デメリットのなかで第一は、その診断によって異常が見つかった場合の胎児の堕胎である。…生きる権利が障害の有無によって決定されてよいのであろうか。そして、第二に本人や家族の社会から受ける疎外感がある。社会が障害者を認めようとしないのだ。…第三に障害の診断によって人間の価値を下げるようになってしまうのではないかということだ。 これから分かるように、出生前診断を取り巻く唯一にして最大の問題はこの社会である。…社会全体の障害者に対する意識の改革こそが、最も困難ではあるが、出生前診断のデメリットを防ぐ最大の方法ではないだろうか。
私はこのレポートを書くにあたり、大変な迷いと憤りをいだいている。なぜ障害者を特別視するのか。この現状を生み出している社会を悲しく思う。また、そのことについて客観的に述べている自分も、差別の加担者であるのではないか。 多分、これからも遺伝子診断が、選択の自由を有するもので、利己的人権を主張する人々にとって一つの手段として存在する限り、なくなることはないであろう。しかし、その診断自体を無くすことではなく、その診断によって起こる状況を、一人りでも多くの人が知り、少しずつでも、改善していくことに全力を尽くすべきである。
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