祈りの集い 「和解と癒しを求めて」
柴田 幸範(イエズス会社会司牧センター)

  1月のシスター・ヘレン・プレジャン講演会で幕を開けた「いのちの絵画展2001キャンペーン」は、12月3日に終了した山口県小野田市、サビエル高校での絵画展をもって無事、幕を閉じました。この間、全国8ヶ所で絵画展を開催したのをはじめ、各地で講演会、シンポジウム、祈りの集いを行い、のべ数千人のみなさんにご参加いただくことができました。今回のキャンペーンが、少しでも多くの方にとって、死刑を考えなおす機会となれば幸いです。
 今号では、11月30日にカトリック麹町(聖イグナチオ)教会で開かれた「祈りの集い-和解と癒しを求めて」についてご報告します。


 この集いはカトリックの「死者の月」(11月)にあたり、犯罪で亡くなられた被害者の方と、死刑を執行された方を追悼するために行われました。本当なら、被害者遺族の方々と死刑囚の関係者の皆さんが共につどって祈る場となれば最高なのですが、日本ではまだそこまで機が熟していないと考え、今回は有志でささやかに行うことにしました。できれば毎年このような機会を持ちつづけて、いつの日か本当の和解と癒しの場となれば、という願いをこめて、この集会を「和解と癒しを求めて」と名づけました。
 会場となった麹町教会マリア聖堂には、70人弱の人が来場しました。午後7時からはじまったつどいは、まず邦楽の演奏をBGMに参加者一人ひとりが祭壇にローソクをささげ、亡くなられた方々に思いを馳せました。続いて、始めの祈りがささげられ、犯罪被害者とその遺族、死刑を執行された方々とその遺族に癒しがもたらされるように、そして暴力には暴力をもって報いようとする社会に和解がもたらされるようにと祈りました。

 続いて、テゼの歌をうたった後、犯罪被害者遺族の手記と、死刑囚の最後の言葉を朗読しました。被害者遺族の手記は、何の落ち度もない夫の命を殺人によって奪われ、この世では二度と夫と会えない悔しさ、そして現在の司法制度では十分に配慮されていない被害者と遺族の人権を切々と訴えていました。他方、強盗殺人と放火の罪で処刑された死刑囚が、執行の直前に残した言葉は、「まだ生きていたい」という気持ちと「死んであの世で被害者にお詫びしたい」という気持ちの間で、微妙に揺れる心情を率直に表していました。
 しばしの沈黙のうちに朗読をかみしめた後、聖書が朗読されました。朗読個所は十字架上のイエスと二人の犯罪者の会話の場面でした。続いて、このつどいの実行委員長である安藤勇(イエズス会社会司牧センター所長)が、朗読個所に基づいてお話ししました。話のテーマは「幸いなる罪」というものでした。
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 キリスト教で、クリスマスに先立つ待降節や復活祭を準備する四旬節によく用いられる、「幸いなる罪」という矛盾した表現は、直接には「人の世が罪深いからこそ、イエスはこの世を救うべくお生まれになった。人類が罪深いからこそ、その罪を贖(あがな)うためにイエスは復活された」という神秘を表しています。
 人が人を殺す。そのこと自体は取り返しのつかない罪です。肉親を、友人を殺された人たちにとっては、癒しなど考えられないかもしれません。加害者がいくら反省しても、被害者やその遺族との和解などありえないと思われるでしょう。しかし、神であるイエス、まったく無実であるイエス自身が人類の罪を背負って「有罪」とされ、「死刑」とされたこと。そして、共に処刑された犯罪人に「今日あなたはわたしと共に楽園にいる」と宣言されたこと。そこにはまさに、神によってのみ可能な癒しと和解の神秘が示されています。

 人間は罪深い。だからこそ、イエスによって回心の可能性がもたらされる。人間は罪によって苦しめられる。だからこそイエスを通して癒しを与えられる。人間はいつも互いに争い、殺し合う。だからこそイエスを通して和解が与えられる。被害者やその遺族、そして加害者にとってすら理解しがたく信じがたい、この不思議な心の動きは、米国の被害者支援運動や死刑廃止運動の現場で、少しずつですが体験されつつあります。それは正義を超える愛、正義を生かす愛の力だ-と安藤神父は語り、私たち宗教者が癒しと和解の神秘を信じて、力強く歩んでいくよう呼びかけました。


 お話の後は共同祈願と主の祈りで、罪を犯した人を憎み、隔離するのでなく、彼らの回心をうながし、共に生きることのできる社会を実現できるようにと祈りました。

賛美歌やテゼの歌をはさんで、終わりの祈りでは、「暴力に暴力を、憎しみに憎しみを、殺人に殺人を報いるという悪の連鎖を断ち切り、あなたの愛のうちに和解して、共に生きていく道を見つけだすことができますように」と、死刑廃止への決意を新たにしました。1時間あまりの集いは、美しいテゼの歌で「命の泉である神のいつくしみと愛」をたたえて終わりました。
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 このように、キャンペーンの趣旨にふさわしい祈りの集いで1年間の活動が締めくくられましたが、実は来年5月にヘレン・プレジャンが再び来日して、「ノー・モア・デッドマン・ウォーキング」キャンペーンが行われます。ヘレン・プレジャンさんは5月中旬から末まで、熊本を出発地に、福岡、山口、広島、神戸、名古屋、札幌、東京の各地を訪れ、死刑廃止を訴える講演などを行います。すでに各地で準備が進んでおり、カトリック関係の学校や教会での講演会も計画されています。アムネスティ・インターナショナルや生命山シュバイツアー寺を中心に進められるこのキャンペーンに、当センターもお手伝いとして参加していきたいと思います。
 お隣の韓国でも、死刑廃止に向けた動きが国会の場で活発になっているいま、来年こそ日本でも死刑廃止への流れを強めたいものです。
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