社会司牧通信  No 89 99/4/15

ボランティア教育の現場から(6)
六甲中学・高等学校の社会奉仕活動について


六甲学院・社会奉仕委員会
 本校で行われている社会奉仕活動を、生徒向けに作られた呼びかけを基に紹介します。

1.今までの歩みと社会奉仕活動の考え方

 本校は1980年頃から学校全体で社会奉仕活動に取り組むようになり、中1から高3までの生徒委員で構成する社会奉仕委員会が中心となって活動しています。
 六甲学院創立以来、キリスト教の精神に基づいて、奉仕の大切さを強調し、手助けを必要としている人たちへの援助活動をさかんに行ってきました。赤い羽根共同募金の街頭募金協力や御影(ミカゲ)にある児童養護施設とのかかわりなどは、かれこれ40年以上も続いています。
 1970年代に世界中のイ工ズス会学校は、共通の教育目標として「他の人のために生きる人間(Men and Women for Others)」をかかげ、社会正義の問題を取り上げることや福祉教育にそれまでにも増して力を入れるようになりました。より人間的な社会の建設に貢献する人物を育成することをめざす教育活動です。誰もが「人間として」大切にされ、人権が尊重される社会を実現することが、六甲学院の教育の目標です。
 しかし、私たちの中には、ついつい自分のことばかりを考えてしまい、他の人のために何かをすることをいやがる「ケチくささ」があります。この社会奉仕活動は、そういうケチな自分と戦う活動です。毎月の小遣いの中から200円をインド募金に入れること、奉仕作業で汗を流すこと、その他いろいろな機会に自分の労働、お金、心づかいなどで自然に協力することができるようになりたいものです。
 これからの日本やアジア、さらに世界の将来を考えると、社会の不正に苦しめられている力の弱い人たち、差別されている人たちと「ともに」人間らしい生活を実現できる社会をつくりあげていくことが求められていることがわかります。六甲学院は、君たちが将来どこで働くようになったとしても、その場を通して人間らしい社会の建設に力を尽くせる人になってほしいと願っています。そのための訓練としてこの社会奉仕活動を理解して下さい。
 弱い立場に置かれている人たち、苦しい状況にある人たちと「ともに」歩むことを体験し、その意味や価値を考える機会を提供することは、六甲学院の教育の柱です。六甲学院の一員として、皆さんが積極的にこの活動の意味を理解し、協力してくれることを期待しています。

2. 活動の紹介        

(1)インド募金
 全クラスで行う毎月の募金で、インドのビハール州にあるハンセン氏病の施設、ダミアン社会福祉センターのために集めています。特に、ダミアン社会福祉センターのデブリットハウス(親が病気で治療を受けている、子どものための施殺)に住む少年たちの教育と生活のための資金となります。各クラスごとに「もうひとりのクラスメート」のパネルがあり、その子の生活を支えるために募金します。各自の募金額は、自分の小遣いの中から一食分の費用に当たる金額を出すという意味で、およそ200円以上を想定しています。
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インドには年に2~3万ドルを送金しており、3~4年ごとに六甲学院を代表して現地を訪問した先輩たちが、私たちの募金が非常に有効に使われていることに感激して帰ってきています。
(2)社会奉仕作業
 夏休みを中心に、中3から高2の生徒は神戸近辺の社会福祉施設を訪問して、1日の労働奉仕を行います。いろいろな年齢、立場、境遇で暮らしている人たちと少しでもふれあいたいとの願いを持って実施しています。宿泊を伴う奉仕作業もあり、岡山の長島愛生園、奈良のレーベンスシューレなどを訪問します。中1は久美浜(クミハマ)キャンプでの海浜清掃、中2は学年の先生たちによる企画があります。
(3)赤い羽根共同募金
 伝統的にほとんどの中1、中2の生徒がこの街頭募金に協力してきました。高校生の社会奉仕委員がリーダーとしての指導のもとに、三宮から元町にかけて小さなグループに分かれて募金を呼びかけます。毎年10月はじめの土確日と日曜日に実施しています。
(4)献血への協力
 毎年12月に日本赤十字の血液センターから献血車が来校します。満16歳以上の人が協力できます。冬に実施する理由は、この時期が血液不足になる季節だからです。
(5)社会奉仕委員の活動
 全学年の各クラスから選ばれた社会奉仕委員は、毎月のインド募金集め、各種活動の準備と実施、広報活動を通しての情報提供、社会奉仕に関連した学習、文化祭での展示などを行います。
(6)その他の活動
(a)釜ヶ崎への支援活動
 社会のひずみがしわよせされている釜ヶ崎では、種々の福祉活動が行われており、私たちも、お米集め、夜回りへの参加、炊き出しの手伝い、活動資金の寄付なとで協力しています。
(b)再生紙用の古紙回収
 不要になった古紙を回収し、再生紙づくりに協力しています。
(c)カンボジアの坂野氏の支援
 戦乱で荒れ果てたカンボジアで人々の生活を支える活動を続けている1987年卒業生(44期)の坂野一生氏を支援しています。
3. 1998年度の報告    

 ハンセン氏病の父母を持つ、生活が極めて困難な生徒に、教育費と生活費を援助しています。月々、自分の小遣いから募金し、クラスで「もうひとりのクラスメート」のために6000円をめやすに集めます。
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(1)インド募金
募金は職業訓練の設備費にも使われ、インド社会の中で生徒が将来仕事をもって自立した生活ができるために、役立てられています。
 昨年、通常月(12月卒業募金・1月お年玉募金等以外の月)にはクラス平均で7200円程集め、多くのクラスは目標額を越えています。しかし、例えば92年度(第2回インド訪問前)のクラス平均8200円、93年度(第2回インド訪問後)の平均9300円などと比べると、金額の面ではやや低調になっています。
 今年(1999年)5月に『第3回インド訪問報告記』を在校生に配布し、併せてインド募金についてのホームルームを全クラスで行いました。この『報告記』は97年春期休暇の「インド訪問」の記録・感想文集です。
(2)社会奉仕作業
 昨年、中1~中2は赤い羽根の共同募金などに参加しました。中3以上の生徒は毎年訪問している施設での作業や交流を行いました。あしなが募金、震災後の地域コミュニティーを作るための催し物への参加、仮設住宅訪問や恒久住宅への引っ越しの手伝いなども実施しました。
(3)献血
 毎年12月に実施します。1982年から17年間続いています。昨年の献血者数は108名でした。1980年代の8年間の平均が226名なのに対し、最近8年間の平均は107名です。献血者数が半分以下になってしまっており、献血への理解と協力が課題となっています。
(4)路上生活者のための活動
 大阪の釜ヶ崎や神戸で路上生活を強いられている人たちのための活動をしています。炊き出し用の米を全校生に呼びかけて集めました。越冬パトロール(夜回り)にも20名程の希望者が参加しました。夜間に健康状態を聞きながら、必要な方におにぎり・みそ汁・毛布等を渡します。昨年の12月には、釜ヶ崎内の施設(「出会いの家」)の大掃除を手伝いました。
4.おわりに          

 個々に見れば、さらに工夫や努力の必要なものもあり毎年試行を続けております。私たちはこのような社会奉仕活動という体験学習を通して、生(なま)の現実に触れ、人間的な葛藤やお互いの思いやりに出会う機会をさらに積極的につくっていきたいと考えております。それを通して、現実の社会や人々の関係をあらためて見なおし、人間の在りようや目指すべき生き方を、生徒もそれに関わる大人たちも模索していく活動でありたいと願います。