移住連ワークショップ2018 in札幌

安藤 勇 SJ
イエズス会社会司牧センタースタッフ

  2018年6月9日‐10日、北海道において、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)主催の全国大会が開催されました。会議のタイトルは、「移住者の権利キャンペーン2020――ここにいる koko ni iru」です。この会議とワークショップには、全国から150人以上の参加者が集まりました。私たちイエズス会社会司牧センターからは、3人のスタッフが参加しました。

  日本は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「みんなの耀き、つなげていこう(Unity in Diversity)」をモットーに、国家計画を正式に開始しました。この標語は、世界の中の実に多様な存在を受け入れ尊重する必要性を念頭に、大会組織委員会によって選ばれました。

  しかし、移住連は、このような概念は単なるスローガンに留まるべきではないと考えています。移住連のネットワークは、移住者や多様なルーツを持つ人々の権利と尊厳が保障される社会、制度、政策を目指しています。そのため、北海道大会のテーマ「ここにいる」は、私たちの間にいる移住者の存在を強調しているのです。

  移住者に対する公共政策の欠如とは対照的に、移住連は、日本の移住者のための市民政策の策定に取り組んでいます。全体会のワークショップは、専門家、弁護士、労働組合指導者、政治家、大学教授などからなるグループによって進行されました。多くのNGOの専門家である参加者たちは、移住労働者に関するほとんどの課題を網羅する8つの分科会に分かれました。外国人技能実習生に関しては、特に強調されていました。社会司牧センターの3人は、それぞれ異なる分科会――移民政策、人種差別、技能実習――に参加しました。私は技能実習制度に関する分科会に参加しましたが、8つの分科会の中で最も人気で、40名以上の参加者がいました。
  大会で話し合われた内容は非常に豊かだったので、このような短い記事で要約して報告するのは困難です。ですが、端的に言えば、主に3つの重要な問題が議論されました。

  第一の大きな問題は、移住者のための「公的実習制度」です。この制度は抜本的に改革されるか、あるいはむしろ停止されるべきです。事実、現行制度では、安価に抑えられる一時的な労働力として外国人労働者を募集することが目的となっています。

  日本の移住労働者の生活や状況に影響を及ぼす根本的な問題は、「移民政策」の欠如です。政治家たちは、こうした外国人労働者が長期的な移住者となる可能性をはっきりと否定しています。安倍晋三首相は国会で、「彼らは、急速な労働力不足を緩和するため、日本で一時的に働くよう招かれている」と言い張りました。

  政府は外国人労働者の複雑な問題に対処するためにハイレベル委員会を組織していますが、結局のところ、すべての外国人を管理している入国管理局が全権を握っています。労働者は実質的にはいかなる権利も有しておらず、働いている会社に対して不平を言おうものなら、自身のビザが危険にさらされます。些細な不満を口にするだけでも日本滞在が危うくなってしまうので、会社に従順であり続けなければなりません。入国管理とは、外国人を支配することなのです。

  最後に、移民に関するあらゆる要因を集約した中核にあるのは、工業国として高い水準を維持して生き残るために、日本が労働者をどうしても必要としているということです。最新のデータによると、日本経済は127万人の外国人を雇用しており、2012年からはほぼ2倍に増えています。過去5年間で、労働市場に加わった日本人はたったの250万人だということを考えると、この期間の新たな労働者の4人に1人は外国生まれであるということになります。日本は単純・非熟練労働者を必要としていますが、そうした外国人労働者を公式には受け入れていません。けれども同時に、若い外国人労働者に自国で必要とされる技術を身に着けさせるための技能実習を目的とした制度が公式に制定されました。

  北海学園大学経済学部の教授が、北海道の地方企業への外国人労働者の貢献について話しました。彼のプレゼンテーション資料の中には、最高技術の装置を使って乳牛の搾乳をする20人ほどの若いベトナム人女性の写真がありました。私は経験から、ベトナムでは牛乳を飲むという習慣がなく、乳牛の牧場がない国だと知っています。ベトナム人労働者たちは北海道で乳業を支えており、そのために雇われていますが、彼女たちの身に着けた技術は自国の農村部に帰っても役に立たないだろうと思うと、何とも皮肉です。

 
移住者全国大会の評価
  多くの市民団体が、若者たちとともに、日本で暮らす外国人労働者の権利のための闘いに身を捧げていることを認識でき、それには確かに勇気づけられ、希望を感じました。一方で、若いベトナム人労働者たちが日本に急激に流入していることが、ワークショップを通じてはっきりと分かりました。

  全体として、私の個人的印象では、専門家たちによるインプットはかなりレベルが高く評価できました。多くの団体からの積極的な参加は、日本の移住者に関する問題への新鮮なアプローチを提供してくれました。それは移民政策の可能性を形作り、より人間的な移民法を作るよう政府に求めるアプローチです。

  しかし結局、根本的問題であるいくつかの要素が抜けていました。私にとっては「アジア的視点」の欠如がそのうちの一つでした。すべての議論が日本を中心に行われていました。確かに日本は、若い外国人労働者に「飢え」ています。貧困、とりわけアジア諸国の農村部における貧困、そして自由の欠如という視点はありませんでした。ほとんどの外国人労働者がこれらのアジア諸国から来るにもかかわらずです。こうした国々については、グローバル化の影響と同様に、議論から抜けていました。

  また、移住者の権利は、国連の諸条約や日本国憲法にその基礎を見出すことができますが、そこで留まっています。私の印象では、参加者の中には多くのキリスト者がいましたが、宗教についてはまったく言及されませんでした。多くの教会が移住者のために貢献していることについては、触れられないままでした。

  それにもかかわらず、全国レベルでの移住連のネットワークはますます強くなっており、外国人労働者や技能実習生の状況が改善されることが期待できます。

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