タリタクム(TALITHA KUM) 人身取引禁止ネットワーク

アビー アベリノ MM
メリノール女子修道会 / タリタクム アジアコーディネーター

 

「タリタ・クム、少女よ、立ち上がれ!」

  これは、マルコの福音書の中で、イエスがヤイロの娘に言った言葉です(5・41)。
 

  タリタクム日本は、CBCJ(日本カトリック司教協議会)から委託されたJ-CaRM(日本カトリック難民移住移動者委員会)と協力して、人身取引対策を目的とした、日本女子修道会総長管区長会と日本カトリック管区長協議会のネットワークグループです。

  私がタリタクムのネットワークに参加した2016年、日本は昔も今も目的地の国でした。私は、近隣のアジア諸国や遠く離れたアフリカ諸国から、搾取の被害に遭っている多くの移民や難民に出会いました。特にフィリピンからの移民女性に同伴してきました。多くの場合、私は騙され、搾取された女性や男性に出会いました。それが私の心に何かを引き起こすきっかけとなり、この人身取引対策のミニストリーに関わることになったのです。

  日本では、技能実習生、日系フィリピン人児童(JFC)、日本語学習者などが人身取引の被害者となっています。

  タリタクム日本は、移民や難民、非正規滞在者の権利と尊厳を守る活動をしています。移民労働者の労働搾取事件に対するカウンセリングや法律相談を行っています。搾取の被害者である女性技能実習生の救出や、保護のためのシェルター提供などの危機介入を行っています。人身取引に対する啓発キャンペーンとして、セミナー、ニュースレターの配布、2月8日の「世界人身取引に反対する祈りと啓発の日」と7月30日の国連の「人身取引反対世界デー」に合わせてイベントを開催しています。今年の7月30日には、他の宗教団体の協力を得て、人身取引の生存者や被害者のための宗教間オンライン祈祷を実施しました(WCRP日本委員会人身取引防止タスクフォースとの共催)。

  タリタクム日本は、他のタリタクムのネットワークとの連携を開始し、人身取引対策における送り出し国と送り先国の連携を強化し、特に意識向上と予防に努めています。


 

タリタクムとは何か? 私たちは何をしているのか?

  タリタクムは、人身取引に反対する奉献生活者の国際ネットワークです。UISG(国際女子修道会総長連盟)のプロジェクトです。タリタクムは、共有すること、互いの経験から学ぶこと、そして相互支援の価値を認識する諸ネットワークのネットワークです。
 

  世界中のシスターが率いるタリタクムのネットワークは、人身取引の危険にさらされている人、人身取引に巻き込まれている人、人身取引から回復した人にとって、希望のしるしであり、解放への道筋となっています。タリタクムにとって、この活動の中心は、人とコミュニティを中心としたものです。

  タリタクムは、5大陸94カ国、約60のナショナルネットワークで活動しています。アジア(東南アジア、東アジア、南アジア――中東の3カ国を含む――)には16のネットワークがあります。タリタクムのネットワークは、地域や国際的なレベルで人身取引防止のための活動やアクションを実施しています。タイのネットワークでは、性的に搾取された女性や子どもの被害者の保護と支援を得意としています。インドネシアとフィリピンでは、NGO、地方自治体、国際機関、その他の宗教団体と協力して意識向上を図っています。

  何十年も草の根で活動してきたタリタクムは、人身取引をなくすために取り組まなければならない3つの主な原因を特定しました。これらは、

– 新自由主義的な経済政策と慣習
– ジェンダーの不平等
– 強制的な移住や不公平で不十分な移民法・政策が、移住する人々の脆弱性を高めていることです。


 

タリタクムの優先事項(アドボカシー)

  1. 「搾取のない経済」を推進します。
  2. 女性のエンパワーメントを強く優先して提唱します。
    1. 権力の非対称性に関する意識の向上
    2. リスクのある少女や女性が質の高い教育を受け、働く機会を得られるようにすること
    3. 特に女性が搾取されやすい労働分野(家事・介護、農業、食品、観光、接客業)における労働権
  3. 女性と少女に特別な注意を払いながら、移民の合法的な経路の実施を提唱します。

 

  「人間は、搾取されたり、売買されたりする対象として扱うことはできません。労働者の権利は保護されなければならず、賃金は尊厳ある生活のためのものでなければなりません。経済システムは、人間の苦しみや搾取ではなく、人権のグローバル化を促進するものでなければなりません。

  タリタクムは、すべての人に立ち上がってもらい、人身取引の経済を、私たち全員、特に女性に力を与え、安全で繁栄するコミュニティを育むケアの経済に変えていきたいと考えています。」

 

  私たちは、特にCOVID-19のパンデミックが起きているこの時期に、介入者とそれに伴うサバイバーのためにできることをしています。

  アジアでは最近、「TK Youth Ambassador Against Trafficking in Persons」を立ち上げました。より多くの若者に、特に予防に関わることを奨励しています。現在、25名の若者がそれぞれの国で人身取引防止大使になるための養成を行っています。日本からは3人の若者が、大使のリーダーになるための養成を進めています。

  学校や行政、教区の仕事など、私たち一人ひとりが人身取引と戦うために果たすべき役割があると思います。

 

蜘蛛の巣が団結すれば、
ライオンを縛ることができる”

アフリカのことわざ

 

『社会司牧通信』第220号(2021.10.15)掲載

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