社会司牧通信  No.83  98/4/15
 
主役は市民
市政への参加をめざして
林 尚志(イエズス会労働教育センター)
 地球規模で考えて、自分の生活している地域で実践する(think globally,act locally)。 地球の動植物と私たち人間は運命共同体である以上、この地球環境を全体的に見て、自分の生きる大陸・国・地方の自然環境の中でのあり方の責任をとることは当然であり、多くの地球市民がそれぞれの努力をしている。
 それにもかかわらず、環境悪化の拡大は速度が速く、深度も深まる一方だ。身近な所で、一人一人が食い
止める方法を身につけたい。 前号で、地方都市の小さな公園の木が、市民の参加なしに切られていく状況を伝えた。ことはローカルな出来事で、地球規模で見れば微少なことに過ぎないと誰もが思うだろう。しかし、この微少な出来事を解決する手法を身につけ、実践できないようでは、地球規模の出来事は困難過ぎる。しかも、この両方同時に関わらなければならない。 「この公園の木の出来事に、私はどのように参加しているのか」。
この初歩的な問題提起に取り組みを開始した市民グループが、「市民フォーラム」である。 「市民フォーラム」は、既成の決定機構・決定過程以外の、どちらかと言えば草の根的市民の意見表示・情報交換・対話の場であり、行動の選択・実行の出発点ともなっている。 市民フォーラムはここ下関市で、多くの市民的活動・運動の積み重ねの流れの中で、1990年に年間テーマ「ゴミ問題を考える」をもってスタートしている。その後も、「国際化」のテーマのもとで国際化そのものの意味を問い、さらには海峡の街の開発計画、 在日外国人の視座から見た下関市の歴史と現在のあり方、老人福祉・子どもの権利条約・情報公開と知る権利・障害者の視点からみた下関市の人権の課題、といったテーマをとりあげて見ていった。さらには議会・行政が行う様々な都市宣言も洗い直してみた(例えば、非核平和都市宣言等)。 敗戦50周年の問い直しでは、日本の大陸侵略の足であった関釜(かんぷ/下関-釜山)航路の歴史を学習し直した。神戸地震の時は地方都市の防災を検証した。そして、ダイオキシン汚染がクローズアップされたこともあり、
初心に返って、「再びゴミ問題」のテーマに取り組んだ。 しかし、最近の市民フォーラムは低迷している。何が原因か。具体的な変革が生み出せないからか。市民の自立が不十分で、地方選挙等の際も低い投票率でしか参加しない現状を目の前にして、どこかから変革の突破口を作って行かなければならないと思う。 そこで、4月19日、労働教育センターに、行政側から市の都市整備部部長と公園緑地課長を招き、この地方都市の公園の現状、保全維持改良の基本方針、新設計画等の総合計画を問う。 更に予算や業者選定の基準、情報公開等、14項目を検討することになった。 一番大切なのは、市政の決定過程への市民参加の現状と、今後の可能性である。 地球規模の環境破壊、日米安全保障の新ガイドライン(戦争協力マニュアル)、ODAや民間金融機関の第三世界への投資の悪影響等、地球規模の山積する問題への参加と、責任ある行動への出発点を、身近で獲得したい。 このフォーラムを誰もが参加できる、身近な課題のフォーラム(場)としたい。
公園で切られ、処分されている木々の叫びに応え、破壊された人間や社会、地球の再生を願いたい。
林 尚志

 電話0832-23-4585
 Fax.0832-35-0303
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<編集後記>
お知らせを二つ。
▲北朝鮮食糧支援「一食」キャンペーンを共同で呼びかけ ています。飢餓に苦しむ北朝鮮の市民をイデオロギー抜 きで支援します。4月25日に東京で、北朝鮮の市民に 連帯する集会を開きます。
▲5月20~24日、東京で死刑囚が描いた絵の展覧会 があります。死刑の存廃について抽象論を闘わせる前 に、まず死刑囚の描いた絵を目にして、かれらの人間 性にふれてください。過ちから立ち直れない人間など いない、ということこそが死刑論議の出発点だと思います。

>▲どちらも関東にお住まいの方にチラシを同封しました。 ぜひご参加ください。                    

(柴田 幸範)