「いのちの絵画展」その後の展開状況
イエズス会社会司牧センター
 前号の『社会司牧通 信』に田中死刑囚の手記を掲載したところ、さまざまな反響がありました。それと並行し て、各地で「いのちの絵画展」の開催に向けた動きが出ています。さらに、年内にも日本 のカトリック司教団が教書『いの ちへのまなざし』を発表して、死刑制度廃止を求める見解を表明するそうです。

 こうした流れをうけて、当センターでは来年6月頃に、上智大学で開催される「い のちの絵画展」に併せて、キリスト教諸教会や仏教の皆さんと共に、超教派の「死刑廃止 を求める祈りの集い」を開催しようと考えています。この「祈りの集い」の開催に向け て、今号からしばらく、死刑問題を考える記事を連続して掲載したいと思います。
 まずは、「いのちの絵画展」に関連した行事の予定をご案内します。
「いのちの絵画展」開 催予定 関連企画
①上智大学/2001年6月、カトリックセンタ ー主催
②エリザベト音大/上智大での展覧会の前後
③上智短期大学/上智大での展覧会の前後
④聖心女子大学/上智大での展覧会の前後
⑤山口教会/詳細未定
⑥広島学院/詳細未定
⑦泰星学園/9月頃
⑧ザビエル高校/2001年12月頃
⑨聖心会年次集会/2000年12月末
 その他、数ヶ所で開催を検討しています。
①死刑制度を考えるシンポジウム
  時期/2001年6月
  場所/上智大学講堂
  主催/上智大学カトリックセンター

②超教派の祈りの集い
  時期/上記シンポジウム、展覧会に合わせて
  場所/未定
  主催/イエズス会社会司牧センター
       日本キリスト教協議会
       アーユス(仏教国際協力ネットワーク)
         で共催する予定

③「いのちの絵画展」に向けて、司教団教書『いのちへのまなざし』の起草に関わっ たホアン・ マシア神父が、上智大学カトリックセンターで 連続勉強会を行う予定。
 他にも来年1月20日 のシスター・ヘレン・プレジャン(映画『デッド・マン・ウォーキング』のモデルとなっ た米国のシスター。死刑囚のカウンセリングを通して死刑廃止を訴えている)の来日の際 にも、何かできないか考えています。
 また、年末に発表される予定の司教団教書『いのちへのまなざし』を受けて、この 教書の「死刑廃止」のメッセージを教会に浸透させるため、また死刑問題でカトリック教 会が日本社会に向けて発言していけるよう、『社会司牧通信』でも教書を取り上げていき たいと思います。
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 「いのちの絵画展」は、いのちの尊 さや、罪と回心について考えを深めるよい機会であると思います。『社会司牧通信』の前 号の記事や、これから掲載する記事がそのきっかけとなれば幸いです。また、皆さんのま わりでも、他に「いのちの絵画展」を開催したいという方がいらっしゃいましたらご紹介 ください。前述の「超教派の祈りの集い」についていも関心のある方、お手伝いいただけ る方がございましたら、イエズス会社会司牧センターにお尋ねいただければ幸いです。
【編集後記】
11月30日、約1年ぶりに、3人の死刑囚に対して死刑が執行されました。死刑 の存 廃論議には、被害者の感情や犯罪者の更生(回心)といった、倫理的・宗教的な難 問も多く含まれて います。ただ、今回の死刑執行の背景にあるのは、「死刑判決が出たのだから執行 しなければならな い」という国家の強い意志です。
▲国家はためらいを知りません。可能なかぎり権限を行使しようと します。歴代法務大臣も「死刑の執行を命ずるのも職務である以上、それを行わな ければならない」 と述べています。そのとき、死刑の倫理的な問題点が十分に考慮されているでしょ うか。
▲死刑論議 のもう一つの重要な側面は「どんな理由であれ、人の命を奪う権利を 国家に与えてよいのか」という 問題です。「裁くな」と言われたキリストの言葉の意味をかみしめた いと思います
(柴田 幸範)