社会司牧通信 No 97  2000/8/15

3回目の「ボランティア研修会」
川地 千代(イエズス会社会司牧センター)


ボランティア研修会  この夏8月23~25日に、教育や社会使徒職のメンバーが協力して始めた「ボランティア研修会」が、3年目を迎えました。今年のテーマは、生徒と釜ヶ崎での体験学習を既に実施している参加者が、その経験をもとに取り組みを分かち合い、釜ヶ崎での体験学習やボランティア活動を進めるに当たり、特にフォローアップにポイントをおいてやってみよう、というものでした。参加者は、23名で、その半数がイエズス会4校を初めとする中高校の教員(4校以外は、サビエル高、湘南白百合中高、会津若松ザベリオ中高、暁星女子高…栄光や上智の卒業生の先生も含まれた)、残りは、上智社会福祉専門学校や上智大学の教員、イエズス会の社会使徒職の場で働く神父やスタッフ、それに、嬉しいことに管区長もフルに参加してくださいました。参加者は例年より少な目でしたが、研修会には程よい人数だったようです。  まず、イエズス会社会司牧センターの一つ、大阪・釜ヶ崎の「旅路の里」に集合しました。つい最近、壁や畳が新しくなって、エアコンもやっと事務所に入っていて、ちょっと見違えてしまいました。そして、釜ヶ崎で活動する4人の講師から話を聞きました。野宿者に無料で宿泊と食事を提供し、居宅保護を推進している「出会いの家」の渡部宗正さん、釜ヶ崎における医療や生活保護に関わり、「釜ヶ崎医療連絡会議」代表で日本基督教団牧師の大谷隆夫さん、釜ヶ崎の労働者の現状や就労に取り組み、「釜ヶ崎支援機構(NPO釜ヶ崎)」代表でフランシスコ会司祭の本田哲郎さん、日雇い労働をしながら釜ヶ崎で30年間活動を続け、「釜ヶ崎支援機構」指導員でアジアン・フレンド(滞日外国人支援)事務局長も務める水野阿修羅さん、という顔ぶれで、6人ずつ位のグループで、話が聞ける贅沢さでした。その後、釜ヶ崎が初めての人を中心に、ざっと案内するミニガイドをオプションでしました。蒸し暑い中、炊き出しやその晩宿泊するシェルターに入るために、黙々と並んでいる人々の姿が、今もリアルに目に焼き付いています。「仕事にありつけさえすればなぁ、……」。

 夜は宝塚・売布の黙想の家に移動して、自己紹介を兼ねた交流会をしました。日中はとにかく暑かったし、釜ヶ崎まで来るのに皆、結構遠かったりして疲れていましたが、その分心地よく水分補給(?)に努めることができました。共通の体験学習をした後で、打ち解けた雰囲気の中、話が弾みました。
 第2日目、午前中、4つのグループに分かれて、事前に送付してあった質問例「各校の釜ヶ崎の取り組みについての分かち合い」を叩き台に、自由に意見交換しました。欲を言えば、既に実践している中高教員の割合がもっと多ければ、分かち合いの内容が一層具体的になったのでしょう。午後は、「旅路の里」スタッフの高崎恵子さんから、体験学習やボランティアの受け皿になっている立場から、体験する生徒の様子やハプニング、オッちゃん達とのやり取り等を話してもらいました。その後、釜ヶ崎で20年間ボランティア・ケースワーカーを続けてきた入佐明美さんに、じっくりとお話し頂いた。岩村昇医師を尊敬し、ネパールで働ける日を心待ちにして、精神科で働く看護婦さんだった入佐さんが、釜ヶ崎で働くようになった経緯、労働者との日々の出会い等、自分史のように物語ってくださいました。いつの間にか引き込まれ、すーっと腑に落ちるお話でした。沢山の人が元気をもらい、キリスト者としての生き方を足元から問い直されもする、入佐さんとの出会いでした。
詳しくは、彼女の著書『地下足袋の詩―歩く生活相談室18年―』(東方出版)をお奨めします。
 最終日は、初めに栄光学園の望月先生から、生徒が振り返るときに、どう助けることができるのか、にポイントをおいたヒントを聞いてから、グループで話し合い、最後に、全体会で発表しました。お開きの昼食は、食券代りにアンケートを出した人からということで、生徒さながら一生懸命書き込んでくださいました。
 今回は企画段階から、主催する社会使徒職メンバーに、学校の教員と現場の釜ヶ崎のスタッフが加わって、準備を重ねました。また、何と言っても釜ヶ崎自体にインパクトがあり、充実した講師、釜ヶ崎で生徒の体験学習を実施している先生、大らかに楽しめる参加者等、条件に恵まれました。オープン・マインドで役立つ情報を共有して協力すれば、パンや魚を分け合って余りがあったの如く、皆が満たされてしまいました。生徒と一緒に教師自身が率先して体験すれば、気づきを自分の言葉で語ることが易しくなるでしょう。学校管理者にあっても、体験学習をすすめる研修会の大切さを重視し、教員に参加を促すシステム作りが求められていると思います。感謝。