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大寒が過ぎ、立春の近い下関で、小さな出来事があった。新聞でも「公園の桜 の木切られる」と言う記事で報道された が、市の中心部の公園の桜をはじめとする木々が切られ、根こそぎにされている
のに気付いた市民が、公園を管理する市 役所の公園緑地課に問い合わせたところ 「住民自治会が樹を切らないように市に頼み、市も業者に樹を残すように伝えた
が、業者の手違いで切られてしまった」 というのだ。「何本かは市の公用地に移 植するし、新しく樹を植えるから」云々と市は弁明したというが、情け無い話で
あった。 |
その公園は、力トリック教会とその隣 接する幼稚園の前にある。春の桜の花や 新緑は園児の入園や卒園を祝い、夏は立 ち話する大人や子どもの遊ぶ姿の上に涼しい木陰を与え、秋の葉の色づき、冬に
は天然のクリスマス・ツリー…と人々の 生活と地域の歴史の中で生きていた。 公園の新規開発計画が始まった時、どんな計画か市民に説明され、市民サイド
の意見も聞かれたのならば良いのだが、 そんなプロセスがあったとは聞いていな い。自分の私有地の樹が切られたら大騒ぎするが、公園の木が切られても、何の
ためか、どうなるのかも余り気にしない |
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鈍感さ。幼児のそばで、説明もなく生き た木々を切り倒していく、大人の精神の 貧困さはどうしようもないのか。 他市の造園業者に聞いたところでは、市の公園管理課から、「住民感情を損な
わないように、他の所に移植するように 見せかけて、木を処分してくれ」と頼ま れるとのこと。必要経費は市民の税金で払われる。自分が騙される為の経費も払
わされるわけだ。上記の桜も実際はどこ に持って行かれたのか。業者も「生活の 為に仕方がない、市から仕事を(小規模でも公共事業だ)貰いたいから」と言う。
市・県・国、どのレベルでも構造的に同 じ場合が多い。 |
干ばつで約70万人が飢餓、16万人 が死の危険にあると報じられているパプ アニューギニアでの、日本企業などによっ て20数年間続けられた熱帯雨林の大規模な伐採。今年1月26日、ブラジル政
府もやっと認めざるを得なかったアマゾ ンの熱帯雨林の破壊は、1978年から、 1996年迄で、なんと50万平方キロ全体の12.5パーセントであるという。
森林、特に熱帯雨林は「地球の肺」だと 言う。肺を失ったら地球の生態系は生き られない。 生活・生産のあり方が地球上の木々に大きく負っている、いわゆる先進国の私
たちは、もう一度一本の木との関わり・ |
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つきあい方を新たにしなければならない。 木々を人間の利益・都合で勝手に処分す る時代は終わったのだ。一本の木を切ら なければならないとき、21世紀の地球に生きる子ども達に説明し、了解が取れ
るような、人間だけでない地球の生態系 の公益にも叶った態度をとるよう問われ ていることを、切られ根こそぎにされた下関の公園の木々の犠牲は叫んでいるし、
そこで生きていた鳥や蝉も訴えている。 市内の修道女会の経営する幼稚園の母 親達が、8年前「明日葉の会」*と言う、21世紀の子ども達の世界の自然と社会
を考え行動するささやかなNGOを創り、 下関で敏感に発言し、出来るかぎりの行動をしている。 |
今回、木々の切られる悲 鳴を聞き、行政に問いただし、マスコミ に追求取材を頼んだのも、この会の女性 達だった。
*「明日葉(あしたば)」=セリ科の大 型多年草。生命力が強く、「今日切り 取られても、明日再生する」という意味。
林 尚志
電話0832-23-4585
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