東ティモールにおけるイエズス会社会サービスの洪水救援活動

ジュリオ ソーサ SJ
東ティモールイエズス会社会サービス責任者

  2021年4月4日の復活祭の前夜、全国で12時間以上降り続いた豪雨により、突然の洪水や土砂崩れが東ティモール島全体に被害を及ぼし、道路、橋、家屋などの生活に不可欠なインフラが破壊され、水道、電気、通信が寸断されてしまいました。首都ディリとその周辺の低地は最もひどい被害を受けました。41人の死亡が確認され、数人が行方不明と報告されました。国連が提供した報告書によると、全国で計33,177世帯が被害を受け、約3,012人が修道院、学校、小教区ホールなどの17か所の避難所に避難しました。また、計2,163ヘクタールの農耕地も被害を受けました。

  現在、一時的に避難していた人々のほとんどが帰宅していますが、住む場所がないため、避難所に残っている人がわずかながらいます。いずれにせよ、彼らが日常生活を取り戻すための支援はまだまだ欠かせません。この洪水には誰もが驚きました。文字通り国全体を麻痺させた災害に対して、誰も予想も準備もしていなかったのです。

  東ティモールでは、さらにCovid-19の発症数が増加し続けています。洪水以前、パンデミックを封じ込めるために政府によってロックダウンが課されていました。そのため、食料などの物資を輸送することも限られて、都市から離れた地域では多くの飢餓状態が発生してしまいました。

  災害は人々の生活に深刻な被害を引き起こしました。なんとしてでも被災者を支援しなければなりませんでした。食料などの生活必需品、建設資材がたくさん必要でした。最も切実かつ緊急だったのは、清潔な飲料水、食料、衣服、寝具、調理用具、衛生用品を手に入れることでした。

  4月8日、政府は30日間の「災害事態宣言」を発令し、国際援助を要請しました。多くの人々や団体が直ちに人道支援をしたり寄付をしたりして、洪水被害者を支援し始めました。東ティモールイエズス会社会サービス(JSS-TL)は被災者と連帯して、困窮者支援に貢献しながら、洪水被害者を支援するための手立てを組織しました。

  JSS-TLは社会奉仕に直接関与する宗教団体として、他の修道会と協力して、被災者の緊急ニーズに直ちに対応しました。chefe sucoと呼ばれる地域社会の指導者とのつながりを急いで確立し、最も危機に瀕した洪水被害者に手を差し伸べることができるようにしました。JSS-TLの優先事項は、他の国内および国際機関が到達できなかった遠隔地に行くことでした。すぐに、さまざまな場所、特に避難所に、食料、衣服、水、毛布等を配布し、多くの水タンクや簡易トイレを設置しました。私たちの対応にとって大きな制約となったのは、被害を受けた地域社会、特に道路や橋が壊されたり、コロナウイルス感染が拡大したり、政府によって衛生的理由で遮断されたりした、都市から離れた地域の人々に関するデータが不十分だったことです。

  洪水発生以降、JSS-TLは多くの被災地域に、米、麺類、牛乳、食用油、台所用品、マットレス、衣服、浴用石鹸、建設資材などの必需品を配布する支援を続けました。支援先はディリなどの地域で、2000以上の家族にのぼります。人道的対応の次の段階は、人々の暮らしとインフラの回復や再建を含む早期復旧への支援です。政府やとりわけ被災した地域社会の要請を受けて、JSS-TLは、より長期的な復興計画で政府を支援する準備を整えています。JSS-TLは、ある地域が被災地域と新たに特定された場合、その地域社会のシェルター再建を請け負うことにしました。

  今回の洪水は、宗教、政党、グループへの所属に関係なく、社会の改善のために一緒になって働く機会です。私たちが招かれていることは、分かち合うことです。特に困窮している人々に資源を分かち合うならば、私たちが一つの大きな家族として暮らし、働き、そして成長するためにこの世界は確実によりよい場所になるのです。なぜならば、分かち合うことは互いに気遣うことだからです。キリストのように仕えたいという思いこそが、困窮した人々に力を与え、その人たちに奉仕するように、また最近の洪水危機とCOVID-19パンデミックを克服するようにと私たちを駆り立てているのです。多くの人々が故郷を追われていること、洪水被害、断続的なロックダウン制限が複合して、多くの家族が飢餓状態に追い込まれているのです。


 

《受益者(洪水被害者)とのインタヴュー》

Nicolao Soares:私たちの家は全壊し、何も残っていません。薄いゴザの上で寝るだけです。寒くて子どもたちが病気になることもあります。私たちにマットレス、台所用品、食料を持って来てくれたJSS-TLに感謝しています。今、私たちは眠ることができ、家族に料理を作るための十分な用具を持っています。

Domingas da Costa:すべてを失いました。家は全壊しました。3人の子どもと私は草を編んで作った薄っぺらい1枚のゴザの上で眠るだけでした。JSS-TLは私たちが最も必要としているもの(食べ物、マットレス、台所用品)を持って来てくれたので、私は幸せです。神はまさしく私が求めていたものを提供してくれました。私の子どもたちはもうゴザではなく、これからは柔らかいマットレスの上で眠ることでしょう。

Joaninho Ribeiroは泣きながら語りました:父は洪水で亡くなったわけではありませんが、病気になり、私たちの家を守るためのフェンス作りに取り組んだ後で死んでしまいました。私たちは、JSS-TLの救援に感謝しています。

Ana da Costa Martins:私は子どもたちをどうやって食べさせていくか心配してきました。食べ物がなくて、子どもたちが泣いたり死んだりするのを見たくありません。眠ることもできませんでした。JSS-TLの支援に心から感謝しています。

Maria Sousa Amaral:たくさんのものを失ったので、悲しいです。家は流されてしまいました。洪水で家が徐々に破壊されるのを見ていたら、私自身が壊れてしまいました。いつ新しい家を建てることができるか分かりません。必需品や食料を援助して私たちを助けてくれたJSS-TLに感謝します。

Maria da Conceiçãoは、納屋に住んでいます: 私はすべてを失いました。いつ子どもたちのために新しい家を建てることができるのか分かりません。私の家族、特に子どもたちを支援してくれたJSS-TLとそのメンバーの皆様に感謝しています。


 

【募金活動の報告と御礼】

  イエズス会社会司牧センターでは、6月末まで緊急募金活動を行いました。最終的に、当センターからの分も含め、延べ116件、総額2万ドル(2,201,950円)の募金を送金いたしました。皆さまからお寄せいただいた温かいご支援とご協力に心より感謝申し上げるとともに、東ティモールの復興のための祈りを続けてまいります。皆さまもどうか引き続き、東ティモールのことを覚えてお祈りください。
 

『社会司牧通信』第219号(2021.8.15)掲載

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