コロナ禍における私たちのミッション

~聖イグナチオ教会国際青年会の新しい福音宣教~

馬杉 成華
聖イグナチオ教会国際青年会

ニューノーマルな教会活動 

  新型コロナウイルスの拡大により、昨年はあらゆる場面において「ニューノーマル」という言葉を耳にした方が多いのではないでしょうか。いち早く柔軟に変化に対応することが求められるこのポストコロナ時代に、私たち信徒もニューノーマルな教会活動について考える機会が多くあると思います。

  2020年は私たち聖イグナチオ教会国際青年会(St. Ignatius International Youth Ministry)にとっても、常に新しい福音宣教のあり方について考え、新たな取り組みを続けた一年でした。

  新型コロナウイルスは、私たちの生命や仕事、様々な行事や住む家など、あらゆるものを奪い、また人々を不安と混乱の内に陥れました。しかしウイルスは私たち青年から、信仰や共同体としての絆、そして福音宣教の灯火を奪うことは出来ませんでした。むしろ、いくつかの良い変化をもたらした一面もあるのではないかと、今となっては感じています。

  2020年2月、東京教区ではミサを含むすべての活動を教会で行うことが出来なくなりました。皆で灰の水曜日のミサに与り、四旬節や新年度に向けて、新たな気持ちで準備を進めていた矢先のお知らせでした。なぜ今なのか、いつ日常に戻れるのか、という誰にもぶつけることの出来ない葛藤と不安を抱きつつ、これまでの楽しかった教会での活動の写真を見返していたことを覚えています。教会に皆で集えること、一緒に聖歌を歌えること、一緒に食事をして祈れること等、これまで当たり前に過ごしていた日曜日がどれほど大きなお恵みであったのか、私たちは身をもって感じることとなりました。

  緊急事態宣言によって家にいる時間が増えたことで、それぞれの場所からオンラインミサに与り、初めは静かな黙想の時間を大切に過ごしていました。しかし次第に一人で過ごす時間が長くなるにつれ、誰かと「繋がる」ことを強く求めるようになった人は、青年に限らず多いのではないでしょうか。

  その点で、国際青年会は小さな共同体ではありますが、兄弟姉妹そしてキリストと出会い、共に信仰を分かち合い支え合うという、非常に大切な役割を果たしていることに気付きました。いつでも誰でも帰れる場所、そして少し神様から離れてしまいそうな時に希望や気付きが得られる場所である青年会の存在は、今回のパンデミックの間、私たちの大きな信仰の支えとなっていたのです。信仰は決して一人だけではなく、他者との繋がり、また共同体の中で深まるものだと、このパンデミックを通して改めて感じました。

  このような使命を背負う私たち国際青年会は、教会に行けない間も、皆との繋がりを保ち信仰を分かち合う場を提供するため、3月には全ての活動をオンライン(ZOOM)にて再開させることを決定しました。

 

オンラインでの青年会活動

  まず最初にオンラインで行った活動は、聖書の分かち合いでした。聖書箇所や分かち合いの質問などをパワーポイントに載せ、皆で聖書朗読、黙想をした後に4-5人ずつの小さなグループに分かれ、20分ほどの分かち合いをします。3月末に始めて以来、週一度欠かさず続けている活動ですが、今では北海道や九州に住む兄弟姉妹、また既に母国へ帰ってしまった過去のメンバーたちも積極的に参加してくれています。どれだけ物理的に離れた場所にいても、イエス・キリストによって私たちは一つであるということを身を持って感じます。

  そういう意味で、今回のパンデミックは私たちに、よりオープンでクリエイティブになること、そしてどんな時も信仰を持って神様に仕え続けることの大切さを教えてくれました。ミサや聖体賛美式、praise and worship(賛美)や十字架の道行までもZOOMで行ったことで、場所を問わない霊的活動が可能となりました。また、オンラインだからこそ出会えた兄弟姉妹が世界中に増え、私たちの活動範囲が格段と広がった一年でした。

 

上智大学との合同イベント

  このような、国際青年会にとってのニューノーマルな活動スタイルを象徴する一つの例に、教皇来日1周年のお祝いイベントの開催が挙げられます。昨年11月、国際青年会は上智学院カトリック・イエズス会センターとの共催で、「コロナ後の世界ですべてのいのちを守るため」と題したオンラインイベントを行いました。これまで上智大学との関わりは殆どありませんでしたが、イエズス会センターの皆さんが、ZOOMでのバイリンガルイベントの開催経験が豊富な私たちに声をかけて下さり、共催が実現したのです。

  今回のイベントにはジェームズ・マーティン神父様をはじめ英語話者のスピーカーを招くということで、一番課題となったのは同時通訳の方法でした。

  通常、国際青年会のオンラインイベントでも英語→日本語の同時通訳は行っていますが、今回のような長い講話を素人の私たちがどのように通訳すればよいのか、また通訳はどこから配信すればわかりやすいかなど、検討すべきことが非常に多くありました。

  そして皆で知恵を出し合った結果、今回はスピーカーから原稿を事前にもらって予め全ての翻訳を作成しておき、当日はZOOMのチャット機能を使って翻訳文を流すことにしたのです。エクセルシートに原文を打ち込み、その横に翻訳文を追記していく作業は簡単ではありませんでしたが、「教皇様が残して下さったメッセージを出来るだけ多くの人と分かち合いたい」という同じ想いを皆が持っていたからこそ、無事に当日を迎えることができました。

  「すべてのいのちを守る」というテーマで、教皇様が来日時に語られた言葉一つ一つは、まさに今のこのコロナ禍において非常に意味あるものとなっているのではないでしょうか。個人的には特に、今回のプログラムを通して、「日本の若者は同年代の仲間にとって希望であり、キリストの生きた証人となれる」というメッセージに再び力をもらいました。まだまだ先の見えない状況ではありますが、私たち自身が常にキリストに信頼を置いて信仰を生きることで、誰かの光になれるのではないかと思うのです。そのためにも今回、難民問題をはじめ、いのちを守っていくことの責任とその重要性について学び、考えを分かち合うことが出来たことが、非常に良かったです。

 

これからのミッション

  さて、今年2021年1月27日で、聖イグナチオ教会国際青年会は設立から4周年を迎えます。当初から、私たちはAd maiorem Dei gloriam(すべては神の大いなる栄光のために)という精神を大切に活動してきましたが、このコロナ禍においてさらに、その言葉の重みを感じます。どのような苦境にあっても、時には希望を失いそうなことがあっても、「私たちは神様に仕え続けるのだ」と力を与えてくれる言葉でもあります。

  特にオンラインの活動を行う際は、対面での活動に比べて非常に多くの準備が必要となります。パワーポイントやビデオの作成から役割分担の共有、また当日のオンラインツールの管理と翻訳等、気が遠くなる作業も多いことが事実です。しかし、全ての小さな行いでも神様のために愛を込めて奉仕することで、いずれ大きな栄光に繋がるのだと信じて日々活動しています。
  国際青年会での一つ一つの活動を通して、自分自身の信仰が深められると同時に、共同体としての信仰がより一層深められていると、私たちは強く感じます。神様、そして国際青年会という第二の家族との出会いによって、私自身も本当に変えられました。メンバーたちが謙虚に自分自身を捧げ、喜び楽しんで奉仕している姿、他人の痛みや苦しみに寄り添い祈っている姿、そしていつもイエス・キリストを中心として信仰を生きる姿を見ると、「私もそう生きたい!」と強く感じるのです。

  そして私が彼らからとても良いインスピレーションを受けて満たされたように、より多くの青年たちにとって国際青年会が、神様の愛に触れて救われる場・きっかけになれば良いなと思っています。青年会は単なる出会いの場に留まらず、交わりの中で互いの信仰を育み、またそれを外へと広げていく人を育てる場なのではないでしょうか。

  これからも私たちは、イエス・キリストによって結ばれた一つの家族として、若く熱い心で福音宣教を続けていきたいと思います。

 

『社会司牧通信』第216号(2021.2.15)掲載

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