福岡での体験から ~外国人技能実習生が皆、日本に否定的なわけではない~

田山 ジェシー
イエズス会社会司牧センタースタッフ(移民デスク担当)

  2019年2月28日から3月2日まで、日本カトリック難民移住移動者委員会(J-CaRM)全国研修会が福岡で開催され、司祭、修道者、信徒、宣教師など、全国から約130人が参加しました。
 

  一日目は、4人の講演者がそれぞれ異なる問題について話しました。ベトナム人司祭のピーター・トアイ神父は、日本で暮らすベトナム人たちの生活をどのように改善できるのかを語り、山岸素子さんは2019年の4月1日から施行される改訂入管法について話しました。カリタスジャパン秘書の瀬戸高志神父の話題は、「排除ゼロキャンペーン」の展望についてでした。最後に美野島司牧センター所長のコース・マルセル神父が、薬物依存からの回復をめざすダルクの活動や、ホームレス、外国人の問題について話しました。
 

  二日目には、三つのグループに分かれてフィールドワークを行いました。グループ1は「下関の強制労働の歴史と朝鮮学校の現在」、グループ2は「筑豊産炭地の強制連行跡地を訪ねて」、グループ3は「筑後川流域の技能実習生が働く現場見学」でした。

  私は42人の参加者と一緒に、グループ3のコースに行きました。外国人技能実習生権利ネットワーク北九州の岩本光弘さんが案内役を務め、他にもACO(アセオ:カトリック労働者運動)メンバーで黒崎教会の有吉和子さん、福岡コレジオ院長の森山信三神父、J-CaRM事務局の吉田勉さんがサポートをしてくれました。

  最初に訪れたのは、佐賀県神埼市にある原口牧場です。牧場オーナーの原口智治社長、ふれあい協同組合理事長の大塚力久さんと職員の木村貴則さんの3人が私たちを出迎えてくれました。牧場を歩き回った私たちは3人のベトナム人実習生と出会い、短い会話を交わすことができました。

  次に、昼食をとるために聖フランシスコ・ザビエル小郡教会を訪れました。昼食後、大塚さんが技能実習生について話してくれました。彼は技能実習生を海外から日本に連れてくる会社を経営しています。当初は中国から実習生を連れてきていましたが、今ではベトナム人だけです。実習生を連れてくる企業の多くは法的条件を正しく守っている優良企業だ、と大塚さんは説明しましたが、悪い企業がいくつも存在するというのもまた事実です。それは実習生自身に関しても同じで、ここに働きに来る人の中には本当に良い人もいれば、そうではない人もいます。

  「賃金が低いと会社に文句を言う実習生は、いくつかの事実を知る必要がある。福岡で働く人の賃金は、東京よりも低いのが普通だ(福岡県の最低賃金は時給814円で、東京都は985円)」。大塚さんはこのように、単に給与の額を比較するべきではないと説明しましたが、毎年全体の3%にあたる約5千人もの実習生が、ビザが切れる直前に職場から失踪しています。

  大塚さんの会社は実習生に、日本で働くために毎月2万5千円を払わせています。その金額には往復の航空券代と手数料などが含まれています。彼は毎年ベトナムから10人の実習生を連れてきます。大塚さんはさらに、企業側の観点から見る必要があると説明しました。なぜなら彼らは実習生たちの職場をチェックし報告するために、毎月出張しなければならず、それが会社の支出の原因となっているというのです。大塚さんは実習生を単に従業員としてのみ扱うのではなく、一緒に旅行に出かけたり、バーベキューパーティーのために自宅に招待したり、年末にお餅つきをしたりしながら、彼らにとって良いコミュニケーション環境を作り出しています。3年間の実習を終えた後の実習生たちは大抵、大塚さんに感謝しています。

  3番目に訪れたのは安竹町の緒方農場で、農場長の緒方さんはそこで働いている5人のベトナム人実習生を紹介してくれました。冬の寒さや夏の暑さにもかかわらず、彼女たちは幸せそうに働いているようでした。一緒に行ったベトナム人の司祭やシスターたちが彼女たちとベトナム語でしばらく話していましたが、私たちが帰るときになると、何人かは泣き出してしまいました。実習生の中にはカトリック信徒も数名いますが、職場が教会から遠く離れているため、ミサに与ることも聖体を受けることもできないといいます。そのため、少し寂しく感じていて、カトリック信仰を持つ誰かと話がしたかったようです。

  最後に訪れたのは、福岡の大刀洗町にあるカトリック今村教会(今村天主堂)です。今村天主堂は1913年に赤レンガで建てられたロマネスク様式の聖堂で、二つの塔が特徴的です。2015年には日本の重要文化財に指定されました。日本に現存している数少ないレンガの教会として、とても貴重なものです。
 

  三日目には、グループに分かれてプレゼンテーションとディスカッションをしました。
 

  まとめとして、グループ3のフィールドワークに参加できてうれしかったです。それは私にとって、真の状況へと目を開かせてくれる体験でした。私たちは時々、自らの目で見たり、実習生たちと接している人々に耳を傾けたりする必要があります。インターネットやメディアを通じて情報を入手するだけでは十分ではありません。しばしばそうした情報は、日本に働きに来る実習生たちを否定的な視点から描いています。しかし現実には、日本には従業員たちの面倒を見る良い企業もあります。

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