社会司牧通信  No 91 99/8/15
ボランティア教育の現場から(7)
松徳女学院と福祉教育・ボランティア活動

仲本芳枝/松徳福祉教育委員会
 本校は、教育の特色としてキリスト教精神に基づいた国際教育と共に、福祉教育を重視しており、その目標として広い福祉体験を積みながら社会に貢献する女性の育成を目指しています。福祉教育の視点としては、母体であるイエズス孝女会の教育理念により、「世界の現状からみて、より弱い人々の立場に立って不正義の態度と状況に対し批判する勇気を持ち、より人間的社会の建設を目指し、グローバルに考え、また地域社会の福祉のために尽くすグローカル(グローバル+ローカル)アクション」を基本として、すべての人に向かった奉仕の心の育成に努めます。
福祉教育・ボランティア教育の実践

1.教科指導

  1. 必須の関連教科、特にキリスト教倫理、公民科だけでなく全教科の学習を通して、この精神を育てる。
  2. 選択科目の「ボランティア学習」(高2)「社会福祉」(高3)「介護救急」においては直接的、体系的、専門的にボランティアの学習をするよう指導、研究する。そして社会福祉の履修でホーム・ヘルパー3級、介護救急で日赤の救急員適任証を取得できる。
 JPGE(Justice, Peace and Global Education, 正義と平和地球教育)の授業では、姉妹校(フィリピン、台湾、スペイン、中南米諸国)からの留学生(6~10名)と共に、世界の若者を取り巻く現代社会の問題について、マルチメディア等も利用しながら学習します。

2ボランティア活動

A) 福祉デー
 全校的な取り組みとして年一回、中学・高校を含め6ヶ年を念頭においた計画で、全員参加の体験学習を大切にしている。出来るだけ多種の福祉活動、特に視聴覚障害者、身体的・知的障害者に触れる機会を持ち、同時に障害者福祉に限ることなく広い視野から捉えた6ヶ年計画による体験を通してボランティア精神、福祉の心の育成を図る。
  • 中1/身体障害者の方との交流と車椅子体験
  • 中2/ライトハウスライブラリーに行き、視覚障害に関する講演と学習、点字講習
  • 中3/講話と手話学習
  • 高1/「福祉」講演会、午後共同募金活動
  • 高2/福祉施設でのボランティア体験学習、養護老人ホーム、障害者施設、病院など10ヶ所
  • 高3/みずうみ赤十字奉仕団との交流
B) 年に一回、献血車来校
3)生徒会活動
  1. 松徳の姉妹校であるフィリピンのとても貧しい「マーシン高校」への学費援助活動各クラスがそれぞれ1名の援助を目標としている。マーシン校では「松徳奨学生」と呼んでいるようです。生徒間の通信や写真、フィリピン訪問等を通して交流を深めている。

  2. 社会福祉部の活動
    • 養護老人ホーム「浩生寮」及び児童福祉施設「双樹学院」との交流を、創立当初より約40年継続している。その内容は定期的訪問、松徳祭・クリスマス会などへの招待、クリスマスキャロル、年賀状、新年会等で交流
    • 「赤い羽根共同募金」に協力
    • 障害者による作品の販売
    • 空き缶・空き瓶の回収
    • 援助資金のためのクッキー・ケーキ作り
    • 釜ヶ崎へのお金の援助

  3. SVC(Shotoku Volunteer Center)
       自由クラブの一つで、1996年に新設。
    • いつでもボランティア活動をしたい、研究をしたい人のために情報収集、発信の役割を果たす。
    • ボランティア登録制をとり、様々な情報を紹介し、指導する。
    • 生徒の自主的な活動となる。
    • 緊急活動に応じることが出来る。
    │年間のボランティア、ボランティア│
    │研修の件数は20回を超え、延べ約│
    │200人が参加した。      │

  4. 保健部員はJRCメンバーとして加入。
       障害者授産施設「マルベリー」のパンを年間数回、校内販売をして支援。

  5. 交通安全部
       交通遺児育英募金活動への協力。
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4)「平和をもたらす使節団」

フィリピン姉妹校訪問(中3全員、高3希望者)
93年度からはじめ第6回を終えた。

目標は、

  1. 視野を広げ、特にアジアの兄弟姉妹に目を向け、姉妹校との連帯を強める、
  2. 家庭、愛、生命、経済、開発などについて、異なる価値観を知り、人の優先、他者への関わり、隣人愛などについて学ぶ、
自分の周りに「平和をもたらす」人になる。

5)教師・保護者・卒業生との関連及び広報活動

  1. 教師の福祉への理解を深めるため、施設での宿泊体験学習。校内社会福祉研修会。教職員フィリピン研修旅行等も実施してきた。
  2. 同窓会も積極的に福祉活動に取り組んでいる。バザー収益から車椅子の寄贈、フィリピン募金への協力など。またインドのカルカッタやアフリカなどでもボランティア活動を1年2年と体験した卒業生達の講演を在校生が聴く機会を計画する。
  3. 「学院だより」に松徳の「福祉だより」の欄を設け、保護者への広報に努める。保護者のバザーなどへの協力も大きい。
6)地域との連携強化

 高校の福祉活動において、地域と行政その他関連施設との連携を図るため、1995年、松江・安来(島根)地区高校福祉ボランティア活動等連絡会」が設立され、当初より事務局をつとめる。

 加入高校21校。主な活動は連絡会及び毎年「松江・安来地区高校『ボランティアの集い』」の企画、開催。

 98年第3回のテーマ「高校生が見た、出会った、考えた~市民の一人として」

 99年第4回のテーマ「高校生、松江市長と共に考える-住みよい福祉のまちづくりを目指して」内容は高校生によるシンポジウム、講演、体験発表、分かち合いなど

終わりに

地域的にも国際的にもボランティアの必要が叫ばれている今日、これまでの実践を踏み台に『時のしるし』の中で教会や他のカトリック校との連携によって視野を広げ、本校の教育の特色の一つである福祉教育に松徳共同体として取り組むボランティア精神が生徒一人一人の中で実り、社会の必要に応え、それぞれの立場から貢献できる女性として自己実現していくことを希望している。

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