社会司牧通信   No 89  99/4/15

イエズス会の取り組み
 イエズス会には、JUBILEE 2000の国際的なキャンペーン運動を行う、イエズス会債務救済・開発事務局(JDRAD:Jesuit Debt Relief And Development)があります。2月に事務局責任者(信徒)が当センターを訪れ、情報交換を行いました。JDRADからの資料を元に、世界のイエズス会の取り組みをご紹介します。

●なぜ、JDRADなのか

 イエズス会は昔から、特に第32総会以来、貧しい人々の優先的選択を行ってきた。イエズス会の多くのセンターや会員個人が、世界中で貧しい人々に直接に奉仕しており、彼らの協力態勢は一大ネットワークとなっている。けれども、国際的な諸問題については、イエズス会はいまだ共同で大きな声をあげるに至っていない。
 JDRADは債務と開発についての議論に対して、以下のような独自の貢献をおこなう。
-イエズス会独自の養成と信念から、倫理面と神学面で、また人文科学の分野において、特別な貢献をおこなう
-世界に広がるセンターや活動者のネットワークを通じて、私たちは、貧しい人々に直接にかかわる南の会員たちの経験や洞察を、北の有力なロビイストや評論家、活動者たちに伝える役目を負っている
 私たちは幅広い専門技能と地に足のついた体験を有する、一大グループであり、より広い世界規模の運動に多大に貢献することができる。私たちはこのネットワークによって、私たちの資源を最大限に利用し、国際的な運動を強化し、現実的・積極的な変化を促すのである。
●国際債務の背景

 人間的な開発の最大の障害の一つは国際債務である。膨大な債務の返済は、希少な資源を公共部門から奪い、債権者が押しつける厳しい経済構造調整プログラムとあいまって、何億という世界の貧しい人々をますます貧しくさせてきた。
 貧しい人々に豊かな人々への債務を返せと要求するシステムは、純粋に経済的なシステムとはいえない。それは人権や責任、正義の問題をも含んでいる。
 JDRADはこのシステムに、すなわちその経済面、社会面、環境面でのコストに、そして最も根本的には、そのシステムの倫理に挑戦する。私たちの仲間の草の根の活動者も研究者も、全人的な開発やあらゆる人の人権の尊重が実現されうるオルタナティヴなシステムの探求をめざす。
 債務問題は、より大きな病気の一つの症状にすぎない。その病気とは、つまり、ひとにぎりの豊かな人々が多くの貧しい人々の権利を奪うという方向に進んだ、世界経済のシステムである。多くの北の国々の政府は、世界の富を先進国に集中する一方で、貧しい国々を世界の富から閉め出すような、国際的な貿易関係や金融構造を継続して維持しようと考えているようだ。他方、多くの発展途上国政府は、貧しい人々を仲間外れにした所得と土地の分配システムを維持し、貧しい人々を無視して、豊かな人々の収益を最大にするような分野に公共投資を集中させている。

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多国籍機関に規制・監督権限を再譲渡するという現在の流れは、口やかましい株主たちに対する企業の結果責任と説明責任の履行を、急激に低下させかねない。
 JDRADには、こうした経済倫理のあり方に疑問をもつ多くのグループが、続々と参加している。私たちの使命は、イエズス会を動かして、債務や開発の問題、世界の貧しい人々に奉仕するという選択にとって核心的に重要な問題に関わる他の教会団体や市民団体とともに、この問題の解決に貢献することである。JDRADはカントリー・プロファイル(各国の債務情報)、特定のテーマについてのワーキング・ペーパー、月刊のニューズレター、ホームページ、各国版・国際版の出版物、各国内や国際的な組織や会議への貢献などをおこなっている。
 JDRADの運営は、アイルランドのイエズス会信仰と正義センターがおこなっている。専任のコーディネーター、ミス・ニァム・ゲイナーは2月に来日し、ジュビリー日本委員会のメンバーと情報交換した。


●国際債務の背景

 人間的な開発の最大の障害の一つは国際債務である。膨大な債務の返済は、希少な資源を公共部門から奪い、債権者が押しつける厳しい経済構造調整プログラムとあいまって、何億という世界の貧しい人々をますます貧しくさせてきた。
 貧しい人々に豊かな人々への債務を返せと要求するシステムは、純粋に経済的なシステムとはいえない。それは人権や責任、正義の問題をも含んでいる。
 JDRADはこのシステムに、すなわちその経済面、社会面、環境面でのコストに、そして最も根本的には、そのシステムの倫理に挑戦する。

私たちの仲間の草の根の活動者も研究者も、全人的な開発やあらゆる人の人権の尊重が実現されうるオルタナティヴなシステムの探求をめざす。
 債務問題は、より大きな病気の一つの症状にすぎない。その病気とは、つまり、ひとにぎりの豊かな人々が多くの貧しい人々の権利を奪うという方向に進んだ、世界経済のシステムである。多くの北の国々の政府は、世界の富を先進国に集中する一方で、貧しい国々を世界の富から閉め出すような、国際的な貿易関係や金融構造を継続して維持しようと考えているようだ。他方、多くの発展途上国政府は、貧しい人々を仲間外れにした所得と土地の分配システムを維持し、貧しい人々を無視して、豊かな人々の収益を最大にするような分野に公共投資を集中させている。多国籍機関に規制・監督権限を再譲渡するという現在の流れは、口やかましい株主たちに対する企業の結果責任と説明責任の履行を、急激に低下させかねない。
 JDRADには、こうした経済倫理のあり方に疑問をもつ多くのグループが、続々と参加している。私たちの使命は、イエズス会を動かして、債務や開発の問題、世界の貧しい人々に奉仕するという選択にとって核心的に重要な問題に関わる他の教会団体や市民団体とともに、この問題の解決に貢献することである。JDRADはカントリー・プロファイル(各国の債務情報)、特定のテーマについてのワーキング・ペーパー、月刊のニューズレター、ホームページ、各国版・国際版の出版物、各国内や国際的な組織や会議への貢献などをおこなっている。
 JDRADの運営は、アイルランドのイエズス会信仰と正義センターがおこなっている。専任のコーディネーター、ミス・ニァム・ゲイナーは2月に来日し、ジュビリー日本委員会のメンバーと情報交換した。

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●債務帳消しについてのJDRADの立場
 以下は、JDRADの出した「債務帳消しについての声明」からの抜粋である。
 「世界の多くの最貧国を苦しめる債務の罠から脱出する道を探求するためには、債務危機がどのように出来したのか、誰の責任なのか、誰がどのように引き起こしたのかを理解することが重要である。それが貧しい人々にとってどんな意味をもつか、誰が返済しているか、誰がその影響をこうむっているかを理解するのが大事である。実際、債務危機と呼ばれるものは、今回がはじめてではない。最初の危機は、1980年代初頭にラテンアメリカで発生したもので、この体系的な危機は全世界の金融システムを崩壊の瀬戸際に追い込んだ。最近のアジアの債務危機も、同様に金融システムの崩壊の危機を招いたが、豊かな国々からの迅速かつ協調的な対応を引き出した。第2の債務危機は、第1の危機を大きく超えるもので、今まさにアフリカをはじめ世界各国の人々の生命と生活を犠牲にしている」


●債務危機の原因
 「2度の債務危機の根本原因は多岐にわたり、複雑である。危機は制度的なものである。すなわち、北の国々でマクロの経済政策が、南の国々への影響をいっさい考慮せずに決められたからである。また、それは政治的である。冷戦期の融資は戦略的な同盟づくりの道具とされたのである。さらに、それは経済的である。商業銀行はオイル・ダラーであふれたあまり、リスク分析もほとんどせずに、どんどん融資を増やしたのである。実質金利は低く、ローンを取り付けることは比較的簡単であった。そうした融資の多くは、ほとんど利益を生み出さない巨大なインフラや、軍備競争、腐敗した体制へとつぎ込まれた。

 70年代の終わり頃になって、さまざまの構造的要因から債務の返済が次第に高くつき、困難になるにつれて、問題が生じてきた。なかでも、石油価格の上昇は通貨の引き締め政策を招いた。その結果、金利は急上昇し、各国通貨の対ドル価値は急落した。1982年、メキシコが債務の返済不能を宣言すると、各国はそれに追随し、世界の金融体制は崩壊の危機にさらされ、状況はまさに危機的になった。他方、この第1の危機に対応して、先進諸国やIMF/世銀が債務返済を続行させるべくとった行動は、功罪半ばする結果を生み出した。現在の危機に対してとられている対応は、全体にみて適当でないばかりか、多くの場合、問題を悪化させている」


●現状
 「現在、多くの国々が外国の債権者に鎖でつながれていて、その犠牲者は、債務危機にまったく責任のない貧しい人々である。
 最貧国の保健衛生・教育サービスの貧困さの最大の原因は、財源不足である。それらのサービスの不十分さは、人々の生命-多くの場合、貧しい人々の生命-を犠牲にしている。現在おこなわれている国際的な融資機関の貸付は、構造調整プログラム(SAP)の実施を前提としており、このSAPは政府の財政支出の削減と経済自由化の政策をとるよう求めている。それらの政策が意図する効率的な財政支出や効率的なマーケットという考えは、追求するに価する目標ではあるが、SAPの実施にあたっては、しばしば公共支出を大幅に削減するあまり、短期的に教育や保健衛生の支出をばっさり切り詰めて、将来をになう青少年の健康や教育を失わせ、長期的にも国の経済発展を阻害してしまうことが多い。同様に、市場解放はしばしば唐突におこなわれ、地場産業を駆逐してしまう。本来は、外国からの投資に対応する時間を与える、漸進的なアプローチこそが必要なのだ。

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こうした点から、SAPは、物価を上昇させる一方で家計所得を減少させ、基本的社会サービスを否定することによって、貧困を増大させる。さらに、SAPは債務国の政府や地方の自律を低下させ、IMF/世銀に債務国の経済政策への介入権を与える一方、国民大衆の社会参加を否定する。
 多くの債権国は、もはや返済不能である。返済努力は貧しい人々の生活を破壊している。債権国の経済に対する外部からのコントロールが強化されることによって、それらの国の国民が自国の運命を自ら決定する権利が覆されている。ビジネスの世界では、もし、ある銀行の融資先が破産したら、銀行は審査の不十分さの代償として融資した金を失う。だが、現在、私たちが属している国際金融システムでは、ある国が債務危機に陥ったとき、他人の審査のずさんさの代価を払うのは貧しい人々である。これは不正で間違っている」


●債務帳消し
 「『債務の返済は、一国の経済を瀕死の状態に追い込んでは履行されることはできない』(教皇庁正義と平和委員会、『人類共同体のために-国際債務問題への倫理的アプローチ』、1986年、序)。すべての国の政府の第一の責務とは、自国民の福祉を保障することである。債務返済が国民の福祉を害する場合には、そうした債務は帳消しにされるべきである。加えて、JUBILEE 2000キャンペーンが唱えている債務帳消しの主張に沿って、JDRADは、生産品の価格下落や金利の上昇がなければ、実際にはすでに返済が終わっていたはずの債務や、抑圧的な政権の強化のために使われた債務の帳消しを支持する。

帳消しの合計額と条件は、一国対一国で、債務国と債権国・機関双方の参加によって決められるべきだ。
 JDRADは、こうした帳消し措置はよりオープンで、参加的なプロセスにおいておこなわれるものと考えている。このプロセスは、そこに参加する選ばれた代表に、よりいっそうの説明責任と結果責任を要求し、市民一般の意志決定プロセスへの十全で意義深い参加を可能とする。このプロセス、国際法において定められるべき法的手続き(債務者と債権者双方の対等な代表による仲裁手続き)は、帳消し額の交渉や、帳消しによって自由になる資源の最善の配分方法の決定、将来の融資計画や財政支出の監視といった事柄において、一般市民に政府のパートナーとして働く役割を担わせるだろう。
 債務危機はすべての人に影響を及ぼすが、特に貧しい人の打撃は大きい。それは、何億という人の食糧や住居、教育の確保を否定するものであり、ひいては個人と社会の発展の息の根を止めるものである。それは同時に、コミュニティが自分たちの未来を自分たちでつくる、という役割を否定することでもある。コミュニティに最大限の自律性が付与されるときにのみ、個人の尊厳も尊重される。現在の経済システムは、共同体からそうした自律性を奪っている。JDRADは、債務帳消しはオルタナティヴな世界経済秩序への第一歩でなければならないと、そしてその新しい秩序は貧しい人々に権力と基本的人権、そして尊厳を返すものであると確信している」

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ジュビリー日本委員会は今年6月のケルン・サミットに日本から100万人分の署名を届けることを目標にしています。キャンペーンについて分かりやすく説明したパンフレット(300円)もあります。お問い合わせ下さい。
TEL.03-3291-5901/FAX.03-3292-2437
Eメール.parc@jca.ax.apc.org

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