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阿部 慶太(フランシスコ会) |
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春は入学・新学期の季節ですが、大阪市生野区で例年見ることができた民族学校へのチマチョゴリでの通学風景が、この春は復活するかどうか微妙な状況です。 その理由として去年から報道されてきた朝鮮民主主義人民共和国による拉致問題や核開発問題、韓国の大統領就任式前に起きたミサイル発射訓練のニュース等ここ半年途切れることなく続いてきた関連の報道が、区内というよりも全国の在日コリアンの生活に影響を与えています。 確かにイラクへの侵攻・空爆のニュースでかすんでしまった共和国関係の報道ですが、亡命者のニュースやイラク侵攻を支持する政府の理由の一つとしての共和国のテロ活動からの防衛のために同盟が必要であることが、ニュース解説などで報道され、マスコミが取り上げる頻度はまだ高いといえます。 去年拉致問題の報道が連日のようになされる中、民族学校の生徒への嫌がらせや暴力などの事件が相次いで起こり、在日コリアン社会に衝撃が広まりました。 その対策として、チマチョゴリでの登校・下校の自粛などを実施するに至りました。学校ばかりでなく、民族教育の現場や民族文化や芸能の教室など在日コリアン社会にもこうした事件は緊張と脅威を与えました。 そのため、在日コリアンの日本最大の居住地域である大阪市生野区も朝夕見られるチマチョゴリでの登下校風景ばかりでなく、ハングルでの挨拶や会話さえも去年の報道以来、耳にする機会が大幅に減少した印象を受けます。
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実際、過去の日本で関東大震災後に起きた虐殺など在日コリアンの間で忘れることのできない歴史がありますから、拉致問題以降の嫌がらせなどに落ち着いていられないのは無理はありません。 こうした状況の中で、去年の暮れに行われた生野人権集会など、こうした問題を考え改善していこう、という動きも出てきました。その中で注目する点は、在日コリアンに対する嫌がらせ等に対し、やめるよう訴えるだけでなく「暴力の連鎖を断とう」というという点です。 以前は、反差別や対日本政府、といった対立構造で考えられていたこうした問題に対し、方法論を変える必要が被害者の立場にある人々の側から提起された点は、真の平和的解決の新たな動きといえるでしょう。 しかし、そうした動きに水をさす形で、3月6日文部科学省が朝鮮学校・韓国学校などの民族学校に大学の入学資格を認めない、という方針を打ちだし、在日社会にとってさらに大きなショックを与えました。 新学期が始まろうとしている中で、まだチマチョゴリでの通学風景が復活しそうな気配がありません。民族学校に通う学生には進学への希望も遠くなりました。在日コリアン社会にとって、春の気配はまだ遠いといえます。
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