パチ神父とベニー神父の来日

光延 一郎 SJ
イエズス会社会司牧センター所長

  11月30日(月)から12月8日(火)まで、ローマのイエズス会社会正義とエコロジー事務局の責任者のパチ神父(Patxi Álvarez SJ)と、同東アジア・パシフィック地区コーディネーターのベニー神父(Benny Hari Juliawan SJ) が来日しました。

  両神父はこの間、SJハウスや神学院、岐部ホールにて日本管区のイエズス会員と話し合い、また上智大学で開催された2つのシンポジウム「ローマ教皇フランシスコの回勅『ラウダート・シ』とCOP21アジェンダ」(地球環境学研究科主催)および「食と農を支配するのは誰か?~グローバル化時代における社会運動、民主主義、人権への新たな課題」(グローバル・コンサーン研究所主催)に、講演者またパネラーとして参加しました。

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  東京での日程を終えた後、日本管区の元修練院で、第2次世界大戦中アルぺ神父(後のイエズス会総会長)が修練長を務めていた広島の長束修道院にも泊り、さらに山口県・島根県で働くイエズス会員および協働者と会いました。

  イエズス会員との話し合いにおいて、パチ神父は世界の社会使徒職で注目されるいくつかの問題について話しました。アフリカでは、種族間・宗教間で紛争が続いており、これに対して和解と平和、およびHIV感染症(エイズ)と難民問題への取り組みが重大課題であること。南米では先住民の人権と移民、また特に広大なアマゾン地域などにおける水・資源・環境が問題であること。南インドでは諸種族・先住民・被差別民の教育や人権、移民、またそうした人々が担う鉱山労働問題などへの取り組みがなされているとのことです。

  ベニー神父は、文化と言語が多様な東アジア・パシフィック地区の問題点と課題を挙げました。社会使徒職は、たいてい個人の主導で始まり、活動は地域に根差し、そしてそれぞれに専門的な知識を必要とします。しかしマンパワーは限られており、ネットワークをつくっていくのもむずかしい状況が続いていました。これに対して、東アジア・パシフィック地区社会使徒職は近年、どこでだれがどのような問題に取り組んでいるのかを示す「マッピング」を作成しました。これにより、地区内のコミュニケーションがとりやすくなりました。現在は、特に移民問題におけるネットワークがかなり活発になっています。他にも環境や鉱山労働の分野で交流が進んでいます。今後は、さらにイエズス会難民サービス(JRS)とも協力すること、また神学生がそうした活動に体験参加ができるよう支援したいと、ベニー神父は語りました。

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  上智大学での2つのシンポジウムには、カトリック信者の教職員がきわめて少ない大学にイエズス会のローマ本部と東アジア・パシフィック地区で重職を担う神父が訪問して交流をもったこと自体に大きな意味がありました。折しも、社会司牧センターが最近『イエズス会の大学における正義の促進』というパンフレット(パチ神父が編集責任者であるPromotio Iustitiae 116号)を翻訳し、上智大学で配布したので、イエズス会としてどのような方向性を大学に期待しているかをパチ神父が明確に語り、とても意義深かったと思います。とりわけ社会に向き合う際に、傍観的にではなく、小さくされている人々と共に歩むという倫理的決断が必要であることが強調されたことに、多くの人々が共感したと思います。

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