日本のプロテスタント諸教会の死刑への取り組みや、アジアの死刑の状況について報告しました。
 ビデオ上映をはさんで、後半は宗教者ネットワーク参加者からのアピール、講演者への質疑応答と続き、最後に聖エジディオ共同体のクァトルッチ事務局長と生命山シュバイツァー寺の古川龍樹さんが、集まりを総括しました。なかでもクァトルッチさんは、この集会のあと関西に向かって宗教者と懇談会を持つこと。来年1月末~2月に死刑に反対するイタリアの国会議員を日本に連れてきて、日本の市民団体や死刑に反対する国会議員、小泉首相らと面会させること。再来年には米国の運動家、シスター・ヘレン・プレジャンが来日することなど、精力的な取り組みについて紹介し、第3回のセミナーを、5月末に東京で開こうと呼びかけました。
 欧米の宗教者にくらべてまだまだ動きの鈍い、日本の宗教者による死刑反対運動ですが、今回のセミナーのような一つの一つの出会いを大切にしながら、働いていきたいと思います。
(イエズス会社会司牧センター/柴田)