柴田幸範(イエズス会社会司牧センター) |
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第2回は子どもたちの身体機能の低下です(「体温異常という危険信号」2月号)。岡山県のある保育園が、元気がない園児か増えた原因を探ろうと体温を調べたところ、全体の3割の体温に異常があったそうです。一方、文部科学省の調査では、子どもたちの体格は向上する一方、体力は90年代から低下しています。特に深刻なのが背筋力です。将来の育児や親の介護に必要な背筋力どころか、自分の体重を支えることさえできないほど、背筋力が低下している子どももいるのです。こうした身体機能低下の原因は①睡眠・食事・排便などの生活習慣の乱れ、②運動不足、③外に出ないため、自律神経の機能が低下している-などです。これらは結局、親自身の生活の乱れが原因です。 三つ目は、糖尿病の増加です(「しのびよる生活習慣病」3月号)。従来、糖尿病や高血圧、高コレステロールなどの生活習慣病は、大人の病気とされてきましたが、最近、子どもにも急激に増加しています。原因は食生活の偏りと運動不足です。それは結局、親が子どもの生活に十分気を配らず、好きなものだけ食べさせたり、テレビやテレビゲームを好き放題に与えるからです。ここでもまた、親が子どもの世話に手をかけなくなったツケがまわっていると言えます。 |
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そして、いよいよ子どもたちの心の闇に迫ります。まずは、増加する「学級崩壊」です(「学級崩壊の芽、こころの闇」4月号)。生徒たちが授業に参加しようとせず勝手に行動するために、クラスが機能しなくなる、いわゆる「学級崩壊」は90年代に激増しました。従来は、思春期が早まって小学校高学年から始まるようになったため、教師が対応できないケースがほとんどでしたが、最近では小学校1年生に「学級未形成」ともいうべき現象が起こっています。幼児期に、多様な人間関係の中で他者との関係性を学ぶ機会を持たなかった子どもたちが、小学校に入ってパニックを起こしているのだというのです。子どもたちがすぐに「キレる」現象の根は、まさにこにあります。これは、小学校だけの責任ではなく、むしろ、父親不在家庭、少子化や核家族化、地域共同体の崩壊など、社会全体の変化が根底にあるのです。 |
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アメリカでは"TV-Turnoff Network"という市民グループが生まれており、日本でもノーテレビ運動が始まっています。テレビなしで過ごす時間は、家族のきずなを強めるようです。
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私も子どもが持ち帰った「心のノート」を読んだのですが、まず感じたのは、「ワークブックという形式は心の問題になじむのだろうか」という疑問でした。同じ疑問が、全国PTA問題研究会の会報『PTA研究』327号(02年10月)と334号(03年6月)にも出ています。 「理想を持って生きよう」「自分で考え判断しよう」「自然のすばらしさに感動しよう」「きまりを守って気持ちよく暮らそう」「郷土と伝統文化を守ろう」…当たり前のテーマが並びます。問題は、ワークノートといいながら、求められる「唯一の正解」が見えてくることです。これで、「自分で考え判断する」心が育つのでしょうか? もう一つの疑問は、子どもを取りまく問題を、心の持ち方の問題にしてしまっていることです。子どもの問題には、社会的な側面もあります。一人ひとりの心が変われば社会が変わる-というのも一面の真理でしよう。しかし、社会構造のゆがみにまったく触れずに、心だけ変えようというのであれば、それは、子どもに対する新たな心理的抑圧になってしまうのではないでしょうか? ある学生がこんな記事を書いていました(『PTA研究』327号)。小学3年生の時、「誰かがやさしいことをすると花さき山に花が咲く」という絵本を、朝会で紹介した。1週間後、先生が壁に「花さき山」と書かれた紙を貼り、帰りの会で生徒に同級生の「親切な行為」を報告させて、報告された数だけ「花」を咲かせることにした。やがて、「花」目当ての親切競争が始まり、ついには、「今日はあなたの親切を言ってあげるから、明日は私のことを言ってね」と「取引き」するようになった-というのです。「道徳教育」の危険性を示している話です。 |
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たとえば、「地域子育てネット シーズ」。先輩お母さん、子育て中のお母さん、大学生と、世代を超えた女性の交流を支援して、「地域で子育て」を実践しようとしています。あるいは「枚方/子育て教育メーリングリスト」。インターネットを通して、保護者と教師、障害児や不登校児の親、教育専門家、「子どもの人権」オンブズパーソンなど、さまざまの人が子育てについて情報を交換し、ワイワイおしゃべりしています。 さらに、大阪市中央区には社団法人子ども情報研究センターがあります。同センターは子育て支援の一環として、大阪府の委託を受けて、「子ども虐待防止アドバイザー」(愛称は「子ども家庭サポーター」)養成事業を行っています。サポーター希望者は、児童虐待や障害児教育、家庭内暴力(DV)などについて学び、終了後は地域で、子ども虐待防止(CAP)活動をはじめ、育て交流の場を作ったり、行政との橋渡しをします。 |
20年以上前、枚方市は「子育てするなら、あの町で」といわれたほど、子育て環境の整っていた町だったそうです。でも、この特集を読むと、今もきっとそうなのだろうなと思わされます。 私たちは問題が起こるとすぐに、即効薬を求めようとします。1冊の本、1つの法律、一人の指導者、そして、文字通り一つの薬…。でも、子どもは膨大な時間と体験を経て育ちます。そんなに簡単に、大人の思うとおりに変えられるのでしょうか? 変えていいのでしょうか? 「子育てとは、親の自分育ちだ」。『むすぶ』の対談に出てきたこの言葉を、自分自身の生活の中で考えていきたいと思います。 |
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