JCAP移民ネットワークの刷新

安藤 勇 SJ
イエズス会社会司牧センタースタッフ(移民デスク担当)

  2018年10月以来、日本のマスメディアは、健全な経済成長を維持するための人手が不足しているという時代錯誤な問題を解決しようとして日本社会で起きているいくつかの重要な構造的変化に目を付けてきました。私たちは毎日のように、数多くの外国人単純労働者や若い技能実習生を今年の4月から日本に正式に受け入れる問題についての公的報告書を目にします。これは、未知の社会的結果をこの国にもたらす、現代の新たな「開国」です。

  しかし実際には、2018年の一年間に国連は、世界が直面している二つの主要な地球規模の課題、すなわち難民と移住労働者に関する共通の合意を得るために、ほとんどの加盟国によるいくつかの国際会議を開催しました。最終的に2018年12月に、それぞれ別のプロセスで、二つのグローバル・コンパクトあるいは条約が正式に採択されました。一つは、「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)」、もう一つは、「難民に関するグローバル・コンパクト(GCR)」です。日本を含むアジア太平洋諸国の大多数が賛成票を投じました。

  国際移住のあらゆる次元を網羅した初の地球規模の文書である「移住グローバル・コンパクト」の実施は、移住に関して新たに創設された国連機構のもとで、根本的な変化を必要とするでしょう。その一方、「難民グローバル・コンパクト」は、4年ごとに開催される新しい「グローバル難民フォーラム(GRF)」によって調整されます。最初のフォーラムは2019年12月17・18日に始まり、五つの領域(教育、仕事と生計、エネルギーとインフラ、解決策、そして保護能力)を扱います。それは拘束力のある国際法になります。
 

  移民と難民は、教皇フランシスコにとってはっきりとした焦点です。教皇は世界に対して故国を追われた人々への対応を改善するよう呼びかけ、国連のグローバルな取り組みを優先させ、グローバル・コンパクトの実施のために20のアクションポイントを策定しました。教皇は移民や難民との連帯を促進するべく、各国の司教協議会に対して教区レベルで説明をするように求めました。教皇によれば、20のアクションポイントは次の4つの動詞――彼らを歓迎し、保護し、促進し、統合する――でまとめられています。
 

JCAP移民ネットワークのワークショップ(2019年4月25~29日、韓国)
  移住に関する東アジアのイエズス会ネットワークは、イエズス会アジア太平洋協議会(JCAP)によって約4年前に設立されました。東アジア地域の7か国が加盟しています。通常の国内・地域レベルでの活動に加えて、ネットワークには、年次総会を開いたり、研究や学習ワークショップを実施したりするコアグループを通じて働くコーディネーターがいます。過去3年間で、この地域の7か国が共同で3冊の本を出版しています。『移民の家族と子どもたち』、『帰還する移民』、そして最後の1冊は電子書籍で出版されたばかりの『東アジアのブローカー』です。

  この6か月間に、移民ネットワークは、この分野の国際的な専門家たちと共同で、二つの主な学習ワークショップを開催しました。一つはカンボジアで行った、移民と難民の地球規模での新しい動きについてのワークショップ、もう一つはこの4月に行った、移民と難民に関するグローバル・コンパクトについてのワークショップです。これにはまた、JCAPの議長と議長補佐も正式に出席していました。イエズス会難民サービス(JRS)アジアも積極的に参加しました。アジア太平洋諸国から30名の参加者が集いました。

  JCAP移民ネットワークは、教皇フランシスコの4つの主要な行動項目の枠組みの中で、グローバル・コンパクトからの新たな情報を、ネットワークとしての行動計画に盛り込むことを決めました。同時に、イエズス会の「普遍的使徒的選択(UAPs)」もまた、私たちの議題や行動指針に含まれていました。実行中の活動に関する報告の中には、最新の状況や公的政策、NGOや政府機関との交流や対話に関する情報を、可能な限り定期的にコーディネーター事務局に送付すべきだということが決まりました。次回の年次総会では、JCAPのイエズス会ネットワークの構造的地位が、この地域の重要な課題として扱われることになっています。例えばインドネシアや日本では、英語の資料(グローバル・コンパクトやバチカンの諸文書など)は、司教協議会や一般の人々に示す前に、まず自国語に訳されなければなりません。翻訳にはお金も人手も必要ですし、似たような機関と交流して、一般市民社会における社会意識を高め、それを促進するには、私たちの組織を新たに見直すことが重要です。
 
  日本では、イエズス会社会司牧センターの中にあるこの小さな「移民デスク」で、教皇フランシスコの4つの主要な行動指針原則――社会的に排除されたすべての移民と難民を歓迎し、保護し、促進し、統合する――にのっとり、正しい事実、情報、そして困窮した人々との生きた関わりを探る試みを続けています。

  私が提案したい次のような「理想的」な計画が、日本で実現可能かどうかは分かりませんが、それでも自由に述べておきたいと思います。教皇フランシスコによってバチカン(教皇庁)に創設された「人間開発のための部署」の中の「移民・難民部門」をまねて、イエズス会の管区にも同様の機関を設置してはどうでしょうか?

  教皇の日本への公式訪問は、ひょっとしたらそのような夢が実現するきっかけになるかもしれません。

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