阿部 慶太(フランシスコ会)

 木枯らしが吹く季節になると、全国的に百貨店や商店街などでクリスマス商戦が始まります。大阪の繁華街の一つ天王寺の各店舗にもクリスマスイルミネーションが点灯し、年末の雰囲気が漂っています。
 しかし、そのにぎやかな光に包まれた天王寺から天王寺動物園沿いに数百メートル進むにつれ、テント生活をする人々、野宿生活を余儀なくされている人々が目につきます。さらに進んで、新今宮の駅から歩いてすぐのところに日本最大の日雇労働者の街、釜ヶ崎があります。
 クリスマス商戦が始まる季節、それは釜ヶ崎にとっては厳しい越冬が近付くことを意味しています。また、今回の越冬は国会で「野宿生活者支援のための法案」が成立見込みの中、行われる越冬です。
 さて、越冬前の釜ヶ崎の様子は、私がこの地域の施設に勤務していた5年前に比べ若干の変化が見られました。まず、日中の炊き出しに並ぶ人々の列の距離が延びていることから、炊き出しの量が増加しているなと感じました。また、過去に見られた路上での酒盛りは確実に減っていました。また、廃品回収で僅かなお金(500円弱)を手にした人が、施設(ふるさとの家)の1階にある自炊室でインスタントラーメンを炊くため列を作っていました。
 やはり、仕事がないのです。収入がないため炊き出しに並び、また、僅かな小銭を稼いでもやっとインスタントラーメンを施設の一室で炊くしかない状態です。実際、5年前に2万数千人の日雇労働者に対して、約千件だった仕事は年々減少しています。
 仕事がないため、ドヤ(簡易宿泊所)やアパ-トに住むことができない人々は、再就職も生活保護も受けることができず、野宿生活に追い込まれますが、こうした人々は1999年10月の厚生省の調査では全国で約2万人と言われていましたが、実際はこの倍以上の数と言われています。大阪でも市の調査したものとNGOによる調査では数値に差が有ります。
 先に書きましたように、野宿者支援の法案が近いうちに成立の見込みですが、法案が成立し、具体的な対策が実施される前に、野宿生活を余儀なくされている人々は、まずこの冬を乗り切らなくてはなりません。
 越冬を迎える人々の様子も様々です。大阪市には、野宿者の就労を支援する「自立支援センター」が東住吉区の長居公園他に3ヶ所ありますが、それらの施設に入所し越冬を迎えられる人は、1万人以上の野宿生活者の中でもわずか280人にすぎません。センターの定員がこの数だからです。さらに、この中で再就職できる人は僅かなのです。
 このセンターに入所を拒みテント生活を続ける人々もいます。入所しても、再就職先が見つからず、また野宿生活に戻る人も多く、落ち着いた地を離れるとその場所が撤去されて、再び野宿生活に戻ることも大変だからです。ある高齢のテント生活者は「(センターに)入っても、この年で働く所がないんや。だから廃品集めてやっと生活してるんやから何処行けゆうねん」と、苦しくてもこの生活を続けるほかないやるせなさをこう表していました。
 また、夜の周辺の様子では、日毎に寒くなるため、商店街や倉庫などの軒先に重ねたダンボールにビニールシートを敷き、毛布をかけた上に大きめの箱型のダンボールで中を被った重装備で眠りにつく人、競争相手の少ない時間に廃品回収を行う人々の姿が見られました。
 さて、野宿生活者のケアに関わる支援者側は、越冬と同時に、野宿生活者支援法案の中にある『公園や道路の管理者が必要な措置を取る』という規定により、野宿生活者が排除されないかどうか心配しています。野宿生活者、テント生活者の居住の場所が路上や公園などだからです。
 このように、不況が続き、失業率が過去最高で、国がやっと重い腰をあげて支援法案を成立させても大きな課題が残る中、今年の越冬が日を追うごとに近付きます。
 最後に、今年の釜ヶ崎の越冬は、クリスマスの余韻が残る12月25日夜から三角公園で行われる越冬突入集会から始まり、厳しい釜ヶ崎の越冬が本格化します。
下記のものを次の団体にお送りください。連帯して活動しています。

三角公園の炊き出しで使うもの
米、調味料(昧の素は使いません)、日持ちのする野菜などは
〒557-0003
大阪市西成区天下茶屋北2-6-14
コーポ花園101
勝ちとる会
電話&FAX 06-6634-8584

毛布/釜ヶ崎キリスト教協友会が越冬期間中の夜回りで配ります
〒557-0004
大阪市西成区萩ノ茶屋1-9-27
生活道路清掃事務所気付
電話06-6647-1035

越冬用品/下記以外のものは送らないで下さい
冬用ジャンパー、セーター、冬用下着、タオル、石鹸、ソックス、ホカロン
〒557-0004
大阪市西成区萩ノ茶屋2-8-9
旅路の里
電話06-6641-7183
釜ヶ崎キリスト教協友会の活動への参加
①ボランティア
越冬期間(12/25~2月末)の炊き出し、夜間パトロールへの参加
②釜ヶ崎越冬セミナー
釜ヶ崎周辺で野宿をしいられている労働者にテーマを絞って
2001年12月31日(月)
~2002年1月3日(木)
釜ヶ崎とその周辺
宿泊 旅路の里
参加費 3000円
申し込 12月22日(土)まで
〒557-0004
大阪市西成区荻ノ茶屋2-8-9
釜ヶ崎キリスト教協友会
電話&FAX 06-6631-2720
【編集後記】

クリスマスおめでとうございます! 9月の事件以来、アッという間に時が過ぎたように思います。
▲クリスマスの一方で、寒風に震えるアフガン難民や日本各地の野宿者の方々、死刑房で一人死刑の時を待つ死刑に思いを馳せるとき、胸がいたみます。キリストは誰のためにこの世に来られたのかゆっくりと黙想したいと思います。
▲来年がよい年でありますように!
(柴田幸範)