正義を行う信仰を促進するためのキャパシティー・ビルディング

グェン タン ニャー SJ(イエズス会神学生)

  8月20日から25日まで、私たち32人のアジア太平洋地域のイエズス会員と、協働者がタイのチェンマイで集まって、社会使徒職の会議を行いました。この社会使徒職の会議は毎年行われていて、この地域のメンバーが活動している社会使徒職の仕事を分かち合い、互いに応援するという目的があります。今回のテーマはキャパシティー・ビルディングで、ワークショップとして新しい技術を学ぶことを中心にして、私たちのミッションをもっと効果的かつ深く実行するのを助けるためでした。しかし、ワークショップを行う前に、各管区の社会使徒職のメンバーは、前回の会議から今までの自分たちの新しい前線の出来事(frontiers)について分かち合うことになりました。日本からは、小山神父が、原発、新しく出版した『傷つけられた世界を癒すために』、難民のためのNGOネットワーク、韓国管区との協力について話しました。そして、ローマ本部の社会正義とエコロジーの代表者である、パッチPatxi神父が、社会活動のためのイグナチオ的特徴を私たちと分かち合い、イエズス会の統治(Governance)の最新の情報について語りました。   
  続いて、アジア太平洋地域の社会使徒職のコーディネーターであるデニス神父が、この地域における社会使徒職の現状について話しました。この記事の中で、私は、最新の状況、社会活動のためのイグナチオ的特徴、そして戦略的計画を、簡単にまとめたいと思います。

社会使徒職の最新の状況
  私たちは、ますます拡大する不平等、持続不可能なシステム、市場中心の文化と人間関係などの、非人間的な経済システムに直面しています。2008年の経済危機から、世界の経済は「支配できない動物」という状況になりました。私たちは、グローバルの文化が、国、民族的、宗教的マイノリティーを排除していると見ています。この文化において、私たちはチャンスにも、脅かしにも直面しています。現代の経済的、文化的状況において、イエズス会は、私たちが人々とともに歩むことができる、いくつかの分野を認めています。たとえば、炭鉱における紛争、エコロジー、移民、民主化、人権侵害です。特にEl    Escorialの会議(スペインで2008年に行った会議)の中で、イエズス会はGIAN (Global Ignatian Advocacy Network)というネットワークを創設しました。このネットワークは、教育を受ける権利、平和と人権、エコロジー、移民、自然と鉱物資源という、5つの活動のための基準を目指しています。 もっと効果的に活動できるように、イエズス会の本部の構造も変化しました。たとえば、ミッションの委員会が改変され、ミッションについての識別がされ、ミッションと管区間の協力に焦点が当てられました。

  デニス神父は、社会的な状況について語りました。彼の話によると、たとえばグローバル化、教会内及びイエズス会内の変化、中国の目覚ましい発展など、社会使徒職に強い影響を与える要因を並べました。アジアの社会では、苦しんでいる人々は、農民、都市部に住む貧困層、使い捨て労働者、仕事のために自分の家を離れている貧しい人々や少数民族です。だから、私たちの地域の社会使徒職の共通の優先課題は移民と環境です。

社会使徒職のイグナチオの霊性を深める
  パッチ神父は私たちに、聖イグナチオの社会使徒職の理解と実行を、もっと理解できるように話しかけてくれました。聖イグナチオの貧しい人々のために働く動機は、彼のカルドネルの体験のきっかけであると言われています。そこで聖イグナチオは、神はすべてに存在し、いのちと歴史において働くのを体験しました。神は聖イグナチオを、他人のために働くよう招いていました。パッチ神父は、イエズス会の社会使徒職には、5つの特徴があるべきであると指摘しました。それは、感謝、貧しい人々の友となること、内的な知識、マジスの精神と、主において友であることです。私たちは貧しい人々への奉仕にコミットした場合、社会使徒職に緊張感があることを学びました。大切なことは、私たちの社会使徒職の活動の源泉は、祈りと貧しい人々への近さです。この源泉から貧しい人々の声に対して、コンパション(慈悲深さ)に満ちて応えます。コンパションに満ちて応えるために、社会的な実行、霊的な実行や研究などが必要です。最も効果的になるために戦略的計画を立てて、社会的な意識を得るのも大切です。この5つの特徴に基づいて、私たちの使徒職の鍵となる構成部分は次のようなことです。 ミッションに関しては、正義と連帯を促進すべきです。さらに、私たちの奉仕は、信仰への奉仕でなければなりません。 社会センターを発展させる活動に関しては、人間を中心にすべきです。私たちのセンターは、マジスに向かって、共同識別の場にならなければなりません。ネットワークはいつでも大切なポイントです。センターの管理(governance)は、イエズス会の会憲に従うことが当然です。  共同体作りに関しては、私たちのセンターは愛と識別とコミットメントの共同体を作らなければなりません。

戦略的な計画
  (会議の協力者:クリスティナさんのまとめより) 今回の会議は、このテーマを中心として行いました。戦略的な計画をする目的は、新しい前線を見つけるため、今までやってきたことを、続けるかどうかを識別するためです。 計画のプロセスは、次のようにすべきです。新しいリーダー、新しい社会状況、行っている使徒職の評価の必要など、使徒職の変化に直面するとき、戦略的計画は必要です。戦略的な計画をするのは、平和的な期間で、長いプロセスのために時間がとれるときです。だいたい、3か月間から半年かかります。この使徒職に関わっているすべての人が、この計画に参加するべきです。このプロセスは、祈りのときで始まり、そして、データを集め、研究と感覚を分かち合い、新しい評価へと続きます。この計画は、私たち組織を「そのまま」という状態から導き出します。つまり、新しい使徒職の地平線に向かっていくようにします。そこで、私たちの働きを、そのまま維持するのではなく、前線に向かっていくのです。 最終日、社会使徒職に関するこの地域の必要性について、話し合いました。すなわち、霊性、コミュニケーション、貧しい人々との関わり、協働、もっと神学生をワークショップに招くこと、専任コーディネーターについて、もっと焦点をあてる必要があることで合意しました。 今回の会議は、私たちにとって本当に大きな恵みであったと思います。皆が、イエズス会員と協働者との間に、強い絆を感じました。

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