柴田幸範(イエズス会社会司牧センター)

イエズス会社会司牧センターは数年前から、死刑廃止運動に関わってきました。この夏、「死刑を止めよう」宗教者ネットワークが発足し、当センターも賛同人として参加することになりました。このネットワーク発足の経過と趣旨、今後の計画についてご報告します。
 去る5月23日東京で、イタリアのカトリック系NGO聖エジディオ共同体が主催して、死刑廃止セミナーが開催されました(『社会司牧通信』114号参照)。それを契機に、日本の宗教者が死刑廃止のネットワークを創ろうという機運が高まり、9月はじめに正式にネットワーク設立の呼びかけが行われました。
 今のところ、当センターの他にカトリック正義と平和協議会、聖イグナチオ教会メルキゼデクの会、日本キリスト教協議会、生命山シュバイツァー寺、真宗大谷派、大本、死刑廃止キリスト者連絡会などから有志が参加してネットワークを運営し、アムネスティ・インターナショナル日本が事務局をつとめています。少なくとも年に1回、シンポジウムなどの集会を行う他、日常的な情報交換・共同行動を行うことが予定されています。

宗教者と死刑
 このネットワークの趣旨は、「死刑の執行を止め、死刑についての議論を行い、命について考える機会をできるだけ多く設けよう」ということです。ネットワークを呼びかけた賛同人・賛同団体は、基本的に死刑に反対し、死刑廃止を願っています。それは、すでに何度も本紙で訴えたように、加害者の命をもって被害者の命や人権を償うことはできないこと、死刑は加害者の回心の可能性を奪ってしまうこと、どんな理由であれ人の命を奪うことは生命の尊厳を侵す行為であること、などの理由によります。
 ただ、犯罪被害者・ご遺族の方々の感情や、治安悪化による世論の変化を考慮して、まず死刑の執行を停止して、死刑に関して改めて国民的議論を喚起するところからスタートしよう、というのが私たちのネットワークの基本姿勢です。被害者感情に関して言えば、「目には目を、死には死を」という復讐の論理で死刑を行うことによって、かえって被害者・ご遺族の心の傷を、社会全体で丁寧に癒すことがおろそかになっているのでは、と考えます。
また、犯罪を抑止するために死刑を乱発することは、かえって社会全体の心理を殺伐とした暴力的なものとするのでは、と考えます。本当に死刑以外に解決法はないのか。今こそ、じっくりと考え直す最後のチャンスだと思います。

今後に向けて
 残念ながら、国会の解散・総選挙で見通しは不透明になりましたが、死刑廃止議員連盟は「死刑執行停止法案」を提出する方向で努力しています。これを受けて、私たちのネットワークは、死刑執行の停止を求める署名キャンペーンを行うことを決めました(署名用紙を同封いたしましたので、ご協力ください。コピーして配布頂けると助かります)。また、11月29日には上智大学で、冤罪被害者の元死刑囚、犯罪被害者などの方を招いて、公開学習会を開催する予定です。この他にも11月末から12月初めにかけて、さまざまな市民団体が主催する死刑廃止集会が行われます。
 さらに、来年には、昨年も来日した米国のシスター、ヘレン・プレジャンを招いて、改めて死刑廃止キャンペーンを行おうかというアイディアも出されています。もちろん、聖エジディオ共同体など海外の宗教者・市民運動とも連携しつつ、国内の宗教界に積極的に「死刑執行停止」を呼びかけていく努力を続けていきたいと考えています。
 11月29日の公開学習会が終わりましたら、そのご報告も兼ねて、ニュースレターを発行したいと考えています。また、電子メールによる情報発信を目指して、メーリングリストも整備しているところです。当センターのホームページでも、これから随時、情報をお伝えしていきたいと思います。

 ネットワークには、団体だけでなく、個人でもご参加頂けます。詳しくは、当センターの柴田までお問い合わせください。