阿部 慶太(フランシスコ会)
 
 在日韓国人の日本における地方参政権の問題については、以前から様々な議論がなされてきましたが、本国国政選挙権に関しては意外と知られていませんでした。
 この本国国政選挙権を求める運動の拠点となっているのは、大阪市生野区内に事務局がある「在外有権者ハンギョレネットワーク・関西」(以下ハンギョレネットワーク、代表・朴英美氏)です。
 このグループが取り組んでいるのは、在外韓国民が、憲法で保障された国政に関わる選挙権を、国民の平等権に従って行えるように韓国政府に法整備を求める、というものです。
 それは以下のような理由からです。在日韓国人は韓国籍を持ちながら、国民としての権利は持たされずに放置された状態にありました。しかし、韓国籍を堅持し、韓国人として生きようとする人びとにとっては、韓国人としてのアイデンティティーを失わないためにも、本国国政選挙権は大切な権利なのです。
 また、現在こうした権利は世界的にも認められているケースが多く、最近ではインドネシアや日本でも1998年に在外国民にこの権利が認められています。OECD加盟国の中で韓国だけがこの法整備が行われていないのです。
 在外韓国人は納税や兵役の義務を本国で果たしていないという意見については、税金は所得のあった場所で納めるため(二国間条約による二重課税の防止)、また兵役は、在外永住者は海外での居住という特殊事情から免除されていますから、国民の基本権が制限される理由にはなりません。
 こうした点から本国国政選挙権を求めていこうという動きに対し、日本における地方参政権に支障が出ると心配する声もあります。この点についても、外国住民に地方選挙権を認めている北欧諸国では、本国国政選挙権が制限されていませんし、北欧に住む日本人の場合も支障なく、本国と居住国の両方の選挙に参加できますから、権利の点からこの問題を考える必要があります。外国住民の日本における地方参政権のポイントは、外国人と地方権力に関わる問題を、日本政府がどう判断するかということです。
本国への帰属意識とか国籍意識が地方参政権の障害となるなら、帰化する以外に方法はなく、同化につながる形式論理に過ぎないものになる、という点から、外国住民が本国国政選挙権を認められることが、地方参政権を与えないための口実になってはならないのです。
 また、居住地での生活が大切なので、本国国政選挙権は必要ないのでは、という考えもあります。確かに居住地での生活は誰にとっても一番身近で大事なものですが、だからといって韓国籍を持ち、韓国人として外国で生活している人々を、従来のように曖昧な、祖国を持たない外国人のような扱いをしていてよいのか、という問題は残ります。さらに、韓国人として生活する以上、韓国政府との関係や保護は有形無形に関わるはずで、発言権のある韓国民としての人格を得ることにより、韓国政府の在日韓国人に対する関心を深めるでしょう。また、本国の大統領選挙に投票することで、次の時代を担う在日韓国人の若い世代にとっても、祖国は身近なものになるはずで、彼らのアイデンティティーや本国とのつながりを強めてゆくためにも、この権利を獲得する必要性を、ハンギョレネットワークは訴えています。
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 ハンギョレネットワークでは本国国政選挙権を求める署名を受け付けています。賛同の方は「祖国参政権回復運動の主旨に賛同します」とお書きのうえ、氏名・住所・電話番号を明記しお送りください。日本人でもかまいません。

署名集約先は ↓↓↓
●在外有権者ハンギョレネットワーク・関西
FAX/06-6758-1873
郵送 /〒544-0012
             大阪市生野区巽西4-7-24
                                         李様方
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