阿部 慶太(フランシスコ会)
 街がクリスマスの余韻と師走のあわただしさの混じる中、西成区の三角公園の越冬集会が行われ越冬がスタートして1ケ月ほど経過しました。
 大阪は、年が明けてから日中の最低が氷点下を記録するなど寒い日が続き,さらにインフルエンザが猛威を振るうなど、厳しい状況の中で越冬が続いています。
 今回の越冬では、「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法」(以下特別措置法)が施行され、大阪市も自立支援センターを大阪城公園に開設するなど、野宿生活を強いられた人々の状況がどう改善されるかが注目されましたが、現状は去年とさほど変わっていません。
 その理由は、特別措置法による具体的な施策の実施は2004年からであり、大阪市もこれに準じた姿勢を取っているためです。野宿生活をしている人々は、公園などからの不当な追い出しからは法的に保護されることになったものの、問題の就業機会の確保については、大阪府・市は大幅な財政難を理由に、公的就労制度はもちろん緊急対策のための補正予算も組む気配がありません。ようやく、特別清掃枠が1日218名から、20名増えただけです。しかし、特別清掃事業に登録する人、1人あたり月3回しか回ってきません。まさに,焼け石に水のような対応です。
 自立支援センターにしても、開設から今まで400人程の入居者がありましたが、その内日雇い労働などで約4割の就労があったものの、正式な就労はわずか14名と1割にも満たない状況で、野宿生活に逆戻りする人が多いのが現状です。
 こうした情報は野宿生活をする仲間同士の間に口コミで広まり、自立支援センター周辺で野宿生活を続ける人は相変わらず多く、長居公園のシェルター周辺でも同様です。夕方、支援センター周辺で野宿生活を続ける人は「センター行っても、結局変わらんかったら、またはじめからやり直しや。何ケ月か時間の無駄や。仕事も無いし」と集めてきた空き缶をまとめながら、こうした施設ができても野宿生活を続ける理由を述べました。長居公園周辺でも「去年と何が変わったゆうねん。市や建設業者の仕事ができただけやないか」と野宿生活を続ける何人もの人が、「何も変わらない」と口にしていました。公園で野宿生活を続ける人は、ブルーシートや廃材で住居を造り、長く野宿生活を続けており、現状が変わらない以上、簡単に今の生活をやめて時間の浪費はしない、自分のことは自分で守る、という覚悟さえ感じます。しかし、朝晩の寒さは容赦なく続きます。
 一方、街の中での野宿生活の様子は、商店街のシャッターが降りてからダンボールなどを組み合わせて眠りに就く人の姿が、釜ケ崎周辺の商店街や天王寺,難波周辺に相変わらず多く見られます。いつも、商店街で野宿するある人は「やっぱり今の時期がしんどいわ。それにしても寒いな」とダンボールを重ね毛布を敷き、さらにダンボールで覆いをして中にもぐりこみました。路面を触るとひんやりしたのを通り越して氷のような感触です。実際,この日は路面が凍結しました。眠りに就く人がいれば、その寒空の中ダンボールや空き缶を集める人もいます。このように何も変わっていない様子を見ると、公的な対策が行き届いていないことを痛感します。
 こうした対策の不備に対して闘争も継続中です。厳しい現状をなんとか改善してもらおうと「自立支援事業」と「半就労・半保護」を求めての泊まりこみの交渉に、連日300人以上が参加しています。野宿生活を強いられている人々、その中から闘争に参加する人々にとっても厳しい越冬は、桜前線のニュースが流れる3月まで続きます。


<ひきつづき支援をお願いします>
●毛布・衣類・食料等の緊急支援
  〒557-0004
  大阪市西成区萩の茶屋1-9-27
  特別清掃事務所
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●越冬支援カンパ
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  釜ケ崎反失業連絡会
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